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神すら見通せないこの世界で  作者: 春山
序章
14/105

14話 初戦2

それに気づいたのは偶然だった。

討伐したゴブリンの処理を粗方終わらした時、誤ってゴブリンの牙を落としてしまい、拾うために後ろを振り返った。

そこには、先ほどのゴブリンなど比べ物にならないほどのナニカがいた。そいつは片手に持つ棍棒をすでに構えており、振り下ろすまでそう時間はかからないだろう。

(間に合わない!!)


咄嗟に腕をクロスさせるが、それと同時にバキィと折れたような音を聞く。

「……~ッ!!!!カハッ!」

棍棒に吹き飛ばされ、木に直撃し、途端に声を出せない程の痛みが全身を伝わる。


先程まで戦っていたゴブリンがまるでお遊びだったかのように、現実を突きつけられる。目の前の奴は体の大きさも力もどれもが別次元、それも近くにいても気付くことが出来なかった。

油断をしていたわけでもないし、いざ視認すると先ほどまでが嘘かの様に存在感がひしひしと伝わってくる。こんな気配を見落とすような事はしないと自分でも自負していた。

そうなると導き出されるのは、

(魔物もスキル持ちがいるのか!?)


少し考えれば分かる話、ミカヅチさんはスキルの説明をする際に“生き物”と表現した。忘れていたわけでは無いが、ゴブリンとの戦いを経て魔物の脅威度を見誤っていたのが問題だった。

舐めてかかっていたのが問題なら、受けた傷は戒めとして受け入れる。そんな後悔をしている場合ではない。

今も目の前の魔物はこちらに追撃を加えようと、ゆっくりだが向かってきている。


(こっちは右腕が使い物にならないだろうが、幸いあっちはとろい!)

【跳躍】を使って距離を取り物陰に隠れる。

相手が見た目通り遅いなら逃げるのもありだが、まだ何らかのスキルを持っていたら厄介極まりない。それに、【跳躍】は一直線しか移動できないとはいえ、魔物は完全に目でこちらの動きを追っていた。


「隠れても無駄だし、バックの回収は諦め…なっ!?」

先ほどまで直立していた魔物が急に体を丸め始めた。それだけなら良かったのだが、段々とこちらに転がり始めてきたのだ。

球体と化した魔物はすぐにこちらの目の前に近づくや否や、球体から体を戻し、勢いそのままに棍棒を振るってくる。


「ウオオォオオ!!カアアアァァア!!!!」

「…ッ!【跳躍】!からの【天歩】!!」

間一髪でよけきる。

驚くことに魔物は振り下ろした棍棒が地面を叩き、跳ね返ってきた衝撃を使って、こちらを突き上げるように棍棒を使ってきた。


(【跳躍】を使って逃げようとしても転がって追いつかれる可能性がある。だったらもう…!)

無謀と呼ばれてもいい、むしろそう呼ばれることが適切だ。僕は剣を両手に持ち直し、魔物に向かって突貫する。

距離をとってもさっきみたいに攻撃してくるだけ。


「ウォオォオォォオ!」

「落ち着いてよく見れば、お前なんて避けれないほどじゃない!!」

魔物が棍棒を振り下ろすたびに避け、懐へと近づいていく。狙うのはただ一つ、脚だけだ。

首を斬るのは現実的じゃない今、狙うべきは脚である。相手に手傷を負わせれば、少しは有利になるし、うまくいけば簡単に逃げることが出来る。

(あと少し、あと…!)


脚の目の前にいけた。だが、剣を振るって斬れませんでしたじゃあ、冗談にならない。

だからこそ、この一撃に全力を賭す勢いで臨む。ミカヅチさんから習得した新しい剣のスキル、

「一刀の下に【竜閃】!!」


「ガアアァアア!」

脚が切り裂かれ、魔物は体勢を崩す。頭から倒れそうになるのを棍棒で支ようとするが、

(その勢い、利用させてもらう!)

倒れてきた魔物の首元に剣を突き刺す。剣は上から落ちる頭の勢いを使ってさらに深くへと刺さっていき、


「クッカアアァ……」

「ハアアアァァァ!!!!」

力いっぱいに剣を振り抜く。

後には、首が無い魔物が倒れていく姿だけが残っていた。

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