序章 幕間
時の教会
それは対価を用意すれば、どんな仕事でもこなしてくれるギルドの事である。
12人の構成員から成り立っており、それぞれに数字を表す名前が名づけられている。
時の教会はどこの者の下にもつかないギルドと知られている。
「儂が知っている情報はこれぐらいかね」
「という事は、フェリスを狙っているのは時の教会だが、裏にそれを依頼した人物がいるという事ですね」
あのワンとの戦いが終わり、僕がフェリスの騎士となってからすでに五日が経っていた。あの時にワンが言っていた時の教会についてミカヅチさんに聞いていたところだけど、
「そうさな、依頼人についてはきっと教えてくれないだろう。それに、その依頼人が狙っていたのが王家の装飾品だとは狙いが分からんな」
やはりそこだけは良く分からない。王家を証明する装飾品ってだけで、それ以上の価値はない。依頼人の目的が分かればいいけど、
「まあよくわからんことはいつか解決する。それよりも、君は少しでも強くならきゃいかん。また来るだろう襲撃者のためにも、他の候補者の騎士に対抗するためにもね」
騎士、フェリスの騎士は僕一人だ。けど、他の候補者たちの騎士は一人だけとは限らない。
双璧、紅蓮、四季。どれも能力や戦いが秀でて、今の僕なんかより遥かに強いそうだ。もしこの人たち相手取っても負けない様にしなければならない。
そもそも、国民の投票で決まる様な戦いになぜ武力が必要なのか。それはただ単純に武が見せる華やかさでもなく、他の候補者に殺されない様にするためだ。
この継承戦は、『王家の血筋を絶やさない』それだけが条件。極端に言うと、自分以外の候補者を消せば、自動的に次代の王になれる、国民の意思関係なく。そんな背景から彼らは武力を持ち、くるかもしれない戦いに備えている。
それを含めての継承戦。どんな手を使っても勝ち抜く戦い。
フェリスも、先日に自らが王の後継者だと言って名乗りを上げた。これにどんな思惑があるかは分からない。だが、
『人は夢を持つことで、初めて強くなれるんです。私もそうでしたから』
いつかあの病室で見たドキュメンタリー。
この世界に来てからは何もなかった。けど、彼女の、フェリスが創る国を僕は見てみたい、心からそう思った。
だから僕はこれを夢として、これからを生きていこう。
そう、ここは庭園。候補者たちが都市の中に居ながらも、王になる為に様々な事を起こす。
城塞都市ガーデンで。