第11話 サッカーVSフットサル!!
ボールが床を打つ音と、体育館の空調の風が、静かな緊張感を煽る。小型ゴールを使った即席のフットサルコート。観客はいない。だが、空気は確かに熱を帯びていた。
キックオフ。夢生がボールを押し出し、神田に預けた瞬間、試合が始まった。
「行くぜ、1年坊主ども!」
神田は爆発的なスピードで玲央の前を抜き去る。だが、玲央もただ見ているだけではない。懸命に体をぶつけに行く。
「っとと……やるじゃねえか」
「こっちだって、遊びじゃないんで!」
玲央が体勢を崩させた一瞬、ボールがこぼれる。そのボールを昴が回収し、右サイドをドリブルで上がる!
「昴、中央!」
光陽が声を上げるが、昴は敢えてカットイン。魚住が素早く反応し、前に出る。
「冷静だな……でも!」
昴のシュートフェイントに魚住が一瞬バランスを崩す——その隙に鋭いパス!走り込んでいた光陽がダイレクトで合わせて——ゴール!
「っしゃああっ!」
開始早々、玲央たちが先制する。
「なかなかやるじゃねえか……こっからだ」
神田が不敵に笑いながら、すぐにボールをセンターに戻す。
ここから試合は一進一退。
夢生は、決して目立ったプレーはしない。だが、コート全体をよく見て、空いたスペースに素早くポジションを取り、冷静にパスを通す。まるで司令塔のようなその動きに、玲央は驚きを隠せなかった。
「夢生……こんな動き、どこで……」
「見てたんだ。ずっと、母さんの……昔の試合、雑誌、ネットの記事。頭の中でシミュレーションしてたんだよ」
夢生のパスが神田へ。そして、神田のシュート体勢——がら空きのゴール右隅に、迷いのない一撃!
1対1。試合は振り出しに戻った。
「へへ……そろそろ本気出してくるぞ?」
その神田の声に、玲央たち3人も自然と肩を並べてポジションに戻る。
「面白くなってきたな、玲央」
「負ける気はないけどな、光陽」
「あと一本、前半で決めよう」
再びボールが動き出す。玲央たちのパスワークが冴える。光陽が囮になり、昴が抜け出す。その先に玲央のスルーパスが通る!
「いけ、昴っ!」
昴が放ったミドルレンジのシュート——だが、わずかにポストをかすめてアウト。
そのまま前半終了の合図が鳴る。
スコアは1対1。同点のまま、勝負は後半へ——。