19話 6の数字
「ゲートを…開けた…やはり防御面に不安がまだあると…」
こちらを見据えながら、顎に手をやり何かをブツブツと呟く。その手の甲にはⅥという文字が書かれている。
「ロックス様、コイツですよね?それにあの数字…」
「どうした、何かあるのか?」
「…ただ今まで見た事ある時の教会とは違う数字の表記だったので」
機会があってフォーとセブンさんの数字やエイの数字も見た事があるが、それのどれとも違う数字の表記。それに、戦った事があるワンとトゥーですらこんな数字の表記ではなかった。
「はぁ、そんな汚らわしい目でこの福音を見つめないでほしい。これはあの方に私が選ばれたという証なのですよ?いくら羨ましいとはいえ…」
隙。こちらを見据えてはいるものの、明らかに眼中にないと言わんばかりの表情。
「【紫電】!」
納刀からの高速で近づいての抜刀、ロックス様がシックスに突っ込む。その隙に自分は台に拘束されているロンロを助けに走る。
「これだから恵まれない者からの嫉妬は醜いよ。あぁ、そうそう。そのガキは君らに返すよ、私は天才で秀才なんでね、もう必要なものは取り出したさ。こんなこともあろうかとね」
「チッ、どういうことだ!?」
何処からともなく現れたノーフェイス数体に【紫電】が止められ、悪態をつきながらもロックス様は後ろへ下がる。
シックスが言う取り出した、その言葉に嫌な予感を感じてロンロの方を急いでみる。しかし、何かが変わっている様子はない。
「何も起きていない、そう考えるのは早計だよ君。…まあでも安心したまえ、少量の血を取り出しただけさ」
そういう言葉の通り、ロンロの腕には血を抜き取られた跡がある。そう思っていると、ロンロの閉じられた瞼がピクピクと動く。
「ハヤト…兄ちゃん…?」
「ロンロ!」
ロンロの目が覚めた。そんなことはお構いなしにシックスは生き生きと語りだす。
「私がなぜ他人に嫉妬しないか分かるかね?それはね、満たされているからさ。私はあの時から今に至るまで、そして未来までも…!!」
嫌な、嫌な予感がする。それもかなり最悪な。
「ロックス様…ノーフェイスを抑えます。あとは頼みます」
「…任せろ」
最悪な事態になる前に行動するしかない。それも迷っている時間などないぐらいの。
「【草薙・納】…」
ロックス様は納刀し、集中力を高めるために目を瞑る。それと同時にシックスの前にノーフェイスたちがまた現れる。
「あの御方が私の目の前に現れて下さり、この様な寵愛を、数字を与えてくださった!」
見えるだけでもノーフェイスは3体。またあの時の様に、周囲に溶け込んでいる奴らもいるかもしれない。そいつらがもし出てきてもまとめて斬るぐらいの力で。
ただ斬るだけではノーフェイスは起き上がってくる。だからこそ、ただ斬るのではなく焼き斬るぐらいの力で。
「【竜閃・焔】!」
「哀しいかな、いくらか焔を纏おうと玩具を焼くだけとは…。面白い手品だがね…心配せずとも私が今より…ほぉ、これは!?」
焼いた。それも奴の周り一帯を何も隠せないぐらいに。あとは、
「解…【草薙】!!」
抜刀。今まで見た事も無い速さで抜かれた刀はシックスの首を捉える。抵抗出来るはずもなく、そのままシックスは首を飛ばされる。
「これでもう…あと一人をやれば悲劇は終わる」
これでシックスは倒した。あとはカヤを助けて、フォーたちと戦っているスリーを倒すだけだ。
それにしても意外にもあっさり倒された奴だった。それも本当に抵抗がないぐらいに。
カラン……コロコロ…
何処かで金属の様なものが落ち、転がっていく音が聞こえる。
「おい?何の音だ…これは?」
ペトペトと今度は誰かが歩いてくる音が、それもまるで子供が歩いてくる音が。