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第24話 神田照真―軽くて真っ直ぐな男―

 神田照真(かんだ・てるま)には、深い動機なんてなかった。 小学校でサッカーを始めた理由は「帰宅部だと暇すぎるし、なんかカッコ悪い」 中学でも続けたのは、「サッカーってモテそうじゃん?」それだけだった。 試合で勝てばうれしいし、負ければそりゃ悔しい。でも、引きずるほどでもない。 神田にとってサッカーは、ただ“そこにあったからやるもの”だった。 だからこそ、黄金台高校に入学して部活を探したとき、自然と目が向いたのが「フットサル部」だった。 「サッカーに似てるし、まぁいっか」それが入部理由。 その年のフットサル部は、3年生が6人、2年はゼロ、1年生は神田と――幼なじみの魚住大輔(うおずみ・だいすけ)の2人だけ。 「なんか少なくね?」 「ま、人数少ない方がレギュラー取れるし?」 そんな軽口を叩きながらも、試合になればきちんと走る。 点を取ればテンションが上がるし、失点すれば「クソッ」と舌打ちもする。 神田は真剣じゃないようで、ある意味、誰よりも自然体だった。

だが半年後。 3年生たちは受験勉強のために引退。残ったのは神田と魚住の2人だけ。 部としての存続は不可能となり、「フットサル部」は「フットサル研究会」と名を変えた。 練習相手もろくにいない。部室もなくなったので、校舎内の空き部屋でフットサル雑誌を読み漁る。 だが神田は言った。 「ま、来年新入生が入ってくれば何とかなるっしょ」 焦りも悲壮感もない。ただ、ちょっと退屈そうに笑った。

 そして春。 神田が2年に進級して間もない頃、朝の校内放送が鳴り響いた。 ――「俺たちはサッカー部を作ろうとしています。“誰かの一歩”を、待ってます。サッカー未経験でも、運動が苦手でも、関係ない。本気で、ボールを蹴りたい仲間を探しています。俺たちと、一緒に走ってくれる人。ぜひ、放課後、グラウンドに来てください!」 「……は?」 一瞬、聞き間違いかと思った。 だが、魚住と顔を見合わせると、神田はにやりと笑った。 「サッカー部だってよ。へぇ、そんな奴がいたんだな」 名前は――葵玲央(あおい・れお)。 聞いたこともない一年坊主。 だが神田は面白がった。 「こいつは面白ぇかもな。上手くいけば部員に引きずり込めるし、失敗したら……その時はその時だろ?」 あまり深く考えない。悩んだってしょうがない。 それが神田照真という男だった。 「なぁ魚住、行くぞ。ちょっと冷やかしてくる」 肩にボールバッグを担ぎ、笑いながらグラウンドへと歩き出す。 その背中には、真剣さも気負いもない――ただ、どこまでも飄々とした、“真っ直ぐさ”があった。

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