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第9話 届け、声!

 部員数、4人。 試合はできないが、確実にサッカー部は“部”としての輪郭を得始めていた。 玲央と光陽は前線の動きや連携を探り、昴はディフェンスの基礎を繰り返す。夢生はその様子をじっと観察しながら、時折「そこはもう少し幅を取って」「一度後ろに戻してスペースを作ってみて」と、的確に声をかける。 光陽:「マジでサッカー未経験か?戦術とかポジショニングのセンス、ありすぎじゃね?」 夢生:「…多分、母の影響かも。」 玲央は思う。 サッカーは、才能や経験ももちろん大事だけど、一番は「心から好きかどうか」だ。夢生は確かに、まだ不器用だし、プレーもおぼつかない。でも彼の言葉には確かな“サッカーへの愛”があった。

放課後、職員室の窓からグラウンドを見下ろす紫乃。 4人での練習風景に、彼女の心も静かに波立っていた。 (夢生……あなた、本気でやるつもりなのね) 母親としての気持ちと、かつて選手だった自分の影が交錯する。 自分は夢の途中でピッチを降りた。それを知る由もない息子が、今サッカーに惹かれている。この先、傷つくかもしれない。でも、きっとそれでも―― 「あなたの選んだ道を、見届けるわ」 小さく呟いた紫乃の瞳に、かすかな光が宿っていた。

だが、現実問題として部員はまだ足りない。 玲央:「俺たち、あと3人。最低でも3人……!」 焦りとともに浮かぶのは「どうしたら、みんなに届けられるだろう」という思いだった。 その日の帰り、玲央は昴に言う。 「校内放送、使えないかな?」 「は?朝のHRで流れてる、あの放送?」 「うん。“自分の声で、想いを伝える”。俺、それやってみたい」

翌朝、放送室。 生徒会に事情を話し、放課後の部活動勧誘時間に特別許可を得た玲央は、マイクの前に立つ。 (緊張してる場合じゃねえ。俺の声で、誰かの心を動かせたら……!) 「おはようございます!一年A組の葵玲央です。突然ですが、みんなに伝えたいことがあります。俺たちは今、サッカー部を立ち上げようとしています。でも、まだ部員が4人しかいません。だけど、サッカーがしたい。全力で夢を追いかけたい。だから――」 一呼吸、入れて。 「“誰かの一歩”を、待ってます。サッカー未経験でも、運動が苦手でも、関係ない。本気で、ボールを蹴りたい仲間を探しています。俺たちと、一緒に走ってくれる人。ぜひ、放課後、グラウンドに来てください!」


放課後。 4人は、グラウンドの白線の上に立っていた。 果たして、誰かが来るのか――不安が胸をよぎる。 光陽:「来なかったら……ちょっとヘコむな」 玲央:「でも、俺は信じてる。誰か、絶対に届いてるって」 そして、その時。 足音が、聞こえた。 昴:「……来たぞ」 制服のまま、ボールも持たずに、校舎の向こうから2人の影がこちらに向かって歩いてくる。 玲央の心が熱くなる。 (やっと……一歩、進んだ)

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