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神すら見通せないこの世界で  作者: 春山
第3章 復讐の王子
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16話 襲撃2

「始まるぞ…」

ロックス様がそうつぶやくと同時に、目の前に下へと続く階段が現れる。

この階段こそが、カヤを助けるための近道。だが、心配もある。

「ロンロ、本当についてくるのか?」

「うん、カヤは苦しんでた。…それを兄ちゃんが助けないと」

「分かった」

危険だから、そう言っただけでは切り捨てられないロンロの覚悟。しかし、それだけでここに連れて来たわけでは無い。

今はこの場に居ないフェリスには猛反対されたが、仕方がない。カヤはもう助からない、その事実を教えるために連れていく。ただそれだけのために連れていく。

「一つだけ…あの約束だけは守ってくれロンロ。お願いだ」

「分かってるよ、ハヤト兄ちゃん。絶対に…泣かない」

酷な現実、それを見せるためだけにと我ながら最低だと思う。だがこれは、本人が望んだことだ。本人が覚悟して決めたことだ。


「妹が…カヤが助からないってどういうこと…」

敵の拠点の予想が立ち作戦会議が終わろうとしたころ、扉の前にはいつの間にかロンロが立っていた。

初めは誰かは分からなかったが、それも無理もない。ロンロの背は高く、髪も長くなっていた。まるでロンロだけが時間を早送りしたかのように。

「目覚めたか。驚くのも無理もない…ロンロ、お前は幾つだ?」

「みっつ」

指を立ててロックス様に答えるロンロ。

辺りが、特にフェリスが驚いていた。初めて会った日、それも昨日まででもとても3年しか生きていない者ではなかった。容姿や意思を伝える能力も。

「よくある現象だ。こいつらは違うものを混ぜられてる、容姿もそれ相応のものに変わる」

「そんな事よりも!!…カヤが助からないって、元には戻らないって」


容姿も意志も、年齢とは釣り合っていない。けども誰かを失うかもしれないという恐怖を感じる、それには年齢は関係ない。

「安心しろ、ロンロ。最初に突撃していった者の後ろからカヤを見つければいい。戦う必要はないし、ケガすらもさせない」

既に今立っている場所は階段の目の前。此処を降りれば引き返せないし、引き返す気すらない。ただ敵を、フェリスが生きていくこの国の膿を払うだけ。


一つ、一つ階段を降りていく。その後ろにはロックス様やフォー、それにリュウのギルドメンバーだっている。

エイのスキルは事前に聞いている。砕いて言えば、エイ自身が理解できる物質を作り変えるスキル。つまり階段の一番下にある白い壁、それは

「気づいてるか、ハヤト」

「分かっています」

後ろに居る者たちの中には、白い壁を見て戸惑いの声をあげている者もいる。

初めて見る者の方がこの中では多い。それは、【神の左目】を使っても視えないが、あっち側からの視線は肌で感じる。

「壁にノーフェイス共を使ってるとはな」

一つの大きな生き物。いや、あいつらにとっては玩具にも等しいのだろうか。

「【傲慢武具(プライドアーツ)】…」

そんなものでは道を閉ざせない事を知らせるために。あんなことをもう起こさない為に。今考えうる最高のものを創造する。

「【赤龍の業(レッド・カルマ)】」

放たれた炎は辺りを焦がすことも熱することもなく、ただノーフェイスだけを燃やしていく。

「…始めましょう」

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