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第41話 超えるべき壁

 月曜の朝。薄明かりの中、玲央と光陽は静かに校門をくぐった。 汗まみれのジャージ姿、手足に巻かれたパワーリストとアンクル、そしてずっと足元で跳ね続けるサッカーボール。 片道10キロ、山道と悪路をドリブルしながらの登校は、前日までの修業の総仕上げのようだった。 「……やっぱ最後の登り坂が一番キツかったな」 「じゃあ、下校も楽しみだな。今度は下り坂だぞ」 「おい、笑ってんじゃねぇよ……!」 その冗談に笑いながらグラウンドに目をやると、仲間たちがいた。 すでに朝練が始まっている。柳沼主良と魚住大輔はステップワーク、有屋夢生、早乙女咲哉、氷見翔弥はフィジカル強化、田浦昴は反復横跳びで脚力強化、神田照真は自主的なドリブルラン。マネージャーの木庭香織が、記録用のメモを手に一人ひとりに目を配っていた。 玲央は静かに目を細める。 「……作って良かったな、このサッカー部」 ふと隣を見ると、光陽も同じように仲間たちの姿を見ていた。 「そうだな。オレ、ここに来て良かったよ」

  月曜日放課後の練習後、紫乃監督が笛を吹いて全員を集める。 「明日の練習はウォーミングアップだけにします。そのあと、全員で視聴覚室へ行きます」 「視聴覚室? なんか授業っぽくて嫌な予感……」 「……秋田県予選の映像を見てもらうわ。準々決勝の4試合分」 部員たちの表情が一変する。 「……つまり、ベスト4が誰か分かるってことか」 紫乃は頷くと、手元の資料を手に説明を続ける。 「まず1校目は、大館冥桜学園。昨年の準優勝校で、以前練習試合をした相手。」 「相羽猛……公式戦が見られるのか」 「2校目は、船川海洋技術高校。“船川旋風”を巻き起こしている、近年急成長中の新鋭校です」 「確か、元プロ選手が監督なんだっけ?」 「3校目は、西目総合高校。昔は全国常連、今は復活を目指してじわじわと強さを取り戻している古豪です」 玲央が、そこでわずかに表情を引き締めた。 「そして最後は……秋田翔陵高校。2年連続で秋田県王者、昨年の全国ベスト8。現時点で秋田最強のチームです」

  視聴覚室の空気が、しん……と静まり返るような感覚。 誰もがその名に、無言のプレッシャーを感じ取っていた。 だが、紫乃はそこに笑みを加える。 「――というわけで、今週末、準決勝を観に行く気はある?」 「えっ、現地で……!?」 「映像と生の空気では、全然違うわ。試合のスピード、強度、声、ベンチの様子、観客の反応……。実際に肌で感じることで、自分たちの立ち位置を再認識できるわよ」 夢生が、ふっと前に出る。 「……行こう。見て、感じて、越えるためにさ。そいつら全部倒さなきゃ、俺たちが“秋田一”になるなんて、夢のまた夢だろ?」 昴も頷く。 「その先に、全国がある。その手前でビビってらんない」 紫乃が満足げに一言。 「よし、決まりね。じゃあ、チームで“本気の観戦”に行きましょう」 その言葉に、部員たちの目が光を宿す。 秋田で一番になるために、そして“全国”を目指すために。 戦いはもう始まっている。

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