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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

蛇沼影利は休めない

愛する者のため彼は魂を売る

作者: ゴミ製作機

 時は、トランプ暦456年のこと。世界中にいた魔物・魔族たちが突如あらわれた魔王【スネーク】の指示のもと人間達の住む土地に侵略活動を仕掛けて来た。これを危惧したトランプ国 国王【キング】は天界に住む女神に祈りを捧げ、その打開策を乞うた。その結果、異世界から勇者を召喚しそれを支える4人の仲間を見つけよ とのことだった。


 全ての傷をいやしあらゆる物を浄化する力を持つ『聖女』、その一撃は岩をも砕き自身の得物に刃こぼれをさせない『剣士』、攻撃こそ最大の防御である『魔法使い』、遥かかすむ敵とて外さぬ『弓士』


 以上のスキルを持つメンバーを探すことになった。教会では15才にもなるとスキル鑑定が行われ女神によると今年の鑑定で現れるとのことだった。周りは半信半疑だったがスキル鑑定の日に該当する者が見つかったのだ。片田舎の村から2人と地方貴族の2人だ。さっそくその4人は、王宮に招かれ魔王を倒すように王に命令された。最初こそ戸惑っていた4人だが、スキル鑑定の前日に異世界より召喚された勇者のアツい説得により打倒、魔王!となった。

 その日から1年後、片田舎の村である騒ぎがあった。


「ごめんなさい、ジョーカー。私は貴方とは一緒になれないわ。さようなら」

「もう2度と話しかけないでください。貴方と身内というだけで虫唾が走ります。ハァ、父上はなんでこんなのを養子にしたんでしょう」

「クイーン、ハート!待ってくれ、俺の話を少しでも聞いてくれ!スペード様と、ダイヤ様もどうか…!」

「はぁ、未練がましいぞ。ジョーカー、彼女たちは勇者さまの嫁になるのだ。諦めろ」

「そうだ!ダイヤの言うとおりだ!この筋肉に誓ってくださった勇者さまなら彼女達を幸せにしてくださるはずだ!」


 そう、彼【ジョーカー】は婚約者で『聖女』のスキルを持ったクイーンに、義理の妹の『魔法使い』のハートとは良く知った仲だったのだ。魔王を討つ旅の前の彼女たちは自分にこんな態度をとる分けない。婚約者のクイーンなら尚更のことだ。すると『剣士』のスペード、『弓士』のダイヤの後ろから1人の青年が現れた。輝く鎧に身を包んだその人こそ勇者【ヒロシ・コバヤシ】だ。


「悪いがジョーカー君、君の大切な彼女たちは僕が貰っていくよ。君では彼女達を護れそうに無いからね」

「そ、そんなことない!」

「では、一騎打ちといこうか?それで、決着をつけよう。ほら、護身用の剣を抜きなよ」


 結果、ジョーカーはボロ負けしてしまった。そう、彼のスキルは『寺人』という、不思議なスキルだったのだ。これでは何が得意か分からず。噂に聞く東の国の教会に関係するとされ彼の今の職業は『神父』であった。勇者達が去った後、まるで彼が泣くように村に雨が降った。

 彼はその中、自分の美しい思い出に逃げていた。自分は戦争孤児でさまよっていた時に、ハートの両親に拾われたのだ。そんな2人に恩返しをしたい一身で頑張って、その姿を見たクイーンに逆プロポーズされハートに嫉妬されたりもした。彼女達が魔王を倒す旅に行くと聞いたときは、不安で夜も眠れず旅立った後も欠かさず神に祈りを捧げた。手紙も3日に1度は出した。最初は勇者の悪口半分、自分に逢いたいと綴られていた。しかし半年もたつと勇者を褒め称え、自分を馬鹿にしてきた。そして、1年ぶりの再開がこれだ。彼女たちは変わってしまった。

 彼は起き上がり焦点の定まらない眼で歩き出した。これを最後に村で彼を見た者はいない。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

3年後の魔王城~

「人間界の侵攻は何処まで進んでいる?」

「はい、およそ4割かと」

「よし、あせらずゆっくりと行こう。我々の寿命は長いのだからあせる必要は無い。負けそうになったら逃げて、気を待ちここぞというタイミングで叩くのだ。負傷兵はすぐに退避させ休息を与えよ」

「はい!」


頭から2本角を生やし、背中に何かを引っ付けている彼こそ魔王『スネーク』だ。その横に薄い布地の物を纏った隻眼の男が口を開いた。


「おい、勇者たちは今何処にいる?」

「しばし待て。…もうじき来るだろう。奴らの進行ルート上には弱い者しかおいとらんから、来ない時は、単純に弱いだけだ」

「そうか…」


 そういうと、右足を引き体を右斜めに向け細い剣を右脇に取り、剣先を後ろに下げた構え取り抜いた。それは飛ぶ斬撃となり魔王を襲ったが、背中に付いていた者がその斬撃を自身の持つ剣で止めた。


「まだまだね。気持ちを落ち着かせて一瞬で抜かないと『イアイギリ』は出来ないわよ」

「はぁ、まだまだか…」

「ところで、儂に攻撃を仕掛けたことについては不問なのか?」


 魔王に斬撃を与えた彼は最近、魔王の城に仕えた者だった。たまたま、魔王が人間の大陸に足を運び魔物の群れに身投げをしようとした人間に興味を持ち連れ帰ったのだ。その人間のスキルは『侍』というレアスキルで剣より細く片刃の得物で相手を斬ることに特化したスキルだ。剣士が岩を砕くのなら彼は斬るのだ。その為に動作に支障が出る重い鎧を脱ぎ捨てて、腹には布を何重にも巻き薄い布地の服を着ている。速さが切れ味を増すのだ。

 そんな彼の名前は【ジョーカー】。彼女たちを取り返すために、魔王に魂を売った男である。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ふぅ、四天王といっても対したこと無いな」

「ヒロシー!すごーい!」

「ヒロシさん、流石です」


 魔王城3階にて勇者が、最後の四天王を倒していた。残すは噂に聞く隻眼の剣使いだけだ。コバヤシは、この異世界に来てから絶好調だった。もともと整った顔立ちだった為、召喚される前もモテたが今ではその比にならないほどに女が自分によってくるのだ。特に、クイーンとハートは最高の女だった。体のラインも素晴らしく顔もかわいい、なによりも自分を慕っている。元々は、婚約者がいると聞いて、クイーンは中古かと思われた。しかし自身に備わっていた『鑑定:極』で処女だったので美味しく戴こうと思ったが、国王に付けられた『男の守り』のせいで出来なかった。

 それにしても今まで女を取ったことは数あれど、あいつから彼女達を奪ったのは最高だった。たいした面構えでもないのに、こんな綺麗な女に愛されていいはずが無い。だから、死ぬ寸前までいたぶった。さぁ、この重い扉をあけて剣使いと魔王を倒せば『男の守り』を外されハッピーでハーレムエンドだ。うまくいけば王様にもなれるかもしれない。姫も戴かなくてはな、扉をスペードとダイヤに開けさせた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「くっ、か!!」

「ぐぎぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」

「弱いな、これで勇者パーティなのか?」


 なんなんだコイツは?!扉を開けると俺がもといた世界の『着物』を着た鬼の仮面をつけた魔族がいた。そいつはこの世界には無いはずの『刀』を腰に携えていた。嫌な予感がしスペードとダイヤに油断するなと伝えたが簡単にやられてしまった。スペードは喉を突かれ呼吸がうまく出来ずに苦しみ、ダイヤは両腕を落とされその場で悶えていた。


「さぁ、次は誰だ?」


 くそ、こんなことでくたばってなるものか!俺は聖剣を握り締めそいつに切りかかろうとした。だが、そいつは刀を鞘に戻し明かに鈍らな剣でそれをなんなく受け止めた。


「悪いな、レベルの差がありすぎてその差を埋めるにはこうするしかないようだ」

「ふざけるな!」


 これじゃあまるで、有名な鳥の目を持つ剣士みたいじゃないか!


「がっかりだ」


 その言葉を最後に俺の意識は途絶えた


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 クイーンとハートは勇者が倒れると同時に意識を失った。魔王のいうとおり彼女たちは最悪のスキル『魅惑の瞳』に当てられていたようだ。俺は今から3年ほど前に、彼女達に裏切られ自殺しようと思った。しかし、それを魔王が救い俺の話を聞いてくれた。


「恐らくそれは最悪のスキル『魅惑の瞳』にやられている可能性があるな」

「な、なんですか?そのスキルは?」

「簡単に言うと相手を思いどうりにしてしまう恐ろしいスキルだ。過去にもそのスキルで滅びた国があるほどだ」

「じゃ、じゃあ彼女たちは…」

「もしかしたらだが、救えるかもしれない。だが、可能性の話だ。本心でお前と離れたいのかもしれないぞ?」

「でも、俺はその可能性にかけたいんです!お願いします、俺に力をください!」


 後でわかったことだが、俺のスキル『寺人』とは異国のスキルで『侍』という職業を指すそうだ。それに見合った武器、戦い方を魔王の後に引っ付いている女性から教わり力をつけてきた。そして、いざ勇者と対自すると明かに勇者達のレベルが低いことに気がついた。恐らくスキルに頼って碌に鍛錬を積んでいないのだろう。あっさりと勝てた。勇者は少し骨があると思ったがこちらも同じだった。

 俺は今、魔王のご好意で上等な客室で愛する2人が目を覚ますのを待っている。


「んっ…」

「あっ…」

「クイーン、ハート!」

「ジョーカー…?ゴメンね。ごめんなさい」

「お、お兄ちゃん。ごめんなさい」

「もう、全部終わったんだ。いいんだよ、これからゆっくりでいいから、前へ進んで行こう」


 それを物陰から見る人物。スネークと…


「シナリオどおりだな」

「えぇ、そうね。あとは私と貴方との間に世継ぎが生まれれば完璧ね」

「それはシナリオに無いぞ。ランサー」

「フフフ、冗談よ。前の世界でも出来なかったんですもの。今更出来るとは思ってないわ。彼に引き継がさせるの?」

「あぁ、次期魔王はあいつだ」


 勇者が魔王に戦いを挑み5年後、世界は魔王に支配された。しかし、そこには悲しみ苦しみなど無くみなが笑顔で暮らせる世界が広がっていた。複数人いる王をなくし、全員で全世界の政治を見ることにしたのだ。これにより国境というくだらない境はなくなり、流通が発展し各国が大いに潤う結果になった。

 そして、魔王は世界を中立した立場になった。その魔王には美しい2人の妃と、忠実な2人の側近が絶えずついていた。


FIN

登場人物~

スネーク

その正体は、蛇沼影利。神さま見習い研修としてまたもや異世界転移させられた。今回も、魔王である。童貞歴が遂に700年になったため、完全に自由であるが悪になりきれずに日々を過ごす。何故か、次の異世界転移にランサーもついてきたので驚いている。


ランサー

前作に登場した女勇者。創造主【神の中のGod】の気まぐれでスネークと共に、異世界転移させられる。スネークに対する愛情は減ることを知らない。スネークの童貞をもらえるその日まで、彼に寄り添うと誓う。


ジョーカー

勇者に最愛の家族と婚約者を奪われた人。たまたま、人間界に視察に来ていたスネークに助けられ元勇者である、ランサーに師事する。彼女達を取り返してからは、次期魔王になるため日々努力している。後に5人の父親になる。


クイーン

勇者のスキル『魅惑の瞳』で一時的に洗脳状態に陥っていた。洗脳が解けた後は、愛するジョーカーに尽くし3人の子供を生む。そして、聖女という立場を利用して魔王軍兵を癒して回った。


ハート

勇者のスキル『魅惑の瞳』で一時的に洗脳状態に陥っていた。洗脳が解けた後は、義理ということを盾にジョーカーを押し倒し双子を授かる。自身の魔法で教会をぶっ壊しているのは秘密。


スペード&ダイヤ

実は彼らも勇者の『魅惑の瞳』で一時的に洗脳状態に陥っていた。クイーンに治療され、ジョーカーの側近となる。


女神

目を放した隙にスネークに自分の世界が狂わされたのを知る。だが、又作ればよいという考えでその世界を放棄した。


ヒロシ・コバヤシ→小林 広

元いた世界でもいつ背中を刺されてもおかしくない系の男。国王につけられた貞操帯のせいで、ヒャッハーできなかった。死後、スネークの力により元いた世界に戻されるが男性機能を失う。


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― 新着の感想 ―
[一言] 男性機能を失う?ゲイさん? それでも刺されそうだけど
[良い点] 勇者の性質を察してしれっと貞操帯をつけさせる国王グッジョブ! 世にある勇者NTR系作品の王も、後で困るくらいならこのくらいの判断力行動力があればなー(笑 [一言] わかってしまえばチープか…
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