第42話 秋田の頂を知る日
週末。 この日、黄金台高校サッカー部のうち、監督の有屋紫乃、マネージャーの木庭香織、キャプテン有屋夢生、田浦昴、氷見翔弥、柳沼主良の6人が、インターハイ秋田県予選の準決勝を秋田市陸上競技場まで観戦に出向いていた。葵玲央と赤江光陽は修業を続けるため、早乙女咲哉は実家の寺の手伝い、神田照真は実家の酒屋の手伝い、魚住大輔は実家の華道教室の手伝いで現地観戦を見送った。メンバー全員での観戦とはならなかったが、参加した6人は現地でしか味わえない熱気を感じていた。 試合前、紫乃が口を開く。 「今日は、秋田県の“頂点に近い高校”のプレーを自分の目で見て感じてほしい。勝ちたいと思うなら、まずはその“頂”を知らなきゃね。」 6人はそれぞれ真剣な表情で頷き、静かにキックオフを待った。
第一試合:秋田翔陵高校 vs 船川海洋技術高校
スタジアムがどよめく。全国ベスト8にまで進んだ県内の絶対王者・秋田翔陵高校がピッチに姿を現す。まるでプロチームのような統制と洗練された雰囲気。その中心に立つのが―― 背番号10、泉清澄 3年生のエース。広い視野と柔らかなタッチ、そして勝負どころでの決定力を兼ね備えた攻撃の核。 背番号1、寺内寿 3年生GK。驚異的な反射神経と状況判断力で、ゴールを守る“最後の壁”。 背番号4、山崎豊 3年生キャプテン。ディフェンスリーダーとして圧倒的な存在感を放ち、常に冷静に守備陣を統率。 背番号9、新城千秋 2年生FW。驚異的なバランス感覚とテクニックでゴールを量産する天才肌。見た目は華奢だが、ポストプレーにも優れ、1人で試合を動かす力を持つ。
対するは、実力派新興校、船川海洋技術高校。 全国常連の翔陵に対し、気迫で立ち向かう。 背番号6、南部晃慈。 3年生の主将でボランチ。守備でも攻撃でも司令塔として機能する冷静な判断力の持ち主で、チームを内側から支える精神的支柱。 背番号11、保世ユーリ(ほせ・ゆうり) 3年生FW。スピードと勝負強さ、何より“諦めない心”で仲間を鼓舞する熱血漢。劣勢でも走り続け、声を上げ続ける姿は、まさに船川の魂。
試合は序盤から秋田翔陵がボールを支配。精密なパス回しと泉清澄の絶妙なスルーパスで、新城千秋が一気に抜け出す――華麗なトラップから冷静にゴール右隅へシュート。前半だけで翔陵が2点を先行する。 しかし、船川も意地を見せる。南部が中盤でボールを奪い、すかさず保世へロングフィード。FW保世は倒されながらもシュートを打ち、1点を返す。 競技場がどよめいた。
後半も激しい攻防が続くが、試合巧者の秋田翔陵がペースを掌握し、最終スコアは3-1で翔陵の勝利。 だが、敗れた船川の選手たちも最後まで足を止めなかった。 試合後、観客席で立ち上がった主良が呟いた。 「レベル高すぎだろ……なんだよあの10番と9番……。でも、なんか……ワクワクしてきたな。」 夢生は目を細めて言う。 「なあ、いつか……あいつらと本気でやり合える日が来るかな。」 「来させるしかないよ。俺たちの手で」 昴が、はっきりと断言する。 紫乃はその背中を見つめながら、心の中でそっと語りかけた。 (君たちがこの試合を“どう見るか”が、次のステージへの第一歩。今日の差を、笑って超えられる日が来るように――)




