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第7話 赤江光陽の、夢…?

 さあ、ワールドカップ決勝戦もいよいよクライマックスとなるか!日本対スペインの決勝戦は未だ0−0!スコアレスのまま、後半アディショナルタイムに入っております!目安となるアディショナルタイムは、5分!残り5分程で決着がつくのか、それとも延長戦に突入するのか!おっと!ここでスペインがコーナーキックを取りました!日本の右サイドからのコーナーキック。さあ、日本はピンチを迎えましたが、ここは集中どころ!90分以上走り抜いてかなりの疲れの色が見えますが、何とか跳ね返して欲しい!コーナーフラッグ付近に立つのは、スペインの8番イニエスタ!何度も芸術的なパスを出してきたその右足、ゆっくりと助走に入った!インスイングのボールは、ニアサイドにきた!そこに飛び込むのは、おおーっと!しかし日本、クリアだ!クリアしました!そして、セカンドボールを拾ったのは、日本だ!赤江光陽拾った!

 (よし!これがラストだ!)ボールをキープした赤江は、すぐさま相手ゴールの方を振り向く。最後の力を振り絞り、右サイド側をドリブルで一気に加速し、スペインゴールを目指す。しかし、相手は世界屈指の強豪スペイン。日本のカウンター攻撃をすぐに察知し、赤江に襲い掛かる。ハーフラインを越えた辺りでDF二人に追い付かれ、何とかボールキープしようとするが、激しいプレスに圧され始める。(クソッ…!このままじゃ取られてしまう…)そう思った赤江の目に飛び込んできたのは、赤江の逆サイド、左サイドを猛然とダッシュして来る一人の味方。

 葵玲央。サッカー歴は浅く体格的にも恵まれてはいなかったが、90分間全力で走りきる事の出来るスタミナと、驚異的なパワーとボディバランスを武器に日本代表まで登り詰めた男。試合終盤、それもワールドカップ決勝戦でも、その能力は色褪せることはなかった。

 赤江には、しっかりとその姿が見えていた。その瞬間、ごく一瞬の刹那だったが、赤江には、葵の動きがスローモーションのように見える。そして、相手に囲まれながらも、辛うじてパスを送る。一見パスミスに思えたボールが、猛ダッシュしてきた葵に通る。ラストパスを確かに受け取った葵は、そのままスペインゴールに向けて突き進む。しかしそこへ、スペイン史上No.1サイドバックとの呼び声高い、セルヒオ・ラモスが襲い掛かる。ラモスはファウル覚悟で葵を止めにくるが、葵も辛うじてボールをキープし続けた。だが、このままでは万事休す。ボールを取られてしまうかと思った葵の頭の中に、突然、一瞬の静寂空間が映り込んだ。そこに差し込む一筋の光。葵はその光に向けて、渾身の力を込めてシュートを放つ。


 ーーー時が止まったかのような、静寂の空間、不可侵の世界、それが聖域(サンクチュアリ)。そこに入り込める人間は数少ない。スポーツの世界でも稀にあることだが、意識的に入り込むことは不可能とされる。ーーー


 モノクロに見えた静寂の世界に、徐々に飛び込んでくる鮮やかな色彩、スタジアムの大歓声、そして葵の元に集まる仲間たち。ついに成し遂げたんだ。赤江も万感の想いで、フィールドで叫んだ。そこへ何故か担任の有屋先生が現れる。「有屋先生、どうしてここに?」「決まってるでしょ。一言だけ言いに来たのよ。」少し間を明けると…

「起きなさい…!赤江光陽くん!」

 ハッとして、赤江は目を覚ました。完全に授業中の爆睡だったのだ。その日の放課後、赤江は職員室に呼び出され、お説教を受ける事になった。しかし、赤江は夢の中で感じた、あの一瞬の静寂の世界の感覚を忘れられなかった。夢だけど、アレは不思議だったな。まぁ、夢だからか…。はぁ〜、ワールドカップ行きてぇなぁ…。説教されながらも、赤江は再びワールドカップを強く夢見るのであった。

 

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