第19話 2人の新入部員
放課後の校庭に、新たな顔が二人現れる。早乙女咲哉と、柳沼主良。まだユニフォームもなく、体育着姿で現れた二人に、部員たちが自然と集まってくる。 「お、今日の見学者はこの二人か」 軽いノリで話しかけたのは神田照真。 その視線の先にいた早乙女咲哉は、セミロングのサラサラ金髪。明るめの色素に整った顔立ち、スラッとした姿勢。とても仏門育ちには見えない。 「……あれ、そっち系のモデルさん?」 と思わず赤江光陽が首をかしげる。 「おい、坊さんじゃなかったのか……?」 田浦昴が目を丸くする。 「ええ、実家は寺です。でもこの髪は自然にこうなんです。金剛力士像を模したスタイルということで、どうかご容赦を」 と、どこか神妙な表情で咲哉が答える。 「いやいやいや! どこが金剛力士だよ!」 光陽が全力でツッコんだ。 咲哉はまったく悪びれずに一礼する。 「日々の修行の一環として、サッカーに励ませていただければと存じます」 「……キャラ濃すぎて逆にありがてぇな」 と神田が肩をすくめると、玲央がニヤリと笑った。 「じゃあ俺たち、煩悩まみれのサッカー部だけど、精進よろしくな、坊さん!」
もう一人の見学者、柳沼主良はというと、黙ってボールを手に取って壁に向かい、ワントラップからボレー、またトラップ……と鋭い動きを見せていた。 「お、意外とやれるタイプ?」 魚住がつぶやく。 「剣道やってたんで。足で何かするのは初めてですけど、動体視力とか反応速度とか、似てるところもあるんですよ」 と柳沼。 その言葉を聞いた神田がふと笑う。 「そういや、お前、“柳沢”って名前の元日本代表に漢字似てね? しかも“かずよし”って、名前の読みは“三浦カズ”と同じだし」 「えー、じゃあ“柳沢カズ”ってことか!」 光陽が乗っかると、柳沼はちょっと苦笑しながら言った。 「それ、もう中学時代に100回以上いじられました……」 「それでも今日から101回目だな、柳沢カズ!」 と玲央がニッと笑うと、場がドッと和んだ。 すでに練習の空気に溶け込む柳沼と、異世界から来たかのような存在感を放つ早乙女。新たな仲間たちとの一歩目が、ゆっくりと動き出していた。
そして、部活が終わった後—— キャプテンの夢生とマネージャーの香織は、職員室に有屋紫乃を訪ねていた。 「先生、少しお時間よろしいでしょうか?」 「うん。ちょうど終わったところ。何か相談?」 夢生は静かに言う。 「練習試合で、僕たちの課題がたくさん見えました。これからはチームとしての戦術や練習の方向性をもっと具体的に考えていきたいんです」 香織も隣で真剣な表情を浮かべる。 「選手に伝えるための方法も含めて、先生のお力を少しだけお借りできればと思っていて……」 紫乃は二人の表情を見つめ、ゆっくりと口元を緩めた。 「……本気なのね。じゃあ、私も覚悟を決めましょうか。指導者として、あなたたちを全国に導けるように」 「……!」 夢生と香織は顔を見合わせ、静かにうなずいた。




