表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神すら見通せないこの世界で  作者: 春山
序章
20/105

20話 屍鬼2

「とは言ってみたものの、誰だお前は?…どこか見覚えが」


僕の目の前にアイツがいる。その事実に呼吸が荒くなっていく。

何故アイツが此処にいるか、なぜ五体満足で生きているのか、幾つものなぜが積み重なる。


「僕を覚えていないのか…?あの時お前はミカヅチさんに…」


「悪いが思い違いだったか?俺の事を知ってるんだったら今頃、死んでる」


無表情に、ただ事実を述べているようにあの男は言う。

その声、雰囲気、何よりも男に視られる色。どれもが有り得ない現実を伝えてくれる。


ーー間違いない。こいつは、フェリスを襲った男だ!!


「それよりもお前知ってるか?いつの間にか俺は此処にいてな、さっきから頭の中がなんかうるさいんだよ」


「知らない、て言ったら何もしないのかよ」


「それはもちろん、何かはするさ。…おッと」


先手必勝、この言葉に尽きる。


前に刺された時も、さっきいきなり後ろに現れたのも何かしらのスキルだ。それも【神の左目】で模倣できない類の固有スキル。


「速攻でいく、くらえ!!【竜閃】!」


ミカヅチさんの指導の下に手に入れた攻撃スキル【竜閃】。威力はあの魔物さえ斬ることのできるスキル。


何気に人に対して使うのは初めてだったが、殺してしまうかもしれないなどと考えている暇はなかった。


ーー大丈夫だ。この距離なら避けられない!!


「ほう、鋭く良いスキルだな。だがなっ!」


男は斬りかかってきた剣に対して、自らの短刀を少し触れさせるだけで軌道をずらした。


「勢いよく来た奴をずらしたら、そりゃ体勢がくずれるよなぁ!?」


「…ッ!【跳躍】!!」


「なんだ、お揃いのスキル(もの)持ってんじゃねえか!【跳躍】」


距離を取って体勢を立て直す時間すら与えてくれない。しかも、【跳躍】はアイツから視たスキルだ。オリジナルに勝てる道理などない。


「よっと。ほら一発だ」


「カハッ…」


すぐさま近くに寄ってきた男は拳を腹めがけて叩き込み、それをもろに食らってしまう。


「うーん、やっぱ勘違いだな。こんな簡単に殺れる奴が俺とあってるはずがねぇ」


「よそ見してるんじゃない!【竜閃・昇】…ッ!?」


右腕に痛みが走る。ミカヅチさんに教えてもらった【竜閃】のスキルたちには未だに体が耐えられない。だが、そんな事を気にしていて勝てる相手ではない事を知っている。

歯を食いしばり、痛みに耐える。


「ハァアアアア!!くらえぇ!」

「はぁ。だからなぁお前さん」


男は少し後ろに下がるだけで回避してしまった。


「足りねぇんだ、俺と殺りあうのに。たしかにスキルは素早く鋭い、食らっちまったら大けがするだろうさ。だけどな、狙っているところが明白で馬鹿正直に斬りかかってくる」


男はため息をつきながら、見下ろしてくる。間違いを犯した赤子に語り掛けるようにゆっくりと、


「経験が足りねぇんだ、単純に。つまりよぉ、身の程をわきまえろってこった」

男は短刀を手に持つとこちらに刃を向け、おもいっきり振り下ろ…




「ハヤト!!」

「フェ…リ…ス?」

いつの間に彼女は階段を降りてきたんだろうか。いいや、そんな事よりも

「なるほど、そういうことか」

合点がいったと言わんばかりの表情になったあの男から、フェリスを守らなければならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ