24話 ボクの計画
「ハァ、ハァ…」
逃げる。ハヤトに言われた通り、あの化け物は私には目もくれずにハヤトたちの方へと向かっていた。
それを背にするように私は…、
「ハァ、ハァ。…ここを抜ければあと少しで」
私が今暮らしているミカヅチさんの家は、町から山道の様な所を通った場所にある。逃げるにしてもここを通らなければ匿ってくれる場所などないし、頼れる人も居ない。
いつもなら何ともない様な道が遠く、果てしなく感じるが、今の私に戻るという選択肢はない。
だって…
「~♪」
「…なに、これ?笛の…音?」
おかしい。いや、おかしいでは済まないかもしれない。普段から人通りなんてない道にもかかわらず、既に人が寝静まる時間だ。
色々な事があって、気が動転してる中の幻聴にしても笑えない。
「ボクのスキルってさ~使うのが難しくってね」
「!?」
笛の音が止んだと思ったら、いつの間にか目の間に一人の小さな男の子が現われた。
「【屍王の独宴】って言ってね、死体がいっぱい必要で、そこにボクの魂を入れていくんだけど」
目の前の少年は鼻歌でも歌いだしそうな表情で更に続け、
「今回はとってもたくさん死体が用意できたんだ!でもね、でもねたくさん生み出そうとするとね、頭がとっても悪くなっちゃうんだよ。これじゃあ対象を殺せない」
一瞬曇ったと思った表情を明るくし、ポンッと手を使って何かを思いついた様な仕草をする。
「だったら、対象が逃げてきたのをボクが殺せば良くない、て思ったんだよ。情報だと対象はか弱い女の子だっていうし」
「あ、あなたは…いったい…」
私は分かり切った質問を投げかけるしかなかった。
「ふふーん、ボク?僕はね、トゥーっていうんだよ、お姉さん。一応ギルドは言っちゃダメって言われてるから言えないけど」
男の子、いや、あの化け物を送ってきた主が私の目の前に現れた。




