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第58話 頭脳と閃きの協奏曲


同点に追い付かれた黄金台高校――しかし、その瞳に失意はなかった。


むしろ、熱は高まっていた。


ピッチ上で、キャプテン・ムウ(有屋夢生)とトップ下のミッツ(赤江光陽)が、静かに会話を交わす。


「おい、ムウ。奴ら、ポゼッション戦術に変えてきてるぞ。」

「どうやらそのようだね、ミッツ。……ただでさえ人数が足りない俺たちには分が悪い。」


試合巧者の銅島中は、確実に“人数差”を突いてきた。

ボールを支配し、消耗させ、崩す。黄金台には、まさに最も厳しい展開。


だが、ムウの目に焦りはなかった。代わりに、冴えた策を浮かべていた。


「ポジションチェンジしてみよう。」


その言葉に、ミッツの眉がわずかに動く。


「一番スタミナのあるレオ(葵玲央)を前線に。とにかくボールを追ってもらおう。

カズ(柳沼主良)は1列下げて、ミッツとダブルボランチ気味に。レオのフォローとプレスの調整。

テル(神田照真)さんとズミ(魚住大輔)さんは中に絞って、中盤を厚く。

ディフェンスラインは今のまま、パスの速さに惑わされずゾーンディフェンス。

無駄に消耗するより、パスコースを制限し、スイッチを入れる場所を決めるんだ。

それと――バル(田浦昴)、君には最後の砦になってもらう。裏を突かれた時は、迷わず前へ!」


一同が唸った。


「ムウ、お前ってすげぇな!」

「こんな短時間で策略思いつくなんて……」


それを見ていたベンチ――


マネージャー・バキ(木庭香織)が小声で尋ねる。


「監督、いいんですか? 指示を出さなくて……」


監督・有屋紫乃は静かに微笑んだ。


「これが、“チーム”ってものよ。声を掛け合い、課題を見つけ、自分たちで修正する。

――監督だけのチームじゃない。選手たちのチームよ。」


ピッチに戻る部員たちは、目の奥に明確な目的と熱を宿していた。


後半残り20分、リスタート。


黄金台のキックオフでゲームは再開される。だが、誰も焦らない。


ボールは後方からゆっくりと動き、徐々に中盤へ。

そして――ミッツ(赤江光陽)の足元へ。


その瞬間、ミッツの瞳が静かに光った。


(ムウの作戦は“守る”ための布石。だが――その前に点を取ってしまえばいい。)


彼には、レオの家での修業の日々があった。

短期間とはいえ、必死に身につけた“取っておき”がある。


「任せろ、ムウ。今、俺がスペースを創る――!」


ミッツは軽やかなステップでボールをキープし、寄せてきた那須智、北島雪弥、そして辰野竜介の三人を視界に捉える。


ボールは足に吸い付き、視野は広く、判断は速い。


前半にはなかった――研ぎ澄まされたリズム。


(1人目、2人目……引き付けた。)


ミッツが一瞬、身体を右に傾けたかと思えば――ボールは反対方向へ!


「……なんだと!?」


切り返しと同時にスペースが生まれた――!


走り込んでいたのは、フォワードに上がったレオ(葵玲央)!!


「レオッ!!」


ミッツの足から、絶妙なタイミングと強さのスルーパスが通る。


銅島中のDFが反応するも、2人がかりで囲んだ瞬間、レオは背後のカズ(柳沼主良)へワンタッチで落とす。


カズは迷わず、右へ展開――そこにはズミ(魚住大輔)!!


ズミの左足がボールを捉える――!!


ズドン!!


低く鋭い弾道のシュートがゴール左下へ!


だが……!!


「うおおおおおお!!」


GK安田瞬二が超反応!!

寸前で弾き出した――!!


惜しい。だが、流れは黄金台にあった。


ベンチの紫乃が頷く。香織も拳を握る。


ムウの作戦。ミッツの閃きとスキル。

そしてチーム全体の結束が、“高校生9人 vs 中学生11人”という不利を帳消しにしつつあった。


残り15分――


熱戦の行方は、まだ誰にも分からない。


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