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妖精の果実  作者: 流民
第一章
3/13

二話 基地急襲

『こちらメイス、天翔シェフィールドの空はどうだ?』

「悪くありません」

『そうか、ところでコールサインは?』

「ウィングでお願いします」

『解った。ではウィング。これより模擬戦を始めるが準備はいいか?』

「ウィルコ」

『では、まずはスネイクから模擬戦を行っていく。一対一の対戦で、地上戦は無し、時間は無制限。撃墜判定が出た時点で終了。いいか?』

 メシアの言葉に天翔とマルコは通信を通して了解の意を送る。

『管制、聞こえるか? 今からこの空域は東西南北一〇キロ、高度は一万五千フィートまで訓練で使用する。A中隊以外の空域への侵入を制限してくれ。航路には問題は無いはずだ』

『こちら管制。了解した緊急時を除き無制限で飛行禁止の処置を行う。良い試合を見せてくれよ。こっちはスネイクに賭けてるんだからな』

『だ、そうだスネイク』

『きひひ、分かりましたよ中隊長。後で奢れよ管制』

 メシアは管制とやり取りをし、五人が飛ぶ空域を飛行禁止空域に指定させ準備は整う。

『さて、準備は整った。両者高度一万フィートまで上昇後、南北に分かれたところで模擬戦を開始する。訓練空域を離脱するか、地上に降りてしまうか、撃墜判定が出された時点で終了とする。いいな?』

 両者はメシアに了解の意のサインを全画面ディスプレイに点灯させる。

『では始め!』

 スネイクとウィングは太陽の光を尾翼で反射させながら急上昇を始める。高度一万フィートで機体を捻り、水平飛行に入ったところで模擬戦が開始された。お互いのレーダーにはお互いの機影が移っている。少しの間出方を伺う両者、まず最初に動き出したのはマルコ。

 天翔の背後に付こうと、機体を捻り、小さく右旋回を行う。旋回性能の極めて高いMFはすぐに反転し、天翔の背中を捉える。

『そんなにヨタヨタ飛んでたらすぐに撃墜しちまうぜ? もっと俺を楽しませてくれよ』

 マルコはロックオンするギリギリのところで、まるでウサギを狩るかのようにフラフラと飛ぶ天翔を追い立てるように背後に付く。

『ほらよ!』

 マルコの声と共に、マルコはトリガーを引く。しかし、その瞬間、マルコは天翔の事をロストする。

『な⁉ ば、馬鹿な! 奴は何処へ消えた?』

 マルコはレーダーを確認するが、どこにも天翔の機影が見えない。そして、その次の瞬間マルコの全画面スクリーンの正面に大きな文字で撃墜と書かれた赤い文字が点滅し、撃墜判定が下る。

『は⁉ いったいどこから?』

『スネイク、お前の負けだ下がれ』メシアから通信が入る。

『いや、ちょっと待ってくれ! 奴は何処にいるんだ? 俺が落とされるわけな……』

 マルコがそう言いかけたところで、天翔の機影がマルコの背後から近づいて来る。

『大尉殿、撃墜判定が出ているはずですが?』

『お前、一体どこから……』

『もういい、スネイク戦域外へ下がれ。次は私が相手になる』

『ちょ、隊長。次は俺の番でしょ?』

 メシアの言葉にアンデレが不満の言葉を漏らす。

『気が変わった、私がやる。何か問題でもあるか?』

『もう……わかりましたよ。これじゃあ俺の出番は無しだぜまったく……』

 メシアの強引な割り込みにアンデレは仕方なしという感じで諦め、おとなしくメシアに順番を譲る。

『次は私の番だ。何か異論はあるか?』

「いえ、ありません」

『ルールは先ほどと同じだ。それでいいな』

「ウィルコ」

『では、始める』

 メシアの言葉と同時に二人は高度一万フィートまで上昇、その後南北に別れ、今度はすぐに天翔が急旋回、メシアの背後に付こうとするが、メシアはそれを阻止するかのように急旋回をかけ、二人はお互いの機の背後を取ろうとするかのようにぐるぐると空の上を廻る。お互いにお互いの姿が見えるように旋回を続けるが、そこで天翔がしびれを切らしたか、賭けに出る。普通の戦闘機には無理な機動を行えるのが、可変機構を有するMFで有り、空中で飛行形態からアームドと呼ばれるロボット形態に変更し、空気抵抗を利用する事と、今までの進行方向とは急激に逆向きへのエンジンの噴射で、その場で無理やりな方向転換が行える。しかし、その分パイロットと機体にかかるGはかなりの物で、相当な訓練を積んだパイロットでも、その機動はかなり苦しい物になる。

『な⁉、あいつなんて無茶を!』

アンデレが、思わず叫ぶ。

 アームド形態に変形し、重力に引かれその高度を落とす天翔の機体。そして、今まで同高度で飛んでいたメシアの機体がその上を飛び抜けるのを狙って、ロックオンをかけようとしたが、いつまでたってもメシアの機体は天翔の上空には現れない。それを不思議に思った天翔は瞬間的にレーダーに目を向けるが、その瞬間に、天翔の機体にレーダーロックされている赤い表示が全画面ディスプレイに浮かぶ。

『これまでだな。異論はないな?』

「はい……」

『さすが隊長ですな、まさかあそこでウィングと同じ機動を取れるとは』

 アンデレが通信で話しかける。そこでようやく天翔はどうやって自分の機体がレーダーロックされたかを理解した。

『天翔、我々の実力は理解できたか?』

「そうですね、少なくとも中隊長には敬意を示せます」

『な、じゃあ俺たちにはどうなんだ?』

 アンデレが通信越しに大きな声で叫ぶ。

「それはこれから次第では?」

『よーし、隊長。三回戦行かせて――』

 その時、緊急通信が全軍に入る。

『緊急事態! フェアリーが基地周辺一〇キロ圏内に侵入した。規模は大隊規模。各員迎撃態勢を取れ! 繰り返す、各員迎撃態勢を取れ!』

『という事だ、オーク、歓迎会はまた今度だ。とにかく一旦基地に戻って補給をして防衛戦に入る。急げ!』

『ウィルコ』

 全員が一斉にメシアの声に答える。全機バーナーをマックスでふかし、一気に音速までスピードを上げる。そして、数分で基地周辺に到着した時には、すでに防衛戦は始まっており、基地周辺五キロ圏内までフェアリーは迫ってきていた。

『管制、A中隊だ、基地への着陸許可を願う』

『こちら管制、C滑走路への着陸を許可する。外ではすでに防衛戦が始まっている、もうフェアリーの射程圏内に入りつつある、流れ弾に気を付けろ!』

『サンクス。各員聞いた通りだ、ウィングから順次C滑走路にアプローチ。補給後各小隊長は小隊員を引き連れて防衛戦に上がる。担当地域は追って連絡する。以上、急げ!』

 メシアの声に全員がサインを送り、ウィングが着陸態勢に入り、そのまますぐに着陸する。それに続き、各員がすぐに着陸をして、メシアが最後に着陸した後、すぐに実弾と燃料の補給が行われる。その間にメシアは司令官に連絡を取り、担当区域が決定した。

『A中隊各員、担当区域が決まった、現在九〇度の地点で最終防衛ラインを割られそうになっている、そこでの防衛戦だ。全機補給が完了次第小隊単位で離陸せよ。離陸後はオールウェポンズフリー! フェアリー達を叩きのめしてこい! 以上』

 順次補給が完了した小隊が離陸を開始する、まず最初に離陸したのはエリサベト率いるスローンズ小隊、そして、マルコが率いるヴァーチュース小隊が上がったところで、アンデレが率いる天翔の所属するドミニオンズ小隊が離陸し、最後に中隊長のメシアの率いるセラフィム小隊が離陸する。そして各小隊は一路防衛担当区域を目指しスーパークルーズで飛行する。



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