第10話 2人の上級生現る
昼休み終わりのチャイムが鳴った頃、校内がざわついた。昼の校内放送で響いた、葵玲央の熱のこもった呼びかけが、想像以上に生徒たちの興味を引いたのだ。
「俺たちは今、サッカー部を立ち上げようとしている。けど、まだ部員が足りない。サッカーを、本気でやってみたい奴。迷ってるなら、それでもいい。一緒に、サッカーしようぜ!」
その声に突き動かされるように、午後の授業が終わった直後、玲央たちの練習場所に二人の上級生が現れた。
一人は身長が高く、鋭い目をしていて、どこか捉えどころのない笑みを浮かべていた。もう一人は眼鏡をかけた整った顔立ちで、どこか品のある立ち姿。制服の着こなしも隙がない。
「よう、新入生。お前ら、昼に校内放送してた奴らだろ?」
鋭くも飄々とした第一声を発したのは、神田照真。続いて隣の男が小さく頷く。
「俺たち、フットサル研究会の者だ。あんたらがサッカー部を作ろうとしてるって聞いて、話を聞きに来た」
「え?フットサル研究会……?」
玲央が目を丸くすると、神田はニヤリと笑って言った。
「まあ、研究って言っても遊びみたいなもんだけどな。けど、お前らがサッカー部作るってんなら、うちの活動に支障が出る可能性もあるし、なにより——ちょっと面白そうだったから来てやったよ」
「それで……話って?」
「単刀直入に言うぞ。勝負しようぜ。三対三のフットサル勝負だ。そっちが勝てば、俺たち2人、サッカー部に入ってやる。けど、こっちが勝ったら——お前ら4人、フットサル研究会に来い」
玲央は一瞬だけ唖然としたが、すぐに目を輝かせて言った。
「上等だよ、その勝負、受けて立つ!」
神田が指定した対決場所は、放課後の体育館、第二アリーナ。
夢生はちょっと遅れて行くと言ったので、玲央たち3人は先にそこで待っていた。校内放送の呼びかけに反応したという、二人の2年生——神田照真と魚住大輔。そしてその傍らには、思わぬ顔が立っていた。
「……夢生?」
玲央が驚いたように声をかけると、有屋夢生は少しだけ困ったように笑って頷いた。
「うん。神田先輩たちが誘ってくれてね。話を聞いてたら……ちょっと、君たちと戦ってみたくなったんだ」
田浦昴が目を細めた。「裏切り者か?」
「違うよ。ただ、こっち側から見えるものもあるかなって思って」
神田が大げさに肩をすくめて言った。
「オマエらの“サッカー部”を試すには、ちょうどいい人材がいるだろ? 顧問の息子ってやつがな」
そして6人が体育館中央に集まる。
「もう一度言うぞ。ま、試合形式はシンプルだ。3対3。俺たちが勝ったら、玲央たち3人はフットサル研究会に来てもらう」
「逆に、俺たちが勝ったら——神田先輩と魚住先輩はサッカー部に来てください」
玲央の言葉に、神田はニッと笑って右手を差し出した。
「ヘッ、上等だぜ!」
こうして、3対3のフットサル対決が始まる。