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第2話 森羅に会いに行く


 現代の陽ノ下家ひのもとけも、2000年前と同様、理由はわからないが、ある日突然よみがえったフリーエネルギーが全世界に供給されたあと、メンテナンスのノウハウを地域に提供している。


 今回は、学校制度の腐敗を見ておられずに始めようとしているプロジェクトだ。

 既存の概念などなかったような発想で、子どもたちに学びを提供していくのだ。出来る人が、出来る時に、出来ることを。


 まず、常駐の先生というものは置かず、ミスターが遺伝子工学など、トラばあさんも理工学などを教える。

 正体を知った万象ばんしょうが、「騙されたー!」と雄叫びを上げた伝説のシナリオライター、あかいモワノーことすずめは、文章の書き方やなんかを教えることになっている。

 そのほかにも、陽ノ下家には畑のスペシャリスト、執事、メイド、庭師、清掃のプロ、などなどがいる。彼らも大事な講師だ。

 料理人もいるのだが、講師第1号としては万象がそれにあたる。

 そしてなんと剣術講師、兼、料理講師の助手として、鞍馬くらまが抜擢されることになった。


 そのほかにも、全国津々浦々と世界各地に広がりつつある、似たような取り組みをする団体や個人と連絡を取り、それぞれのノウハウは出し惜しみする事なく共有する。陽ノ下家にやりたいことの講師がいないときは、他の取り組み先に「留学」して、実践を学ぶことも出来る。そうやって他との交流をはかることで、お互いが自分本位にならないようにしているのだ。

 他にはネットを最大限活用して、ミスターのように陽ノ下家に講師がいなくても、いつでも授業は受けられるようになっている。

 授業の合間には、遊びの時間もたっぷり取ってあって、その中から学んでいくことも多い、と言うより、本来はその中から学ぶことの方が多いのかもしれない。


 とはいえ、子どもの頃の生活習慣は大事にしなくてはならないので、毎日、遅くても決められた時間内には来なくてはならない。

 ただ、それにも幅があって、畑仕事が好きな子は早朝から来ても良いし、料理が好きな子は朝食が作りたければ早くから来ても良い。


「って言う構想なのよねー。どうかしら、バンちゃん」

 やけに嬉しそうに説明を繰り広げる桜子さくらこの言葉に、

「お、俺は専門家じゃないので、教育的なことはどうも……」

 と、言葉を濁す。

 けど、どうしてもひとつ引っかかることが。

「なんで鞍馬が料理助手なんですか」

「あら? あくまでも料理の先生はバンちゃんで、鞍馬さんの本業は剣術講師よ」

 鞍馬は★市の店をたたんだあと、料理人に困っていない陽ノ下家ではなく、東西南北荘の料理人として働きたいと申し出てきた。それも最もだと考えた桜子だが、そこはそれ、一筋縄ではいかないのもまた桜子だ。

 前回の鞍馬の働きを高く評価して、剣術を教えてほしいと頼み込んだと言うわけだ。

 それなら剣術だけでいいんじゃないかよ、とブツブツ考えていると、「助手はやっぱり必要よね?」と言ってきた桜子に、本来が負けず嫌いの万象のこと、こうなったら料理助手なんていらないほど頑張ってやる、と、決意を固めるのだった。

 ただ、ダイニングから見えていた建物は、近くで見るとまだ外装も未完成だ。

 どうやら学びどころが始まるまでは、まだまだ時間がかかりそうだ。



「そうかあ、バンちゃん行っちゃうのかあ」

「すみません!」

「いやいや、怒ってるんじゃなくってね。これはチャンスだなあって。だってさ、うちの料理人が陽ノ下家に引き抜かれたなんて話が広まったら、求人わんさかやってくるよお。それも腕に覚えのあるのがね」

「はあ」

「いやあ、どっちにしても嬉しいことだよ。バンちゃんにとってもうちにとってもね」

「はあ」

 そんなある日、オーナーに呼ばれて、きた! と覚悟して話しをしに行ったのに、もうあらかたの事情も説明済みらしく、なんだか拍子抜けの反応だった。いや、泣いて引き留められてもきっと困るのだが。


「そうかあ、バンちゃん行っちゃうのかあ」

「すみません!」

「いやいや、怒ってるんじゃなくってね。バンちゃんがいなくなると、癒やしと楽しみが減るなあって」

「はあ?」

「そうそう。万象ってさ、腕が良いくせに時々抜けてるんだよなー」

「うん、それが唯一の癒やしだったのに。修羅場のランチタイムとかのさ」

「先輩~、ちょっと考えなきゃならないギャグが聞けなくなって寂しいです~」

「はあー?」

 料理長や同僚後輩にも同じように話したが、反応はこれだ。

「俺の必要性って、そこかよ!」

 とか言いつつも、万象はこんなに良い仲間に恵まれていたことが、今更ながらとても嬉しいのだった。


 とは言え。

 本当にとは言えだ。万象が陽ノ下家へ就職するのは2ヶ月以上も先の話なので、日常生活は今のところ変わりなく過ぎている。

 変わったと言えば、あんなに頻繁に来ていた森羅しんらが、ここのところパタリとこなくなった事だろうか。

「なあ、森羅、俺のいないときに来てたりする?」

 もしかしたら、万象が店へ来るのをきつく禁止したので、すねてわざと万象のいない時を狙ってきているのかも、とか思って玄武げんぶに聞いてみたが、彼は不思議そうに言う。

「え? 森羅さま、バンちゃんのいないときに来てるの?」

「いや、最近会わないからさ、入れ違いになってるのかなーって」

 と、曖昧にごまかした。まあ、森羅がわざとそんなことするはずないよな、とか思いながら。

「そんなに気になるんなら、バンちゃんが行けばいいじゃない」

 すると、ちょうどそこへやって来た雀が2人の会話に口をはさんで言う。

「だよな」

「バンちゃんまた2000年前に行くの? じゃあ僕も行きたい!」

「あ、ああ。じゃあ今度の休みにでも、行ってみるか」

「わあい」

 嬉しそうな玄武の頭をなでていると、雀が「じゃあ朱雀すざくにお土産持ってってねー」と、こちらも嬉しそうに言い出すのだった。



「で? なんでトラばあさんと桜子さんまで来るんですか?」

 今日は久しぶりの休日。万象は玄武と約束していたとおり、2000年前に出発するべくタイムマシンに乗り込もうとしていたのだが。

「これ、待たんかい!」

「まってぇ」

 と、息せき切ってかの2人がやって来たというわけだ。

「だって、私のそっくりさんに会ってないの、私だけよ。ずるくない?」

「わしはそのお供兼護衛じゃ」

「お供って、護衛って……」

 ガックリうなだれる万象など気にもせず、2人は大荷物を抱えてルンルン気分だ。

「これはね、うちで試験的に作ってみたマンゴーよ。きっと珍しいわよ。ね、ね?」

「おお、そうじゃの。で、こいつは小トラに頼まれていた……」

「で、これはね……」

「…、」「…、」「…」

 次々出てくるお土産の多さに、引っ越しかよまったく、とか心の中で思いながらも万象は、勝手知ったるタイムマシンを作動させる。何度も往復するうちに、今では万象はもちろんのこと、ちょっと機械音痴の雀でさえマシンの操作が出来るようになっているのだ。

「それじゃあ、行きますよ」

「しゅっぱーつ!」

「「しゅっぱーつ!」」

 玄武の号令にあわせて、元気よく腕を天に突き出すトラと桜子だった。


 着地点は、最初にこのマシンが到着した、例の万象が使っていた部屋のままになっている。というのは、その都度違う所に出入り口が現れたのではやはり危険を伴うからだ。同じ理由で東西南北荘の出入り口も、トラばあさんの離れから、本宅1階の階段横に変更したあとは、そこと決まっている。

 なぜ東西南北荘側だけ変更したのかって? だって、トラばあさんの離れはそれでなくてもゴッチャリと物が多い。その上タイムマシンの出入り口はその奥の奥、発明品や研究品をガンガン踏み分けて、ようやくたどり着くような場所だったからだ。


「よし、到着。えーと、皆さま、本日は長旅お疲れ様でした」

 ちょっとふざけて言う万象に、笑顔で答えるトラと桜子。玄武はその言葉を聞くやいなや、嬉しそうに外へ飛び出して行った。

「玄武・兄ー!」

「こらっ、玄武。走ると危ないぞ」

 意外に世話焼きの万象が、後を追いかけて同じように外へ走り出す。

「どっちも危ないのう」

 少しも危なげなさそうにトラが言う。桜子は部屋の様子に興味津々だ。

「ここは? まあ、バンちゃんが使ってた部屋? ステキね。間取り的にはどのあたりかしら」

 などとつぶやきながらあちこち見回して、ついでにあれこれ触りまくった後、ようやくトラに話しかけた。

「へえ、やっぱりうちとはずいぶん趣が違うわね」

「それはそうじゃろ」

 なにせ2000年の時を経ているのだ。違っていてあたりまえなのだが、桜子にとっては、どうしても自分の屋敷だと言う認識があるため、それが不思議なのだろう。

 部屋から廊下に出ると、先へ行った2人はもうどこにも姿が見えない。

「ほんに早いの。まあ、勝手知ったる旧陽ノ下邸じゃから、放って置いてもよかろう」

「そうね」

「どれ、では桜花おうかに会いに行くか?」

「まあ、嬉しい」

 などと話しつつ、トラと桜子は桜花の部屋へと向かった。


 けれど、程なくして、少しショボンとしながらこちらへやって来る万象に出くわした。

「おや? バンちゃん、どうしたんじゃ? 何だか元気がないの」

「えっと、それが……」

 訳を聞くと、どうやら森羅と入れ替わりになってしまったらしい。

「え? それはどういうことじゃ? タイムマシンは同時に使えんはずじゃが。まさか小トラがもう1台作ったのか?」

「違うんだ。なんだか森羅のヤツ、タイムマシンを使わずにあっちへ行く技を体得したらしい。まったく、なんなんだよそれ」

「ええっ!?」

 これにはトラもビックリ仰天、とりあえず何がどうなっているのか聞くために、行く先を小トラの部屋へと変更する。

 だが、ちょうど食堂(現代で言うダイニング)までやって来た時、そこに小トラと桜花の姿を発見した。

「おお、小トラ」

「おや、トラではないか。お、隣にいるのは」

「まあ、もしかして桜子さん?」

「そういう貴女は、桜花さん?」

 2人は初対面のはずなのだが、お互いに一目会ったその途端、まるで女学生のように手に手を取りあって、心なし弾みながら喜んでいる。

「お目にかかりたかったー」

「私もよー」

 トラと小トラはあきれながらも嬉しそう。万象もそんな2人に、思わず頬をゆるめてしまうのだった。


 そのあと万象たちは、食堂でお茶を飲みながら、小トラから森羅の話を聞いていた。

「森羅は常識を逸脱した天才での。まあワシらとは頭の造りが違うから、チョチョイと計算して想像もつかないことを考え出すんじゃ。今回も、いいこと思いついた、とか何とか言いおって、しばらくかかり切りだっんたじゃが」

「チョチョイと計算って、なんだよそれ」

「ついこの間、完成したから今度実験してみる、と言っておったんじゃが。それが今日だったらしい」

「ふうん。それでここんとこ、パタリとこなくなってたのか。まあ、俺とは出来が違うもんな、あいつは」

 万象が自分との差を見せつけられたからか、唇をとがらせてブツブツ言う。そんな様子を可笑しそうに見ていたトラが、なぐさめるように言った。

「そう落ち込むな」

「落ち込んでない!」

 いつもながら心と裏腹な事を言うあまのじゃくな万象だ。トラは今度は、ハハハと笑いながら、また説明を始める。

「思うに、お前にも同じ事は出来ると思うぞ」

「え? ホントかよ」

 ちょっと疑い深げに、けれどほんの少し嬉しそうな万象。

「森羅とはアプローチの仕方が違うだけなのではないかな。バンちゃんの強みは完全に文系だと言う事じゃ。頭で理解するのではなくて、感覚的に持っている柔軟性と天性の勘で、森羅と同じ技を体得出来るはずじゃ」

「ええ?! んな事言ったって、どうすればいいんだよ」

「まあまあ、森羅が帰ってきたら教えてもらえ」

「そうね、それが良いわ。それまでゆっくりしてお行きなさいな。とりあえず桜子をあちこち案内したいし」

「本当? 嬉しいー」

 桜のつく2人は、どこまでもマイペースだ。皆に了解を得ると、ふたりして本当に楽しそうに食堂を出て行った。

 あとに残ったトラと小トラも、万象には意味不明の、何やら新しい発明の相談を始めてしまう。

 手持ち無沙汰になった万象は、到着早々どこかへ行ってしまった玄武・弟を探しに行こうと、2人のトラに断って食堂を後にする。


「あーあ、ホントにどこ行っちまったんだよ、玄武のヤツ」

 と言いながらも、足は自然に森羅の部屋へと向かっている。だが、近くまで来たとき、誰もいないはずの部屋の扉が開き、中から人が出てくるのが見えた。

「あれ、森羅、帰ってきたのか?」

 いぶかしげに呼んだ万象の声に振り向いたその顔は。

「万象さま?」

一乗寺いちじょうじじゃないか、何やってんだ? お前」

 思わず歩み寄った万象の前にいるのは、以前ここにいたとき、身の回りの事を色々世話してくれた一乗寺だった。彼はいつもは森羅の世話係だ。

「森羅さまが、自分のいない間にチョコッと部屋を掃除しておいてね、と、言い残して行かれましたので」

「なんだよそれ」

 万象は思わず吹き出してしまう。

「ところで万象さまはなぜここに?」

「そりゃあ森羅に会いに来たに決まってんだろ」

「ふふ、そうですね」

 今度は一乗寺が可笑しそうに笑う。

「ですが、私が掃除し終わる頃には戻れるかな、とか言っておられましたので、もうそろそろお帰りになると思いますよ」

「そうなのか」

「はい。それで、どうされますか? ここでお待ちになりますか?」

 と言いながら、一乗寺は部屋のドアを大きく開けてくれたのだが、万象は少し考えて首を横に振った。

「だったら食堂で待ってるよ。トラばあさんたちもいるし」

 と、元来た道を一乗寺とともに引き返す。

 食堂の近くまで来たとき、バッタリと玄武に出くわした。なぜか玄武はとても慌てた様子で、しかも万象の顔を見るなり泣きそうな顔になる。

「バンちゃん」

「どうした? 玄武」

「兄が~、玄武・兄が消えちゃった~」

「え?」


 あわてて食堂に戻って、そこにいたトラばあさんたちと一緒に話しを聞き出したところによると。

 玄武・兄を見つけてしばらくは一緒に遊んでいたのだが。

「あ、ちょっと待って」

 と、いきなり立ち止まった玄武・兄が、「森羅さまが呼んでる」と言って、手のひらを広げ、その手を天に突き出す。

 すると。

 ノイズがかかったようになった玄武・兄の姿が、そこからフッと消えるようにいなくなってしまったと言うのだ。

「森羅さまが呼んでる、と言ったのですね」

 話を聞いていた一乗寺が、確認するように玄武・弟に聞いた。

「うん。変だなと思ったんだよね、だって森羅さま、僕たちの時代に行ってるって言うし」

「それはきっと」

 と、一乗寺が何か言おうとしたとき、ヒュウンと心地よい音がした。皆がそちらに目をやると、くるくると、今度は心地よい風が一陣舞い上がり、その中心から風に乗るように森羅が姿を現した。

「森羅さま」

「おお、森羅、帰ってきたのか」

「はい、ただいま、……おっと」

 少し驚くような声を出したのは、玄武・弟がいきなり抱きついてきたからだ。

「森羅さまあ、玄武・兄が消えちゃったあ、なんで~」

 すると、それだけで意味を理解したのか、よしよしと玄武・弟の頭をなでながら、森羅が言う。

「ごめんごめん、君が来てるの知らなくてね。すぐ帰ってきてもらうから」

 と、片手を軽く上げた森羅が、指をパチン、と鳴らす。すると少し離れたところに人型のノイズができて来て、そこに玄武・兄が現れた。

「お帰り。練習に付き合ってくれてありがとうね」

「うん、楽しかった! わ、どうしたの? 玄武」

「玄武・兄~」

 と、今度は弟が兄に抱きつくので、そこにいた面々は、大いに彼らに癒されるのだった。



「で? なんでそんな練習してんだよ」

 ここは森羅の部屋。

 せっかく一乗寺が綺麗にしてくれたんだから、と、万象は誘われるまま森羅の部屋にいた。一乗寺が持ってきたお茶とお菓子をつつきながら万象は、遠慮もなく森羅のベッドに寝転がっている。

「備えあれば憂い無し、ってね。」

「はあ?」

「悪さするのがそっちに現れたときに、すぐに駆けつけられるように」

「なんだよそれ。俺たちの時代には、ここみたいに悪さするヤツはいないって言ってたじゃないか」

 手を伸ばしてお菓子を1つつまむと、ポイッと口に放り込む。

「なあんて。実はタイムマシンは時間がかかるから、まどろっこしかっただけ。で、何かないかなーってこの間から考えてたんだよね」

「なあ、森羅ってけっこう気が早い、じゃなくて、せっかち、なのな」

「え? そうだよ。知らなかった?」

 ふうん、と、ちょっと意外そうにしていた万象が、思い出したようにムックリと起き上がった。

「そう言えば、トラばあさんが言ってたんだ。俺にも森羅みたいな技が体得出来るんじゃないかって」

「技? 技ってなに、アハハ、可笑しいー」

 変な事言うね、と笑い出す森羅に、万象はちょっと唇をとがらせながら言う。

「技じゃないか。ちっとも変じゃない。なあ、教えてくれよ。俺だってあれが出来れば、行ったり来たりが簡単なんだろ?」

「うん。けど、なぜかあっちもこっちも、飛べるのは陽ノ下家の敷地内だけなんだ。東西南北荘は隣接した畑にしか出られないんだよね。それでもいいよね?」

「そうなのか? ああ、全然かまわないぜ」

「じゃあ、説明するね」

 と、楽しそうに時空移動の説明を初めてから、約3分。

「うげえー、わっかんねえ。あのさ、もう、そういう小難しい式とか理論とかはいいからさ、なんかこう、感覚的にわかるような説明の仕方はないの?」

 口で言ってもわからないだろうと、森羅はノートにサラサラと超難しい方程式を書いていたのだが、万象はたった3分で値を上げたのだ。

「感覚的にわかる? うーん」

「どーんとやって、バーッととか」

「どーんとやって、バーッと? 俺にはそっちの方がチンプンカンプン、だよ」

「あー、じゃあ、どうすりゃいいんだよ」

 また愚痴る万象を可笑しそうに眺めていた森羅だが、ふと思いついて、万象をベッドから引きはがす。

「なんだよ」

「感覚的って言われたからさ、いちど一緒に移動してみようよ。そしたら会得するかも知れない」

「そうか!」

「でも、もし失敗したら、俺たち時空の彼方に飛んで行って帰れないかも、だよ?」

「え? ええーーーー!」

 そのあと、嫌だー、イヤダ! 離せ! と、抵抗する万象を羽交い締めにして、森羅が楽しそうに時空間移動を決行したのは、言うまでもない。


 え?

 そのあと2人はどうなったかって?

 それは、……次回へつづく。


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