26話 ボクの計画3
「すまないが、瞬で終わらせるぞ若いの」
鬼気迫る表情にトゥーは一歩下がりながらも戦闘態勢へと進めていく。
「クソッ!あっちの屍鬼をやったのもあんたかよ、剣聖ミカヅチ!!」
「ほっほ、あれは完全にハヤト君のおかげじゃろうな。いやぁ、成長速度が速いの」
能天気に返している様で一切の気のゆるみを持っていないミカヅチをトゥーは分かっている。
それにトゥーはミカヅチの脅威を時の教会から言われていた。曰はく、剣聖を襲名した騎士はその名に恥じないぞ、と。
(分かっているさ、実物を目の前にすればな…)
「それで?なんでさっきから動かないんだ?瞬で終わらすってのはウソかよ。結局は前代の騎士崩れってところかぁ?」
「ほほ、それなら攻めてくるがよろしい。そこにいては臆病者と何ら変わらんぞ?」
ブラフだ、その事をトゥーは重々承知している。だからこそ動けない。一歩でも動けばミカヅチの射程距離内だと直感で分かるからだ。だからこそ、
(屍鬼のストックを使う。いくら剣聖といえど屍鬼を準備なしには屠れない)
このトゥーの判断は決して正しくない判断だと言えないだろう。しかし、それは相手がミカヅチではないことが条件だった。
「ハハ!今だくらえ!おまえじゃあ屍鬼は倒せ…ない…はず」
目の前には無傷のミカヅチと、自らの元へ魂が返ってくるという消せない事実だった。
「な、なんで…?」
あまりの事にトゥーは体勢を少し崩し、一歩前に出てしまうが、それが良くなかった。
スンッ…
「…ッ!?」
音もせずに斬り飛ばされた自分の右腕にトゥーは驚きを隠せないでいると。
「ほら、瞬じゃったな。そのまま崩れてけ【毒蛇・終閃】」
「なんだよ!?これぇ!」
トゥーは斬られた右腕を始めとして、発疹の様なものが出始め、数秒もかからずに全身に回った。
「こんなんで、ボクがぁ!」
「ほぉ、本体は逃げよった。大したもんじゃ」
その場に残ったモノは溶けた死体が以前より異臭を放っている姿だった。
「さて、こちらは終わったが、あちらは大丈夫かな。心配はいらんか」
そうミカヅチはつぶやきながらも、気を失ったフェリスを背負いながらも自らの帰る場所へと向かった。