17話 迎えるはメイドの嗜み
入り口はこじ開けた。それに退路もエイによって塞がれている。今という瞬間を逃すはずもなく、畳みかける様に皆と突撃していく。相手がこの襲撃に気づいていようといまいと、準備させる時間は与えない。
「分かれ道…トウ、頼む!…此処に居る者は耳を塞げ!」
「ハッ!」
ロックス様の声と共に、控えていたトウさんが前に現れる。トウさんは現れると共に、前かがみになり姿形が変わっていく。その姿はまるで一匹の白狼の様に。
「アオオオォォォン!!」
耳を塞いでも聞こえてくるほどの遠吠えが辺りに響き渡る。そして一瞬で何かを悟ったかのように、一方の通路へと駆け出していく。
「ロックス様、対象の者どもはこちらに。アキ、お前はもう一方の通路へ!」
「分かったぜ、姉ちゃん」
トウさんは姿はそのままで、後ろに居る人たちに指示を飛ばす。
指示された方へと行くもの、白狼となったトウさんについて行くものと二手に分かれる。もう片方に何を見つけたか分からない、が今自分がすべきことはカヤの救出。それに、ロンロを守る為でもある。
先も見えない様な通路を駆けていく。通路はまるで一本の道かのように、扉が一つもなくただただ薄暗い。だから、それに気づいたのはロンロだけだった。
「…ハヤト兄ちゃん、これって…カヤのものだ…」
ロンロが止まると共に、全員が止まる。
床には女性ものだと思われる装飾品。そしてそこには半開きになっている扉。
「ここに…カヤがいるかもしれない…!だったら僕が…兄ちゃんが今!」
「待て、ロンロ!」
おかしい。あんな扉はさっきまでなかった。その証拠にあの状態のトウさんが通った時には、何の反応も示さなかった。
「そこに居るんだな、カヤ!」
思いっきりロンロが扉を開け、暗闇の中へと消えてしまう。
そんな一連の事を見ている場合ではない。そこにカヤが本当に居るのなら危険だ。
「戻ってこい、ロンロ!」
「いえ、大切なお客様をただで返す程…私共は無粋ではありませんよ」
返ってきた声はここには居ない者の声。あの場所で聞いたあの女の声。あの時と同じ優雅な、とても侵入してきた者に向けるものではない態度で
スリー。ロックス様が言うには時の教会の、この悲劇を作り出している内の一人。
「ここまでの旅路をぜひ労わせてくださいませ。…もしお気に召さないのでしたら、この子たちと戯れてはいかがでしょうか?」
そう言うと今まで通ってきた所に変化が訪れる。
今まで隠れていたかのように次々と扉が現れ、その中からノーフェイスが出てくる。
「では、ご存分に」