13話 初戦
早朝、ミカヅチさんから渡された依頼書に書かれていた魔物を狩りのために街を出ていた。何気に街を出るのは初めてだったが、自分が今いる場所すら満足に知らないという事を知る。
この街には外壁があるらしく、外に出るためには専用の門から出なければならなかった。しかも驚くべきことにその門は開きっぱなしならしく、警備している人を見かけない。これでは、外に対してどうぞ入ってくださいと言っているようなものではないだろうか。
ひとまずそれは帰った時にフェリスかミカヅチさんに聞くとして、改めて依頼書へと目を落とす。
[討伐]ゴブリンの討伐
森の中に生息しているゴブリンを討伐し、
ギルドへ持ち込んできてください。持ち
込む部位は「耳」「牙」を最低でも10個
お願いします。
※所属しているギルドは問わない
今回標的とするのはゴブリンという魔物だ。もちろん姿かたちなんて知る由もないのでミカヅチさんにそれとなく聞いてみると
『体が緑で、たしか大きさは儂たちの半分もいかなかったかのぅ?まあ、緑でちっこい奴を見つければ良いんじゃよ』
と、あまりにもフワッとした回答が返ってきたので心配に思っていたが、
「ギャウゥギャ」「ギャギャギャ」「ギャ」
驚くほど簡単に見つかった。まあ簡単に見つからないようでは実戦経験なんて積めないのだが。
震える体を落ち着かせる様に深呼吸を繰り返す。昨夜、フェリスから話してもらった線引きをするという話し。この世界で生きていくことになったからには、覚悟を決めなければならない。元の世界でも間接的にはやっていた事だ、そう割り切るしかない。
ザッ……
決意を込めた一歩、その音で奴らに気づかれ警戒心を持たれたかもしれないが気にすることではない。
「ハアアアァァ!」
緊張からか技もないただただ力任せの一撃であったが、見事に1匹のゴブリンの首をはねることに成功した。しかし、止まっている暇はないまだ2匹いることを分かっているから。
「グガアァ…」「ギャッ…」
二の太刀、三の太刀になるごとに落ち着きを取り戻していき、僅か数秒で初戦は終わってしまった。まるで長時間走ったかのように息が荒いが、気にしている余裕はない。
慣れないながらも3匹のゴブリンの部位を持ってきたナイフで取り、バックの中にしまう。
その後も1匹、また1匹と討伐を重ねていく内に、より早く研ぎ済ませれていった。慣れというものもあったとしても、とても速い順応だと我ながら思ったもんだ。
だが、そんな油断も吹き飛ぶような魔物がやってきたのは、20匹めのゴブリンを討伐した直後だった。