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閑話 商人、巡りあう

領地開発あたりがいろいろすっ飛ばしてたので書いてみた。

話の順番を入れ替えるかもしれません。

 わたしの名はシャイロック。このたび准男爵に叙爵されたエレス卿の配下に加わった。

 もとは王都でそれなりの商館を持っていたのだが、私の商売のやり方が王都のギルドの皆様にはお気に召さなかったようだ。いつの間にか冤罪を着せられ王都追放の憂き目にあったのである。だがそれを恨みはするまい。商人の命は情報だ。私は情報戦で彼らに敗れた。それだけである。ただし一度の負けで尻尾を巻くほど私のプライドは安くはなかったようだ。手元に残ったなけなしの資金を使って、今最も注目を集めている人物、エレス・フォン・ラーハルトを調べた。

 騎士学校を優秀な成績で卒業。機転が利き、部隊指揮官としても優秀。剣の腕も立ち、上位魔獣討伐の実績あり。そして領主としては未知数。自由戦士だったこともあり、統治のノウハウやコネはないものと思われる。

 最後の資金を使ってエレス卿に面会できるようこぎつけた・・・結果として出費はなかった。賄賂とかそういうことも考えていたのだが、簡単な身分の照会のみで面会の予約が取れてしまったのである。やや拍子抜けしながら現地で雇用したらしいサムスという執事の後について行く。


「当家の後ろ盾を必要としておりますかな?」

唐突に声をかけられる。まあ、これくらいは想定内だ。

「ええ、仰るとおりです。ただし王都に戻ることは望んでおりません」

「ほほう?ではどのようなご希望が?」

「今や私は文無しです。ですが商売のノウハウは持っている。地方でのコネもあります。それを腐らせるにはもったいないと思いませぬか?」

「貴方が王都でやっていたことですか。中央と地方、ともに利益を出そうという」

「左様です。中央が富を吸い上げる今のやり方では長く続かない。私は永続的に利益を上げたいのです」

「故に地方に投資をしていた。そして中央の商人が来て買い叩かれないように現地の人々に情報を与えた。そしてより儲かる商品お提案を行った」

「・・・よくご存知ですな」

「私は執事です。主のために情報を集めねばなりません」

「お見事な手腕です。貴方のような方がいれば、私の商売はもっとうまく行っていたのかもしれませんな」

「ふふ、光栄です。しかしながら、まずは我が主に会っていただきましょう。大丈夫、貴方の夢はこれからです」

「それは一体?」

 サムス執事は柔らかい笑みを残し、ドアをノックした。我が生涯最大の邂逅は目前に迫っていたのである。


 面会は終わった。想像以上というか斜め上の結果だった。つーか、初対面の商人をいきなり家臣にするところまではいいだろう。こっちもそれを要求したし、それがかなって文句をいう筋合いでもない。だがいきなり騎士に叙任とかどうなのだろう?自慢ではないが私に武術の才能はない。剣を振ったら次の日には筋肉痛で動けなくなるであろうことは自覚している。どうもここはこの国のどこの貴族家とも毛色が違うのかもしれない。王都の貴族とも付き合いはあったが、こちらから最大限の利益を搾り取ることしか頭になかった。地方ではそれなりにまともな貴族もいる。が、そことも何かが違うのだ。期待に胸が躍るなどいつ以来であろうか。


 さて、王都に残されたコネを総動員してひとまずの体裁を整えた。家族と使用人たちをまとめてトゥールーズに向かう。支度金をいただいた分はそれ以上の収益を上げねば私のいる意味が無い。いろいろと思案しながら馬車を走らせた。

 流石にいろいろと意表を突かれた。目の前には立派な商館が建っていた。士官がかなった日から一週間足らずだ。普通、こんな大きさの商館が建つ日にちではない。出迎えてくださった主君に事情を聞くと、平然とした顔で「魔法で建てた」と申された。開いた口がふさがらなかった。

 トゥール村の北にある河川。王都からの物流もこれに頼っている。いつの間にかかなり大きな桟橋と倉庫に使えそうな建物が建てられていた。いただいた商館からの道も今整備中と聞いたので、その現場を見せていただいた。

 魔法兵が10名ほど横並びで整列している。しゃがんで手のひらを地面に付けて一斉に呪文を唱える。土がむき出しだった地面が石畳で覆われてゆく。なんてでたらめな。道のそばで、別の兵が呪文を唱えるとにょきにょきと地面から土が盛り上がり壁ができた。そして別の呪文で屋根ができてゆく。数人の兵だけで1時間もたたずに小屋ができていた。旅人が休息を取れるように作っているという。雨をしのげるだけでも旅の安全は向上する。街道整備は物流の要と言っていい。それを理解してこのような政策をとっていてくださるならばと期待が膨らむ。

 それと、なんというか、土木工事という概念をいろいろとぶち壊してくれた。工期もコストも段違いに少ない。これは想定外だが良い材料が手に入った。思わず浮かんでくる笑みを私は隠しきれなかった。

エレス卿はやはり変わり者だ。いきなり新参の家臣に資金をありったけ任せるか?


次回 商人、駆け巡る

本編に戻るのはいつだ?!

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