天を轟かす雷鳴
firpsideいいですね。
俺は兵を進めカイルたちと合流した。カイルを始めとして、アーサー卿、ベシェール、ランヌなどカイル軍を支えてくれている将たちを再開を果たす。そんな最中、俺がまっさきにねぎらったのは後方支援を担うモートン卿だった。そしてカイル軍の面々はそのことを当然として、笑顔すら浮かべている。モートン卿は指揮官としては水準を下回るかもしれないが、軍政官としては抜きん出た手腕をもっていた。そして俺の軍が進軍してくるのに合わせ、物資集積を行ってくれていた。そのため合流を急ぐことができたし、敵の中入れ部隊を撃破出来たのである。あの状況で後方を遮断されると、カイル軍が危機に陥っていた可能性があった。まあ、いろいろと評価すべき点が多く、そのことを伝えると、直立不動のまま顔を紅潮させて俺の言葉を受けている。
さて、セヴァストポリはなかなかに厄介な要塞だった。まあ、要塞って言われてる時点で厄介なのは間違いない。街道を扼す位置の小高い丘をまるごと城塞化しており、さらに大小の出城が攻撃力を分散させるように設置させていた。なにより、魔導技術の粋を集めた魔導砲グングニルの存在である。巨大な魔法矢を打ち込み軍を壊滅させたり、曲射で小さな矢を雨あられと振らせたり、遠距離、近距離の射程の死角が無い。なんとも厄介である。
「要塞攻略の要はあのグングニルの攻略にある。なにか上手い手はないか?」
俺の発議に幕僚たちが応える。
「アイギスで防御するとして、どの程度まで耐えられるか?」
「最大出力でも一回耐えればってところだと思われます。
「一気に距離を詰めるにしても副砲からの弾幕で強襲の成功はおぼつきませんな」
「迂回して後方から攻撃をしかけるとか?」
「兵糧攻めは・・・効果が薄いですな」
「あの出城をいくつか落として少しづつ防御を削るのはいかがか」
「付城を築くにしても時間がかかりますな」
議論は堂々巡りで、一気に攻略するすべはないように思われた。そのうえで、敵に増援が来た時に引きずり出して野戦で決着をという意見がある意味一番建設的なように思われたが、南方戦線に影響が出る可能性、および後方の教皇領の蠢動などのリスクを考えると、ここで長々と包囲をするという選択肢はない。
かといって抑えの兵を残して進軍するとなると、まず兵站に問題が出る。現地調達は論外で、そもそも後方をいつ遮断されるかわからない状況で士気が持つわけがない。凹なれば異郷の地で軍は溶けるように消えるだろう。まるで春先のなごり雪のごとくだ。
「ふむ、こんな事もあろうかと、切り札がある」
義兄上の一言に陣がざわめく。手をすっと掲げると、エルフの族長アルバート卿とドワーフの族グスタフ殿が前に出た。
「先日陛下より雷撃魔法の原理を教わりましての、落雷のあった後に落ちていた石が鉄を引き寄せるチカラがあることはご存知か?」
「雷を浴びた石というか、鉄を河原の砂に突っ込むと鉄が取れるのだ。細かい砂状のものがな」
「目に見えぬ力を帯びている、このようにな」
手に持った鉄の棒をかざすと釘や鋲がその鉄に引き寄せられていた。その様子を見てもピンときているものはまだいない。まあ、俺も初めて聞いた時は疑問符が頭のなかを駆け巡ったものだ。
「雷を付与した鉄の剣で、その力を操るとこうなる。この力は片方で引き寄せ、片方では突き放す性質を持つ」
2本の剣に雷のを付与し、片手の剣振るうと釘が引き寄せられ、空中に浮かび、もう片方の剣を振るうといきなり加速して的に突き立った。
「この力をもっと大きくして、要するに込める魔力を増やして、もっと重いものを飛ばすとどうなるか?」
そこである程度の想像がされたのであろう、同時に青ざめるものも出ていた。
「ところで、矢よけの魔法の原理はご存知か?」
唐突な質問に、疑問符を浮かべる。
「目には見えぬが、風のもととなるものが我らの周囲を満たしておる。まあ、空気と呼ぶとしようか」
「その空気は矢羽などに力を加え軌道を安定させ、向かい風となって矢を吹き戻す。同じく、横風で矢を逸らす」
「であれば、この空気がなければ、矢は凄まじく遠くまで跳ぶ。勢いもそのままだ」
「そこでシルフィード殿の力を借りる。風を操れるなら、空気を操れるということ」
「空気のがないということは全く勢いが落ちない。そこに先ほどの力で加速させた鉄球を打ち込む」
「勢いが落ちないなら、ここから放ってもグングニルを狙撃しうる」
あまりのことに皆ポカーンとしている。俺の思いつきを理論化し、一つの技術として体系化するその知恵になんというかいっそ恐ろしくすらある。
「ま、あれだ。論より証拠だ。まず打ち込んでみよう」
あっけらかんとした俺の言葉に皆唖然としたまま頷くのであった。
長大な鉄の棒、5メートルほどのものが2本隣り合わせに置かれる。だいたい方向を合わせ、棒の間に鉄球を置く。俺はシルフィードに呼びかけ、真空の軌跡を棒の先端から直線でグングニルの下部に合わせて展開した。ミリアムとトモノリが雷の魔法を制御し、2本の棒に付与してゆく。そしてその状態をアルバート卿が制御する。
「いきます!」
その一声のあと鉄球が僅かに浮き上がり、チュンっ!という音ともに消失した。そして遠方で土煙が上がる。どうやら命中したようだ。上がった土煙に僅かに遅れて爆発音が響いてくる。
「第二射行きます」
「おお、少し待て、弾丸に炎を付与してみよう」
「え、いやその。ここにさらに術式を重ねるとか・・・?」
「まあ、多少的を外してもなんとかならんかね?」
「承知しました、お願いします」
「おっけい、焦熱の光輝ける御手よ・・・フレイムエンチャント」
「撃ちます!」
同じように僅かな音を残して赤熱した鉄球が消失する。一瞬遅れて周囲が真っ赤に染まるほどの炎が上がり、すさまじい爆風がこちらまで届いた。
「えーと・・・やり過ぎた?」
「陛下・・・あれは流石に・・・」
なんか周りの連中の俺を見る目が痛い。うん、ちょっとグングニルのあったあたりがすっぽりとクレーターになっている。中央の丘の上半分がなくなったように見えた。俺はとりあえずリリを呼び出してその背に飛び乗った。
シルフィードの力を借りて声を届けてもらう。
「降伏せよ!さもなくばそのままドラゴンのブレスで焼き払う!」
この一言で敵軍の士気はポッキリとへし折れたと後で捕虜から聞いた。そのせいか白旗を掲げた騎士がこちらの陣営に近づいてきたのは降伏勧告からすぐの事だったのである。
ドラゴンブレス以上の大規模破壊をやらかしてよく言うわとか言わないで?試し撃ちもせずにぶっつけでやらかしたのは認めるが、俺だけの責任じゃないぞ。
以後この魔法【震天雷】は禁呪とされた。やり過ぎとか言われてもな・・・なんでこうなるよ?
セヴァストポリ要塞を一兵も損なわずに1日で抜いた。むしろ蹂躙した。
この戦果を広げて、敵を自壊させる手法を提案してきたのは軍師たる義兄上だった。
南方戦線と足並みをそろえる意味もあり、周辺の平定を行う。
次回、イーストファリアの終焉
レールガンの原理は適当です。射程とかも適当です。ファンタジーにガチの科学原理を持ち込んじゃいけません。




