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神すら見通せないこの世界で  作者: 春山
序章
16/105

16話 そういえば此処って

あの後、特に何もなく帰路につくことができ、今はもうミカヅチさん宅の前まで来ていた。

ーーそれにしても、相変わらず大きい建物だなぁ……

縦にではなく、横に、である。ミカヅチさんの家は道場の様な作りになっており、兎に角横に大きい。


僕とフェリスは2階にある所で普段は寝ているが、指導してもらうときは一階の広間の様な場所で行う。それに、近所では有名な所でもあるのでご近所さんとは交流があったりする。


閑話休題。


ともかく、中で待っているだろうミカヅチさんに会うために玄関の取っ手に手を伸ばそうとすると後ろから声を掛けられる。


「お帰りなさい、今帰って…っどうしたんですかそのケガ!?」

フェリスは右腕を見るや慌てたように駆け寄ってくる。

それもそのはず、魔物と戦った時から体には何もしていない為、服には血が付いており、右腕はおそらくだが折れているままだ。我ながらよくギルドのごたごたの時に悲鳴を上げなかったと思う。

「直ぐに治療します、腕を見せてください!」

「ごめん、この後でいいかな。すぐ終わるからさ」

「そう、ですか。必ず、必ず来てくださいね!部屋で待ってますから!」

「うん、必ず」

そう言うと僕はミカヅチさんの元へと向かって行く。



その後、ミカヅチさんがいつもいる部屋に訪れると、刀を研いでいる最中だったらしく、取りあえず今日あったことを簡潔に語った。


「そうかそうか、災難だったなハヤト君。それで?初めての魔物狩りはどうだったかね」

「慣れなかったです、正直。生き物を狩るのは初めてで。線引きはしたつもりなんですけど、僕の勝手でこんなことやっても、なんて考えてしまう事がありました」

我ながら情けない話だが、事実であった。覚悟したとはいえ、こんな気持ちになるのだ。初めに比べて多少は、という部分もあるだろうが慣れという感覚には程遠い、それが感想だった。


「ホッホ。それは良い事さハヤト君。確かに、生き物を殺すことに躊躇いもない者は存在する、しかしだね小さな命をすら尊敬できない者はいつか命という存在を軽んじる。だからね、君はその心を大切にしたまえ。でもね、いつか信念というものを見つけたら私に教えてくれんかね、なあに老人の楽しみという奴だよ」

自分でも情けないと思える僕に、ミカヅチさんは笑いもせずに真摯に受け止め、応援してくれる。


ーー僕は、恵まれすぎている

そんな思いが胸の中を支配する。


「そういえばミカヅチさん、ギルドって何ですか?上位とか何とかよく分からない事言ってて…」

「そうかそうか、ハヤト君は此処に来たばかりでよく知らないと言っていたね。それならこの国の仕組みを知らなくても仕方ないね」

そう言うとミカヅチさんは語りだしてくれた。


「この国は、昔から王様を国民投票で選んでいてね。王の候補者たちは国民からの信頼を得るためにある時期から、様々な事業を始めるのだよ、商業から農業、はては傭兵業なんかもね。その候補者直轄のギルドたちが上位ギルドと呼ばれているんだ。そして、元々あった或いは新しくできたギルドは支持する候補者のギルドの傘下になる事で、甘い汁を吸おうとしてくるんだ。その傘下になったギルドは下位ギルドと呼ばれ、れている。しかもだ、下位ギルドの中には自らの実績で上位に上がっていたところもある」

「その上位と下位は基本的に何が違うんですか?」


「簡単に言うと、金の違いだ。上位と下位では回ってくる仕事の大きさが違う。それに、次期王の候補者の下についていたギルドは、国の物流から何でも任される存在となる。いわゆる、大出世するというイメージで間違いない」

ーーだから、あのギルドにいた人たちはあんなに熱心に勧誘をしてきたのか。上位に少しでも近づくために。

「おおそうだ、君は城壁を外に行くときに見たかね?」


「はい、見ましたけど…、あの警備がだれも居ないもんがある所ですよね」

「そうだ。不用心だと思ったかもしれないが、実はその城壁はここにおいて一枚目みたいなものでな。この都市は城壁によって三重構造となっていて、上位ギルドがあるのはこの都市でいうもっと中心の街にあるのさ」

「そうだったんですか」


此処を今まで街だと思っていたけれども、まさかの都市だったということに驚く。もしかしたら、此処は自分が思っているよりも大きな所かもしれない、それに城壁は魔物から守るために建てられたのだろうか。

改めてそこを聞いてみようと思い、ミカヅチさんを見直すとさっきと打って変わって真剣な表情に変わっていて、


「これはね、機を見て話そうと思っていたんだがね。王の候補者たちというのは王族の者たちの事であり、皆それぞれ“騎士”と呼ばれる者が幾人かついておる。そこでねハヤト君、フェリス様の騎士になる気はないかね?」

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