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第56話 奮い起つ 


黄金台高校のベンチへとやって来た奥寺康彦。かつて世界の舞台で名を馳せたその男の姿に、選手たちは静かに息を呑んだ。


「久しぶりだね、有屋くん。」


そう穏やかに声をかけた奥寺は、監督・有屋紫乃の前で立ち止まり、笑みを浮かべる。


「君が監督を始めたことは、徳丸くんから聞いていたよ。ずっと注目していた。」


紫乃はわずかに表情を崩しながら、かつての名手に一礼する。


「ありがとうございます。まだまだ未熟ですが、なんとか…。」


短い会話だったが、監督同士の信頼と尊敬が、静かに交わされた瞬間だった。


そして奥寺は視線をベンチに向け、黄金台の部員たち一人ひとりをしっかりと見つめる。


「前半、試合を見させてもらったよ。中々に面白いチームだ。」


選手たちはその一言に肩をピンと張り、無言で頷いた。


奥寺はさらに、ほんの一言だけ言葉を添える。


「後半も期待しているよ。」


それだけを残し、静かにその場を後にした。


たった一言。それだけだったのに、黄金台の選手たちの内に、何かが点火されたようだった。


「……行こう。」


葵玲央の小さな声を皮切りに、自然と全員が集まり、円陣を組む。キャプテン・有屋夢生が中央に立ち、声を上げた。


「よし、みんな!後半、まずは先制点を取ろう!連携は出来てる。今の流れで、お互いもっと声をかけ合っていこう!」


「おーっ!!」


力強く、気合いのこもった円陣の掛け声が、十和田湖畔の空に響いた。


そして――後半キックオフ。


試合はさらに激しさを増すが、黄金台高校の守備陣はついに真価を発揮する。


氷見翔弥と早乙女咲哉、3バックの両翼が執念のタックルと読みでピンチを防ぎ、中央の有屋夢生が指揮官として守備全体を整える。そして最後尾の守護神、田浦昴が横っ飛びのスーパーセーブを連発。


一方、銅島中学校もその実力を見せる。エースストライカー・安田和輝の豪快なミドルシュートが炸裂。


だが――


その一撃を、田浦が見事にキャッチ!すぐさま右サイドへスローを送る。


神田照真が右サイドを疾走し、トップ下・赤江光陽へダイレクトパス。赤江はワンタッチでボールを左サイドの魚住大輔へ流す。


魚住は持ち前のドリブルでDFを一人かわし、アタッキングサードへ突入。相手のプレッシャーが迫る前に、横へとパスを送る。


走り込んできたのは、ボランチ・葵玲央。だが、銅島中のキャプテン・辰野竜介が猛スピードで詰め寄ってくる。


「絶対、撃ってくる…!」


そう読み、辰野は身体を投げ出す――しかし。


玲央は冷静だった。シュートではなく、トラップで浮き球に変え、ゴール前のスペースへふわりと絶妙なボールを送り込む。


その浮き球に反応したのは、FW・柳沼主良!


直前までDFの視界から消えていた柳沼が、一瞬の加速で裏へ飛び出す!


「いけっ…!」


葵の心の叫びとともに、主良のダイレクトボレーが炸裂。


鋭い一撃がゴール右隅に突き刺さる!


ゴール!!!


黄金台高校、ついに先制点!


湖畔に集まった観客や、両ベンチからもどよめきが上がる。


全員がつないだボール。全員が信じた連携。そして、積み重ねてきた練習の成果。


まさに今の黄金台サッカー部の**「実力の象徴」**とも言える、美しい先制点だった。


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