11話 世界の制約
「さて、今日は君のスキルを見てみたいと思う。それに、客観的に自分を見るのも大事なのでな」
修行が始まってはや一週間が過ぎようとしていた頃、突然ミカヅチさんは僕を呼びつけ丸い球を懐から取り出した。話を聞くに、どうやらこれは人が持つスキルを見せてくれるものらしく、今日は僕のスキルを見るという事だった。
正直言って楽しみだ。男から真似たスキルの他に元から自分が何かを習得しているかもしれない。そう思うとドキドキが止まらない。
「それじゃ、この球に自分の手をのせてみなさい」
「こう、ですかね?……っ!」
手をのせて数秒すると目の前に突然光りで何かが映し出される。そこには、
ハヤト(男) 17歳
<保有スキル>
[上位] 【神の左目】(固有)
(職業)
[下位] 【跳躍】【天歩】【頑強(弱)】
[称号] 選ばれし者
外れし者
(これは、ぶっちゃけどうなんだろう?)
そう思い、ミカヅチさんをチラリと見てみると
「ホゥ、これはこれは。この短期間で【頑強(弱)】を習得するとは…」
そこには、うんうんと頷くように笑顔を浮かべる姿があった。
「あのー、実はスキルのことをあまり知らなくて…。教えてもらいたいなー、なんて」
「そうであったか。ではまず上位下位を説明せねばな。まずは上位を見てくれ」
言われるがままに上位欄をみる。そこには固有と書かれた横に【神の左目】と書かれている。これに関しては、思い当たる節があるとすればあの少女しかいない。
(あの少女って神様だったのか。失礼とかしてなかったけな…)
今更考えても仕方ないので下の職業の欄を見る。職業欄はみえる限り何も書かれていない。
「上位スキルはな、その名の通り普通のスキルに比べて強力なスキルのことだ。上位スキルには2種類あり、固有と職業で分かれている。まずは固有スキル。固有は生まれ持ったスキルであり持っていない者が多い、それに比べ職業は特定の下位スキルと条件をクリアしていれば習得できる。職業スキルは、習得すると系統に当たる下位スキルも強化される」
なるほど。僕の職業欄が空白の理由が分かった。それに、あの男が最後に使っていたスキルが上位に当たるものだとしたら、【神の左目】は上位を真似できないのかもしれない。だからあの時真似られた二つは下位にあたるスキルという事だろう。
「それと大事な事が一つ、上位スキルは3つまでしか習得できんぞ。逆に下位はいくらでも持てるんじゃがの」
(え?)
今大事な事をあっさりと言われたような気がする。上位スキルには習得数に上限があるという事。つまり、なりふり構わずに上位を取ることは出来ないという事だ。しかも、条件が分からないから勝手に取ってしまったら目も当てらない。どうにか…
「例外はあったりするんですか?」
「ない。歴史に埋もれている可能性も否定しきれないが、4つ以上持っている生物は存在したためしがないのじゃよ。その事実はどの歴史書も記している」
例外はない、か。そうなると、今後取得できる上位スキルの数は二つだけとなる。職業スキルがどれ程強力なものかは分からないが今は無理に取る必要はない、と自分の中で位置づける。
今最も集中しなければならないのは、【神の左目】を使いこなすために体を鍛える事であり、スキルをものにした後でも大丈夫なはずだ。
……
そう考え行動してはや一か月、ミカヅチさんから次の段階へと進むという旨を告げられ剣を、今は武道を学んでいた。初めは体の使い方すらままならなかった自分がよくここまで成長できたと思う。
その日の夜に僕はミカヅチさんに呼ばれ、ある部屋へと向かっていた。ミカヅチさんが所有しているすべての武具が保管されている場所であった。
「失礼します、何か御用でしょうか?」
「おぉ、よく来てくれたな。実はな、そろそろ君にも実戦を経験してもらいたくての」
「実戦…ですか」
鍛えた自分を見つめるには丁度いい機会が訪れた。