町から監獄へ
サイとベルのデートはまだ続いていた。昼過ぎになってしまったが、昼食を抜くのは身体に良くないとサイが騒いだ。食に対しては非常に貪欲である。
ベルは路地を抜けた所にある適当なレストランを見つけるとそこに入っていく、外見から木造の建物と分かったが中には大きな石窯があり、そこに何かを入れて焼いているようだ。
2人は適当な席に座る。
「ここではあの大きな石窯でピザを焼いているのよ」
「ぴざ?」
「ピザもしらないのね、まぁ百聞は一見に如かずよ、食べてみるといいわ」
ウェイターがベルに注文を聞きに来る、ベルはこの店で一番のオススメのピザを2人分とウェイターに告げた。
石窯でピザを焼いて作るのには少しだけ時間がかる、待っている間にベルはサイに疑問に思っていることを聞いた。
「最近あなた随分と落ち着いてるわね……復讐をするから急ぐかと思ったんだけど」
「急いでも復讐は失敗することに気がついたんだ、刀を使って戦って、焼けた左腕を使って熊を殺して、自分はまだまだ弱いことを知って、挙句の果てにこんな姿になってしまった。このまま王国騎士を相手になんかはできないよ」
サイは人並みではあるが意外とまともに考えている。魔術師を目の前にした時の激昂は正に復讐に取り憑かれた者だったが、それが今は落ち着いて考えてこの先どうするかを決めようとしている。
ベルはそんな彼を不思議に思う、普通なら人間は復讐に取り憑かれたら、なかなかその感情を抑えることはできない、敵がいなくとも邪魔や無駄は排除すべき対象とするはずが、サイは冷静すぎるのだ。元はかなり優しい性格の持ち主だったのだろうとベルは悟った。
その悟り通りサイは心優しく真面目な少年だ、両親を気遣い妹を大切にしてきた。
その優しさの顔の一枚下に非情があったことも事実ではあるが。
「私ならもう突っ走ってるわね」
「え?」
「なんでもないわ」
サイの気持ちを自分に照らし合わせて思考が口に出てしまう。やはり失ったり奪われるのは辛い。
ベルも過去に母親を外道の者の手によって失っている、その時のことを今でも思い出すと悲しみと怒りが湧き上がってくる。復讐は良くない、それを知りながらもサイの気持ちが痛いほど分かる。かつてこれほどの葛藤を抱えたことなどベルは経験したことがなかった。
領主としての誇りか、騎士としての通りか、それとも自分の気持ちか、天秤にかけるには、どれも重すぎる。
思い悩み思考を廻しているとウェイターが来て注文のピザをテーブルの上に置いた。
「おぉー美味しいそぉー!」
「女の子なんだから、おしとやかに食べなさいよ」
「分かってるよ」
ピザを切りもせずに雑にフォークで切り取り口に運んでいくサイ、ダメだこれは「おしとやか」の意味すら分かっていない。裕福すぎて世間知らずという言葉は良く聞くが、サイの場合は貧困すぎて世間知らずだ。
せっかくサイに釘付けだった男達の視線が今はドン引きとよくわからない畏怖を込めた視線になっている。
「待ってサイ、ナイフでチーズみたいに切ってから手で食べるのよ、こうやって」
「めんどくさい」
「もう好きにしてちょうだい」
食べ物を食べている時ばかりは幸せいっぱいというのがハッキリとわかる。
ピザを食べている途中でサイはベルに質問をした。
「どうして僕を女の子として扱った? 疑いがあるなら真っ先に問いただすだろ」
「そうねぇ、私はあなたに柔肌を見られたじゃない?」
ベルが言っていることは着替えの時のことだ、サイの記憶にはまだ新しい。
己が身体に溜まった排泄物をぶちまける場所を探していた時に、誤ってベルの部屋のドアを開けてしまい結果彼女の着替えを覗くことになってしまった。
「あの時のことを根に持っていたわけじゃないけど、仕返しをしようと思ったのよ」
「いや、それ根に持ってるじゃん」
「騎士道精神を考えるなら私も裸を覗く権利があると思ったのよ、ちゃんと裸で。だからお風呂場でじっくり堪能しようとしたのに、あなたときたら私の秘密を」
「真面目にふざけるのはどうかと思うよ、それにあんな本を持ってる人がわるいんじゃないか」
「柔肌という女体をみられたなら、女体を見返してやらないと気がすまなかったのよ」
「僕がその時女で本当に良かったねぇ」
「ちなみに男だったら、ギルバートを突撃させてたわ、彼は女に興味がないらしいの」
「それはそれでまた別の問題だよ! ベルが来てもギルバートが来ても貞操の危機じゃないか!」
ピザを食べながらもボケとツッコミがふたりの間を飛び交い。やや騒がしくも食事を終える。店の外へ出るとサイはもうデートしている意味はない屋敷に戻って男に戻る方法を探したいと言ったがベルにあっさり拒否された。
「もうすこしアリスのままでいなさい」
「なんでだよ、もう気は済んだろ」
ふてくされながらサイは肩を落とす、本当に戻れなかったら復讐がどうのこうのも言えない。今のところ諦めるような選択肢はサイの中にはない。
早くこの町を飛び出してメシアを文字通り両親や村の人々、なによりもユリアに対してやったように「八つ焼き」にしてやりたいのだ。
「あいつら……」
落胆して足元の地面に視線を落としていたが、ベルが「あいつら」と一言放った時に視線を上げると数十人の赤いローブを身にまとった者たちがこちらに歩いてきた。
「あなたがアリスで本当に良かったわ」
「え?」
ベルは赤いローブの集団に向かって大きな声を挙げた。
「聞け! 既に憑者はこの町を去った! 町の南門を抜けて街道を進み、別の町へ向かった!」
赤いローブの集団の中からひとりの高身長な人物が集団をぬけてベルの前まで歩み寄る。ベルと頭ふたつ分位は身長の差がある。
ローブのフードを取るとその大きな身長からは想像できない、女性だとはっきりわかる顔つきでベルを睨んだ。
長い髪をダンゴのように纏めた黒髪は黒というより闇色のような不気味さが感じられる。異様なほど白い裸がそれを際立たせる。
「そちらの方はぁ〜?」
「アリスよ、私のメイド……要件はなにかしらファントム•カルデリア」
「その呼び方は好きじゃないなぁ〜、ベルぅ〜。わかってると思うけどぉ〜憑者を庇うと町の住民ごとぉ〜」
「そんなことをしてみなさい、例えこの国の異端審問会が相手でも容赦しないわ」
お互いを知らない仲ではないようだが、話の内容を聞く限りでは物騒なことになるサイは察した。異端審問会がどういった組織なのかと言えば簡単だ。
国の反逆者や罪人を処罰する組織だ。治安の維持を考えた組織は他に警察がある。
警察があるにも関わらずこういった組織が存在しているのは、この国独自の物だろう。大国を統治するために王に歯向かう不穏分子は早急にその芽を潰しておけば、王の地位は揺るがない。しかしこの組織は神出鬼没で、情報網がどこまで及ぶのか、何人で構成されているのか、移動手段までのほとんどが謎である。
「まぁとりあえずこの町の憑者探しをするからさぁ〜、ほらぁみんな探してぇ〜」
「言わなかったかしらファントム、私は憑者は出て行ったと」
「国からの命令だから手ぶらでは帰れないんだよぉ〜、えぇと〜探すだけだからさぁ〜迷惑はかけないよぉ〜」
国の命令で手ぶらでは帰れない、つまり国はこの町に憑者がいることを知っている前提で命令を下していたと考えていい。
ベルはサイの手を引いて屋敷に向かおうとするとファントムと呼ばれた女性は急に叫び声にも似たような笑い声をあげた。その声は聞き覚えがあった。
叫び声の一部だけに集中すれば、ふたりだけには、聞き覚えのある声だった。
メデューサの叫び声だ。だが身体はなんともない、石になったりはしていない。いったいなぜそんな奇妙な声を出すのかわからない。
「あーいけないぃー悪いくせがぁー」
悪い癖、そんな癖があるような人間がいるのかどうかは分からないがベルはサイの手を引いて屋敷に向かった。
大通りを抜けて螺旋状の坂道を登る、ベルの顔には焦りの表情が浮かんでいる。サイはその顔からはなにも察せずにいた。
屋敷の中に戻り玄関のドアを開けるとギルバートが出迎えた「おかえりなさいませ」と一礼をするのも遮りベルは早足で自室に向かった。
「ベル様はどうなされたのでしょう?」
「さぁ? デートしてる途中にファントムとかいう奴に会った後、いきなりあんな感じになった」
ファントムの名を出すとギルバートは急ぎ足でベルの自室に向かった、サイはいったい何がはじまるのか分からないままあくびをして屋敷の中の花の香りを吸い込んだ。
玄関から自分の部屋に戻ろうとするとベルがサイの弓矢と刀を渡してきた。
ベルは持てるだけの所持品を手にしてサイに新しい靴を渡す。
「新しいの……どうして」
「今のはもうボロボロでしょう、すぐに履き替えて町を出るわよ」
「え、まだ男に戻れて……」
「男に戻るよりも先にすることがあるわ! ギルバート、あなたは出来るだけ奴らを足止めしてちょうだい」
「かしこまりました、どうかご無事で」
「サイ、屋敷を出たら全速力で街の外まで走るわよ、今のうちに足りない物があったらいいなさい」
何がなんだか分からない、せめて事情を説明してくれないとサイは急かされている意味を理解できない。
「なにがどうしたんだよ」
「説明してる暇すらないの!」
「着替えてくるから待っててよ」
「はやくなさい!」
サイは自分の部屋に駆けて入り、クローゼットから服を取り出す、昨日ギルバートに頼んでおいた仕立て直された服が入っていたので、早めに着替える。
窓から見える町の方に視線をふと移す。サイは言葉を失った。
町にあるいくつもの民家から炎があがっていた、まるで自分の村リスティーヌが焼かれた光景とそっくりだった。
民家を焼いているのはファントムが連れてきていた者たちだ。
「なんてことを、ベルに知らせないと!」
サイは急いで玄関にいるベルの元へ向かう。連中を止めなくてはならない、また自分の村のように罪もない人々が殺されていくような事態は絶対に阻止しなくてはならないという思いを胸に走る。
◇ ◇ ◇
どこか遠くの神殿で男は身体を休めていた、男の周りには沢山の王国騎士がいて、男と同じく各々の方法で身体を休めている。柱を背にして座り、床に寝転んだり、たったまま目を瞑る者までいる。
その中に誰が見ても明らかに周りの騎士達とは違う貫禄のある男がいた、男の目の前には黒ずくめのローブを着て杖を持っている人物がいる。魔術師だ。
「なるほど異端審問会か、こういう時は役に立つものだな」
「ええ「あの者」が生きていると知った時は肝を冷やしましたがね、これからどうするおつもりで?」
「もちろん「あの者」の始末が終わった報告を聞いた後、この国を建て直すつもりだそのためにも王家の血筋の奴らには死んでもらう」
その言葉を男から聞いた黒ずくめの魔術師は高らかに笑う。
「さすがメシア様だ、この国を建て直すか、できるといいですねぇ」
「ああ絶対にできるとも力ある者の元、このロンギヌス帝国は成り立つ、今の平和ボケした王家と私腹を肥やす貴族達ではどうにもなるまい、いずれは世界すらも我が手に」
そしてメシアは立ち上がると神殿の外の馬にまたがると走り出した、それに続いて他の王国騎士達も馬で走り出す。魔術師だけただひとり神殿内に残る。
「せいぜい気張れよメシア、お前の力もまた……ククッ」
奇妙な笑いを残し神殿内の暗闇へと消えていく。
◇ ◇ ◇
玄関にサイは走って戻ってくると、ベルと町を燃やしていたはずのファントムが向き合っていた。サイはどういう状況なのか理解できずにいたが、町のことを伝えるとベルが剣を抜いた。
「あなたのことだからやると思っていたわ、ギルバートが既に奴らの足止めをしているけど……なぜあなたがここに? 場合によっては斬り捨てるわ」
ファントムは笑ったケタケタと、しばらく笑い続けそれが終わると答えた。
「あーあれはぁー陽動だよぉー、ベルとギルバート相手にしてぇー、勝てるわけないじゃーん」
ファントムは再び笑う、ただベルと1対1の戦いにするためだけに部下に町を襲わせてギルバートを遠ざけたのだ。今頃ギルバートも町の異変に気付きそこへ向かっているだろう。
「あら1対1だと思うのね、ここにもうひとりいるのに」
「え?」
ベルがサイを見る、確かにサイはなにもできないわけではないが、男であったころに比べると腕力がない分、刀と弓矢はまともに扱えず不慣れな魔法しか使えない。戦力としては頼りない。
「確かに1対1じゃないねぇー、でもねぇー戦力になるのぉー? 鎖よ巻きつけぇー!」
不意の攻撃だった、ローブの中から鎖を操り一瞬でサイを捕らえる。魔法の詠唱に必要なスカーレットナイトを出す暇も無く無力化されてしまう。
「え、ちょ……なんだよこれ!」
「バカ! ぼさっとしてるからよ!」
ベルは伸びている鎖を剣で切ろうとするが、見えない壁が鎖に剣を寄せ付けなかった。
「雷属性のバリア……私の剣なら通るはずなのに」
「その剣が切れる魔法はぁーふたつの属性までぇー3個は無理なの知ってるんだぁー」
ベルの剣の意外な弱点だ、魔術師の時は火属性のみだったが、今回は雷属性と何かの属性が鎖を操り更にもうひとつの属性があるようだ。サイは鎖を解こうともがくが、その動きを見たファントムが雷を鎖に送った。
「ぐっ! あぁあぁああっ」
「アリスを離しなさい! ファントム!」
「嫌だねぇー、それじゃそろそろみんなー入ってきてぇー」
屋敷の窓や玄関からファントムの手下の赤いローブを着たやつらが入ってくる。
「1対1なんて最初から狙ってないんだよねぇー」
「ファントム……あなた卑怯よ!」
「かかれぇー!」
ベルに対して湾曲した短いダガーを持った赤いローブを着た奴らが襲いかかる、ひとりひとりの一閃をベルはかわして剣で反撃する、遠くにいる敵に対しては氷属性の魔術で刃を作り飛ばす。
的確に対応して敵を倒していっているが、数が多すぎる。スタミナ切れを起こしたら最後だ。
「ほどけろよ、このっ!」
「暴れないでねぇー」
「ぐあっ! あっくっ!」
サイも加勢しようとするが、鎖を解こうとするとファントムが雷を送ってくる、痺れてマトモに動けたものじゃない。
ベルは敵の返り血で自身を赤く染めていく、どこかを攻撃されて血が出てもこれじゃ分からない。これが殺し合いの正しい姿。サイはその光景をもがきながらもしっかりと見ていた。そしてその表情は怒りに満ちていく。
卑怯な方法でベルをひとりにして、よってたかって殺そうとしている、目的は違う物にあるのに。
「そうだ、あの時……僕は怒ってたんだ」
サイは熊を倒した時に出した炎の使い方を思い出していた、ひとつ明確な要因としてあるのが怒りだ。
「許さない……許さない!」
サイの左腕が激しく燃えあがり鎖を溶かした、ファントムは呆気に取られたがサイの炎は勢いを更に増して、サイの全身を包んだ。
「うがぁあああっ!」
しかし意外にも早く炎は収まる、燃えているのは左腕だけ。そしてサイの姿は男の姿に戻っていた。
「はぁ、はぁ、戻ったぞ……これが女体化からの戻り方だ」
左半身の火傷の跡は焼けたまま、豊満な胸もただの胸筋へと変わり、髪も短く落ち着いた雰囲気に戻った。
「こいつが憑者だぁー! 捕まえろぉー!」
ファントムの叫びでベルと戦っていた手下たちが、全員サイに向かっていく。それを阻止しようとベルは動いたが、既に遅かった。
体力を消耗したベルは手下の敵ひとりを相手にするのが手一杯だった。
サイも抵抗したが、どういうわけか左腕の炎は完全に消えて地面に伏せるようにして取り押さえられていた。
鎖で再び巻かれて、ファントムに抱えられて屋敷の外へ連れだされる。そこでサイの意識は途絶えた。
ベルは足止めをしてくる手下を倒し、屋敷を出たがサイの姿はもうなかった。屋敷の周りを一周したが、痕跡ひとつ残っていない。
まるで風にでもなって消えたかのように跡形もなく、サイはいなくなってしまった。
「なんてこと……この私がついていながら……」
ベルが屋敷の外で膝を落としているとギルバートが戻ってきた、ギルバートはベルと共に屋敷の中へ戻ろうとベルの肩に優しく手を置いたが振り払われた。
「すぐに奴らを追うわ」
「ですが、今は……」
「屋敷と町のことをお願いするわね、ギルバート」
「ベル様……」
「わかったかしら?」
「かしこまりました」
ベルは最低限必要な物を揃えサイを探すために町を出た。たかが、自分のために助けた狩人だ、もう用は済んだのだから見捨てても問題ないだろう、などとはベルは決して考えなかった。
自分に父親の仇を討つ機会を与えてくれ、村長達に責められた時に助けてくれたサイ。だが、ベルはそんな彼になにも返せていない。
これで終わりだなんてことは、ベルの心が許さなかった。
「必ずあなたを見つけるわ、サイ」
◇ ◇ ◇
意識が戻ると自分の身体が濡れていることに気がつく、手足を縛られてる、この音は馬の足音……馬車の後ろに乗せられているようだ。
目を開けたはいいが真っ暗だ、これは目隠しのせいか。どこに向かっているんだ?
「おきたぁーよね」
目隠しをとられる。
「お前、なんなんだよ」
馬車の荷台の壁に背中をくっつけて倒れてる自分を見ているのはファントムだ。自分は今敵に囚われたということにここでようやく気がつく。
身体は男に戻ったままだ、もし自由なら充分抵抗が出来ただろうが身体にはファントムの鎖が伸びて巻きついている。ベルもいない。
なんとかして逃げたさないと、でもどうやって。
「君の処分はぁー処刑ぃー」
独特の喋り方がいちいち鼻につく、とりあえずまだ殺されたりはしないようだ。今はおとなしくしているしかない、隙を見て逃げ出してやる。
こいつらがいったい何人で、どこへ向かっているのか情報が欲しい所だ。今荷台にいるのはファントムと自分だけ……こいつから何か聞き出せないか。何故だ自分は今明らかに危機的状況なのに頭が妙に冷静で冴える。
「なぁあんた、なんで亡霊なんて名乗ってるんだ?」
「本名は昔捨てた、それだけぇー」
本名を捨てる? 意味がわからない。もっと別のことを聞こう。
「どこに向かってるんだ?」
「遠い所ぉー」
ダメだまるで話にならない、なんでこんな子供みたいな話かたをするんだ、見た目はベルと同じくらいだ。そうなると自分とも歳は近い。
遠い所か。
「遠い所って?」
「王都ぉ」
僕を捕らえて揺れる馬車は昼夜問わず動き続けた。
「もうひと眠りしてなよぉー」
その言葉を最後にまた意識が遠くなる。