第65話 秋の新人戦開幕!
夏休みが終わり、いよいよ新学期が始まった。
黄金台サッカー部は合宿、練習試合、そして奥山康蔵・釜台邦芳という二人のレジェンドとの邂逅を経て、モチベーションを高めていた。
しかし、監督・有屋紫乃の胸には、一つの不安が残っていた。
(走力も、フィジカルも、連携も。みんな驚くほど成長した。けれど……怪我だけは、誰にも防げない。そしてファウルトラブル。9人しかいない今、一人でも欠けたら、只でさえ厳しい戦いが、益々難しくなるわ…)
そんな懸念を抱えつつ、ついに新人戦当日を迎える。
黄金台高校9人――
GKバル(田浦昴)、
DFムウ(有屋夢生)、ショウ(氷見翔弥)、ザック(早乙女咲哉)、
MFテル(神田照真)、レオ(葵玲央)、ズミ(魚住大輔)、ミッツ(赤江光陽)、
FWカズ(柳沼主良)。
そして、マネージャー兼戦術補佐のバキ(木庭香織)、監督の紫乃。
彼らは大きな期待と、消えない不安を胸に、試合会場へと向かっていた。
――バスの中。
キャプテンのムウがトーナメント表を指さす。
「初戦の相手は湯ノ澤銀山高校。調べた限りだと、守備重視のチームだな。」
バキが資料を手に補足する。
「基本は5バック。試合によってはMFも3人引いて、とにかく堅守速攻。インターハイ県予選ではベスト8、大会最少失点記録を持っています。」
「大会最少失点……」
メンバーたちの表情に緊張が走る。
やがて会場に到着し、受付や開会式を済ませた黄金台一行。
ピッチ練習の時間になると、ちょうどすれ違ったのは――初戦の相手、湯ノ澤銀山高校。
その時、銀山の選手たちのひそひそ声が耳に届いた。
「最初の相手、9人しかいないんだってよ。」
「守ってりゃ楽勝だな。」
その言葉に、テルが即座に反応する。
「てめぇら――!」
食ってかかろうとした瞬間、キャプテンのムウが前に出て制した。
「落ち着け、テル。俺たちはもうサッカー部なんだ。サッカーで、実力で、アイツらに勝とう。今の俺たちなら――勝てる。」
「……ムウ、お前一年だろ?落ち着きすぎだわ。でもまあ、言う通りだな。よし、やってやろうぜ。」
テルは不敵に笑い、他の仲間たちも頷く。
その後、黄金台は初めて立つスタジアムのピッチで芝生の感触を確かめ、練習時間を終える。控室に戻ると、紫乃がホワイトボードの前に立っていた。
「今日のフォーメーションと戦い方、そして何より心構えを。
いい? これは“初めての公式戦”。サッカー部としての一歩を踏み出す戦いよ。」
静まり返る室内。
選手たちの視線は、自然と紫乃の言葉に引き込まれていた。
そして――
黄金台高校サッカー部が、いよいよ新人戦初戦のピッチに立つ。
たった9人で挑む、公式戦初陣。
彼らの戦いが、今まさに始まろうとしていた。




