閑話 学校編~行軍訓練の罠~
冬山のサバイバルとかかなり適当に書いてます。
雪崩を押し返すにどんな力が必要かとかも適当です。
厳冬期に入ると南方の山脈地帯に向け候補生の一団が出発した。王都周辺は平野が広がっており積雪などはあまりしない。そのため南にある「名も無き山脈」での行軍訓練となるのだ。しかしもって寒い、寒すぎる、いかなる状況でも行軍をこなし、いかなる環境でも生き延びなければならない。お題目自体はわかるがなんなんだろうこの嫌がらせ。顔ぶれはいつもの班でイリスはこういった肉体労働系の実習には参加しないので、王都でお留守番だ。外套をはおり、背嚢には1週間分の食料と水。最悪脱落してしまう場合、教官を中心とした救護隊がいる・・・らしい。責任者があのおっさんであるかぎり、正直俺たちについては命の危険しか感じない。そもそも、最後尾ってあたりで作為を感じるのだ。
それはさておき、吹雪がひどくなってきた。班のメンバー同士声をかけると問題なく全員そろっていたが、どうやら俺たちは置き去りにされたらしい。ミリアムの魔術探知で周囲を探っても反応がないというより、魔術的な妨害がかかっており、吹雪自体もトラップのようだ。実に手のこんだことをしてくれたもんだ。結界はミリアムが解除してくれたが吹雪自体はどうやら本物らしい。
「くっそ、やられた!」
「エレスの日頃の行いのせい」
珍しくミリアムが茶化すようにつぶやく。
「まあ、今更ですな。とりあえずかまくらを作りましょうぞ」
「なんですか、かまくらって?」
「カイル殿はご存じないか。まあ、そもそも我ら一族の風習にて」
「もったいぶらずにどういうものか教えて下さいよ」
「まあ、雪で家を作るような感じでござる」
「うん、早速作ろう。風邪で体温が奪われるし、防寒の結界も魔力が持たない」
「左様ですな」
各自無言で雪を掘り返し壁を作った。天井部分はテントの帆布を利用し、中央部は深く掘り返して日を焚けるようにする。水分は雪を鍋に放り込み火にかけることで調達できる。ミリアムが手持ちの魔石を使用して警戒の結界を展開した。捜索隊に暗殺されるとか洒落にもならない。
「しかしだな、たしかに俺はおっさんの面目を潰したが、こんな目に合わされるほどなんだろうか?」
「貴族のメンツってのは病的なものがありますからなあ」
「老害は短気だから」
「ミリィ、それは身も蓋も根拠もない」
「私のエレスに危害を加えようとしただけで排除の十分な理由」
「私のってなんだよ」
「殿と奥方の夫婦漫才は飽きませんなあ」
「トモノリ、おい、どういう意味だ?」
「なに、我らにとっては日常ということでござるよ」
「ごまかすんじゃねえ!」
「殿、大声はまずいです。雪崩とか起きることがあるのですぞ?」
「んな馬鹿な・・・」
思わず黙りこむ俺たち。
「・・・トモノリ、変なフラグ立てないで、ほんとに雪崩が起きてる」
「な、なんだってー」
「これもトラップみたい。少し上の方で魔力を感じた。大体の位置を見て雪崩で一気に押し流すつもり」
「ミリィ、土魔法で穴を作ってフタを」
「なるほど、了解」
「ってなんかどどどどどどって言ってますぞ?」
「カイル、5秒稼げるか?」
「無茶言ってくれるな。何とかする!」
かまくらをふっ飛ばし、周囲の状況を見る。吹雪はやんだが積雪で方向とかがよくわからない状況になっていた。標高の高い側に目を向けると、轟音を立てて雪壁が迫ってくる。
【盟約に従い来たれ風の精霊よ 渦巻き逆巻きすべてを切り裂け 無影の刃よ!サイクロン・エッジ!!】
カイルの呪文が放たれ、渦巻く風が雪を押し返し舞い上げ断ち切る。そこに火属性の魔力付与をした矢を連続で叩き込む。爆風で雪崩が割れ、俺達の左右を雪が滑り落ちてゆく。だがまあ、個人の力で大自然の猛威を防ぎきれるわけもなく、僅かな抵抗も虚しく俺たちは雪崩に飲まれた。
ように見えただろう。ミリアムの魔法で洞穴を穿ち、その中に逃げ込んだ。斜面にそって物理結界を張り雪をやり過ごす。俺たちというか俺の息の根を止めたい連中はこれで安心してくれれば良いのだが・・・
30分ほどして、雪崩が収まったようだ。結界をとき雪を慎重にどかして周囲を警戒する。俺とミリアムの探知魔法には引っかからなかった。妨害の気配もなく、当面の危機は去ったと思ったがすぐに問題に直面した。物資が全部雪崩で流されたのだ。さすがになにもないところから肉やパンを生み出す魔法には心当たりがなく、水を確保できることだけが救いだった。昼間の吹雪がウソのように晴れ渡り、星の位置で方角を確認できる。たちの悪いことに行程のほぼ半ばでこの遭難である。食料なしで下山可能かは微妙なラインで、進むにしても引くにしても俺達の生存を知れば妨害が予想される。八方塞がりとはこのことかと頭を抱えていると、常時展開していた探知魔法に人間が引っかかった。敵かと思って警戒を上げたが単独で俺たちに近づくのは、暗殺者であるならば正気の沙汰ではない。そして近づく人影を視認したとき俺は安堵の息をついた。
「助かったぞ、援軍だ」
そこには無表情でこちらに手を振るロビンの姿があった。
ロビンのもたらした物資で俺たちは一息つくことができた。この際だからと先に進み、俺達をはめようとした奴らに鉄槌を下すつもりで、先に進む。そこには春先の印象と一変したフィリップの姿があった。
次回 行軍訓練後半(仮
むしろ学校編書いたことで、はじめの部分大幅加筆とか修正がいりそうな気がしてきたぞ。
ある意味作者が修羅場、どうしてこうなった!?