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神すら見通せないこの世界で  作者: 春山
序章
19/105

19話 屍鬼

先程の現象は何だったのだろうか。幻覚にしては鮮明で、とても現実味を帯びているものだった。それに、


ーー多分だけど…あれはフェリスの記憶じゃないだろうか。


確信はないが、そんな気がする。ただ単に彼女があそこにいただけで判断しているのではない。なにか、もっと別の…、


「とっ、ここから先は気を引き締めていかなくちゃな」

今は雑念に割いている時間はなく、音の発生源を確かめなければならない使命がある。

「うっ!?何だこの臭い?」


一階に降り、少し進もうとした瞬間、何かが腐っているようなにおいを感じる。慌てて空いた手を鼻にあてるが、そんなことは関係ないとばかりに臭いは強くなっている気がした。


「ミカヅチさんは居ないのか?こんなことが起きたらすぐ対応しそうだけど」

何かあったらミカヅチさんに頼ってしまうのは悪い癖だが、今回ばかりはそれを咎めている暇はない。一刻も早く原因を突き止めようと一つ一つの部屋を開けてみていく。


「…ッ!なんだこれ…」

丁度三つ目の部屋の扉を開けた瞬間、目の前の光景に驚きを隠せなかった。

割られた陶器や壊された障子、何者かが此処から侵入したことは明白であったが、目を引き付けられたものはそこではない。


「何だこのモヤの数、それに色が…かなり黒い」

一見して、ただ荒れている部屋を見ているだけだ。誰も居ないはずなのに、黒いモヤがかなりの数視えていた。しかも10程の数ならまだしも、壊れた障子の向こう側にはさらに多数のモヤが視えている。


「よく分からないけど、なにかヤバい。一刻も早く…ッ!?」

黒いモヤの一つが急速に迫ってくる。そもそもモヤは生物にしか視えない、それが【神の左目】の能力の筈で、その者が抱いている感情によって色が変わる。だから何もないところにモヤが出ている時点でかなりおかしいわけで……


ーー!そうか。だったらこれで!


手に持っていた剣をモヤに向かってふるう。

ザシュッ、と明らかな手ごたえを感じた。


「そうか、やっぱりだ!」

目の前に突然、斬りつけられた死体が出てくる。


「こいつらは初めから居たんだ、此処に。どんなスキルかは知らないけど、こいつらは透明化して潜んでる」

からくりは分かったが、状況は好転はしていない。未だに透明化して潜んでいる敵が至る所にいる。しかし、一人一人はかなりもろいとさっきの奴で分かった。


「だったら十分一人で対処できるし、フェリスに危険はいかな…ッ!?」

ガシィッと何かに右足が掴まれる。


「クソッ!なんだこいつ!?」


たしかに簡単すぎると思った。それに、斬ったとはいえあそこまで早く死体となって出てきたのは不自然だ。

鼻をふさぎたくなる様な臭いにまるで元々死んでいるかの様な状態。以前、ミカヅチさんからその特徴を持つ魔物を聞いたことがある。


「こいつら屍鬼(グール)か!?」


「あアぁぁぁァアアア」

返答代わりに屍鬼は枯れた声を上げて襲い掛かってきた。

「クソッ、【跳躍】!!」

すぐさま屍鬼から距離を取るようにスキルを使う。


このモヤ全体が屍鬼だとすると、まずい事がある。こいつら屍鬼は倒す手段が今の僕にはない。

元々死体が何らかのスキルによって動かされているものが総称して屍鬼と呼ばれているだけであって、屍鬼を倒すためにはスキルを使用した張本人を叩いた方が良いとされている。もしくは、屍鬼を体ごと消し飛ばすなど方法があるが、前者はこの場所を離れることになるし、後者に至っては相手を消し飛ばせるようなスキルをモヤの数だけ使うのは無理だ。


「ここで取るべき手段は、ミカヅチさんを待つかフェリスを連れて逃げるかだけど…。ここはフェリスを連れて逃げる方がいい」


スキルのおかげで透明化している屍鬼は視えるからして、此処にとどまりジリ貧になった方が状況的には悪い。

直ぐにフェリスの元へと向かおうと階段を目指し、走りだそうとした時、


「言わなかったか?スキルに頼りすぎるなと…」

突然声がした方向へと顔を向ける前に脇腹をナイフの様なもので刺されたのを感じた。

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