第46話 秋田頂上決戦‼-秋田翔陵VS大館冥桜-
試合開始30分前。 秋田市内にある県営陸上競技場。普段は静かなスタジアムが、この日ばかりは異様な熱気に包まれていた。 スタンドには県内各地の高校サッカー部、指導者、保護者、卒業生。報道陣も押し寄せる異例の注目度。 ――その中には、自宅のテレビで試合を見守る者たちもいた。 黄金台高校サッカー部の面々も、それぞれの家でテレビにかじりつくように試合開始を待っていた。 そして山奥の玲央の家では、葵玲央と赤江光陽が土埃にまみれた顔でちゃぶ台に並び、食事もそっちのけで画面を凝視していた。 「いよいよ始まるか…」 「この試合で、秋田の“本当の頂”が見える」 2人の目は真剣そのものだった。
両校の選手たちがピッチに姿を現すと、スタジアム全体に重たい静寂が広がった。 冥桜学園は、エース相羽猛を中心に、2年生トリオ“冥桜三巨頭”が並ぶ鉄壁の布陣。 一方、秋田翔陵も、背番号10・泉清澄をはじめ、GK寺内寿、キャプテン山崎豊、2年生の天才FW新城千秋と、攻守に隙のないベストメンバー。 その存在感と集中力は、まるでプロチーム同士の前哨戦。 選手たちが整列し、キックオフの笛が鳴るその刹那―― 沈黙は破られ、観客席から割れんばかりの歓声が響いた。
キックオフは冥桜学園。 相羽猛がボールに触れた瞬間、翔陵のDF陣が身構える。 すかさずボールを後方の苅田雄希へ。 苅田は持ち前の柔らかなタッチでボールを収め、中盤の中央で揺るがぬ存在感を示す。 ――そのまま、前線へ加速した相羽へ鋭いグラウンダーのパス。 相羽は一度、背中でボールを受けると、 振り向きざまにフルスイングの右足で―― 強烈なミドルシュート! ズドンッ! スタジアム中が息を呑む轟音。 シュートは一直線にゴール左隅を捉え―― ……が、わずかに逸れたボールはポストを叩き、ゴールラインを割る。 歓声と悲鳴が交錯する中、相羽は無表情のまま呟いた。 「今年は俺たちが、頂点を獲る。」 パワーアンクルも外した完全な“解放状態”の冥桜。 その先制パンチは、まさに秋田翔陵への宣戦布告だった。
冥桜は試合開始から怒涛のペースで畳みかける。 苅田の正確な展開、栗尾の後方からのビルドアップ、蝶野の1年生らしからぬ技術力、 そして何より、トップの相羽の存在が前線を支配する。 しかし、秋田翔陵は一歩も引かない。 GK・寺内寿は相羽のポジション取りを熟知したかのように読み切り、鋭い飛び出しで一対一を制する。 キャプテン・山崎豊は、鋼のフィジカルとラインコントロールで、相羽と空中戦を繰り広げる。 泉清澄は中盤の底から前線まで顔を出し、ボールを確実に繋ぎ、自分たちのリズムを構築し始めていた。 そして15分、翔陵が最初のビッグチャンスを迎える。 左サイドを新城千秋がドリブルで抜け出し、角度のない位置から逆サイドへロブ気味のクロス。 走り込んだ泉がダイレクトでシュート――! ……が、これは栗尾が辛くもキャッチ! 前半はまだ0-0。だが、火花が散るようなハイレベルな攻防が続く。 お互い一歩も譲らぬまま、試合は徐々に緊張感を増していく。
黄金台の面々も釘付けだった。 夢生は、翔陵の冷静な試合運びに目を見張る。 氷見と昴は、栗尾のスーパーセーブに感嘆の声を上げた。 柳沼は、新城のポジショニングの上手さに圧倒されていた。 玲央は、画面の相羽の姿を見ながら呟く。 「まだだ…あいつは、まだ“解放されて”ない」 光陽は一瞬振り向く。「今ので解放してないのかよ……」 そして、決勝の熱はさらに激しさを増していく。




