18話 行軍
「~♪」
夜空に楽し気な鼻歌が流れていく。
音の発生源を見ると少年が何かに座りながら鼻歌をし、足をパタパタと動かしていた。これだけを聞くと何処にでも存在する景色だっただろうが、少年が座っているモノに問題があった。
少年少年が座っているのは大量の腐った死体の山の上であり、常人なら耐え難い悪臭が辺り一面を支配している。
「フフッ。~♪」
少年は鼻歌をやめると、何処からともなく笛を取り出しおもむろに吹き始める。
「~♪」
音の強弱はなく常に静かに、だがどこか美しさを思わせるような音色が辺りに流れていく。
カタッ…
すると少年が座していた筈の死体が動き始め、それを分かっていたかのように笛を吹き続けながらも少年は死体の山から飛び降りる。
カタッ、ズッ、ズッ…
徐々に死体の動きが激しくなっていくと、遂に死体の山は崩れ落ち、山の元になっていた死体たちは自我を得たように二足歩行である方向へと向かっていく。
「うんうん♪みんないいね!このまま対象の抹殺♪お願いね!」
少年は吹くのを止め、年相応の無邪気な声を上げながら死体を送り出す。
そんな少年の横には、フードを被った男が立っていて、
「あれ?君は行かないのかい?困るよー、4つに分けられていた君を継ぎ接ぎしたのには苦労したんだよ!」
「………」
「ほらほら、行った行った。今の君の主人は僕だからね♪」
男の背中を押し、少年は無理矢理にでも進ませていく。
「よしよし、こんだけ送ればお仕事完了かな」
そう言って死体の行進を眺める少年の首筋には“2”と数字で書かれていた。