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第31話 光の兆し

 前半残り時間はわずか。 スコアは0-4。 黄金台は沈黙しながらも、諦めていなかった。 「香織……あれ、気づいたか?」 タッチライン際で夢生が、ライン際まで出てきていた香織に小声で言う。 「うん……たぶん、あの3番。ラインを上げる時だけ、後ろ見てない」 香織は相手ディフェンスの一人――3番のクセに気づいていた。 ラインコントロールに熱中するあまり、背後に対する警戒が疎かになるタイミングがある。 「それに、GKも最終ラインも高すぎる。裏抜けに弱い。主良(カズ)の動きなら、間に合うかも」

 夢生が手短に言うと、香織がうなずく。 「……監督、1つ、試していいですか」 紫乃に向かって香織が進言する。 紫乃は一瞬だけ考え、笑みを浮かべてうなずいた。 「よし、やってごらんなさい。夢生、あなたもね」 そして迎えた残り1分。 夢生は赤江に短く指示を出し、玲央と主良にもアイコンタクトを送る。 相手ボールをカットした氷見からすぐさま赤江へ。 そのまま赤江は自陣中央からふわりとしたロングボールを放った。  

 「来い、主良(カズ)……!」 タイミングは完璧だった。 オフサイドラインの裏に抜け出した柳沼が、一瞬で反応。 トップスピードでボールを追い、相手DFと競り合う。 飛び出したGKが柳沼の足元を刈った――その瞬間、審判のホイッスルが響く! 「PK!」 香織が立ち上がり、拳を握る。 前半終了間際、思いがけぬ形で黄金台に絶好のチャンスが巡ってきた。 キッカーは――葵玲央。 自分から志願した。

 静まり返るグラウンド。 視線のすべてが玲央に集中する。 光陽は、ただそれを見つめていた。 (あの日と、同じだ……) 入学式の放課後、PK戦対決。 あの日、玲央とのPK勝負、勝負に勝って試合に負けたあの日の記憶が蘇る。 でも今の玲央は、あの時とは違った。 審判の合図とともに、玲央が助走に入る。 一拍置いたフェイント――そして右隅へ。 冷静だった。ゴールネットが揺れた。 「よしっ……!」 1-4。 たった1点。 でも、その1点は、黄金台にとって希望だった。 ホイッスルが鳴り、前半終了。 冥桜3軍に圧倒されながらも、黄金台は確かな爪痕を残して後半戦へ向かう――。

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