家族っていいものだ
会話中心の閑話的パート
「だあああああああ、お前らいい加減にしやがれ!」
「えー、だってあれは貴重な事件」
「いいですねー、私もそれくらい愛されてみたいわぁ」
「イリス、そうか、俺の気持ちが信じられないのか?」
「いやあのその・・・えーっと・・・」
「よしわかった。あとで覚えてろよ?」
あとでになにを想像したのかは知らないがイリスが顔を真赤にしていた。
同じくエリカもなんか真っ赤になってクネクネしている。お前ら俺を萌え殺す気か。
「あー、ミリアムねーさんイイなあ。私が一番日が浅いからなあ」
「時間は関係ない、って思うよ。少なくともエレスの場合はね」
「そういうもんですか?」
「そう、だからエレスを信じればいい。最高の旦那様だから」
「・・・なるほど。んじゃちょいとおねだりしてみるかなー」
「ん?何だリズ、なんかほしいのか?」
「そろそろ私も子供がほしいな~なんて」
「お、おう。努力する」
「ちょっと、今夜は私のば・・・あうあうあうあ」
イリスの見事なまでの自爆で場が和む。
従卒兼護衛兵のアランは耳まで真っ赤にしながら必死にポーカーフェイスを保とうとしている。
今度こいつにも嫁を見つけてやらんとな~・・・
と思っていたらリズがアランの有様に気づき、いじり始めた。
「アランくんは好きな子とかいないの-?」
「いえ、まだ私は半人前で、陛下のおそばに仕えることが最優先です」
「そなのー、いい子だねー。私の旦那をよろしくね~」
「はっ、この身命に代えても!」
「だったらご褒美に可愛いお嫁さん見つけてあげないとねー」
「ええええええいやあのその」
「こう見えてアランは知勇兼備。剣をもたせたら勝てる人のほうが少ない」
「そうなのミリィお姉さま?」
「普通、王の護衛とかになったら王宮内でも一個小隊をローテーションさせたりしますねー」
「そういうもんです?」
「元女王の貴女がなにを言ってるんですか?」
「そもそもあの時は洗脳されて、膨大な魔力があったからねー。並の暗殺者じゃ近づく前に消し炭だったし」
「うわー、どんだけ消し炭にしたんですか?」
「さあね?数えるのもアホくさくなったし」
「リズおねえさま、笑えないです」
「あーも-。エリカちゃんかわいいなあ。こんな妹欲しかったんだ-」
「あー、私ずっと末っ子ポジションは変わらないのですね・・」
「エリカ、諦めなさい」
「それをイリス姉様がいいますか・・・まあ、いいです」
「それはそうと、アランくんのお嫁さんだよね」
「えっ!?」
「アラン、諦めろ。もう逃げられない流れだ。それとも既に相手が決まってるなら早めに白状しろ。恐らくそれが一番ダメージが少ない」
「いやあの・・・いないんですというか言えないんですが・・・」
「・・・・人妻か?」
「はうっ、いいいいいえちがいますよ?」
「遠泳訓練並みに目が泳いでるな・・・うちの嫁はやらんぞ?」
「まさか、王妃様たちに懸想するなど、許されるものではありません!?」
そうこうしているうちに、俺達の後ろではなんかえらい勢いでアランと同年代の令嬢がリストアップされているようだ。よく考えれば、王の側近中の側近である。爵位こそ無いがそれ以上のメリットを見出すものもいるだろう。むしろ娘と爵位をセットにして取り込もうとする奴もいるかもしれん。あれ?これってなんか重要な政治問題になってないか?
「アラン、お前の今までの功績により爵位を与える」
「ちょっと待ってエレス様、なんで取ってつけたようにそんなことを!?」
素が出てるぞアラン。呼び方が昔に戻ってる。
「いや、なんというかな?お前は俺の一番近しい臣下とみなされている可能性が高い。要するに、お前を通じて俺に取り入ろうとするものが出てくる。例えばだが嫁さんの親父さんが困ってる、王様に取り次いで欲しいと。断れるか?」
「断ります。公私混同はできませんし」
「そうだな、模範解答だ。けどな、なかなかそうは行かんものだよ」
「・・・はい」
「例えば、お前には妻子はいない。持ったこともないのに何がわかる?」
「でしたら私は家族などはいりません」
「そういうわけにも行かんからな。まあ、家族ってのはいいものだ」
「死んだと思ったら号泣するくらいに?」
「そうだな。本気で魔剣に飲まれそうになったぞ?」
「みんな、絶対のこの人より先に死んじゃダメよ?本気で魔王が誕生してもおかしくない」
「「「わかりました」」」
「お前らいい返事しやがって。だがまあ、戦死とかはかんべんな、お前らと子供の誰でも理不尽に奪われたら、俺本気で魔王になっちまうぞ?」
「んー、本来は旦那様の愛の深さに感動するところなのでしょうが・・・」
「例えが物騒すぎるのよね-」
「ううう、エレス様、私を置いていなくならないでくださいね?」
「ダーリン、ずっと一緒だよ!」
「陛下、家族っていいもの・・・ですね」
「だろう?」
一時の休息は終わり、文官が呼びに来たので俺は執務室に戻る。イリス、エリカ、リズはそれぞれ公務があるので、それぞれの仕事に向かった。そして、普段はあまり執務室に立ち入ろうとしないミリアムがくっついてきた。来客用のソファに寝そべって伸びている。珍しくシリウスが少女モードでミリアムになついていた。隠れ里の加護はこういうところにも影響するのか?まあ、普通にミリアムは動物になつかれるしな-とか思っていると、
【主、上位魔獣と動物を一緒にしないで欲しい】
と念話が届く。
犬耳少女はぷーっと頬をふくらませていた。
あの戦いでミリアムは傷を負い、魔力も欠乏寸前まで行っていた。しばらくはベッドから動けなかったのである。子どもたちも傷ついた母の姿を見てショックを受けていた。それまで半ば遊びだった鍛錬に真摯に取り組んでいる。シリウスを抱きしめて撫で回しながらまどろむ姿をもう二度と失うまいと決意を固め、再びペンを動かした。
後日、アランのもとに大量のお見合いの絵姿が届いたらしい。
「どうしてこうなったんですか!?」
俺は彼に1周間の休暇を与えた。俺にできる精一杯だった。
イーストファリアは分割され、ウェストファリアとアースガードにそれぞれ編入された。併合ではないが、保護国として支配下に置くことで、後日の独立の含みをもたせていたが、4国の争いはついに2国に絞りこまれた。歴史の流れは加速し、急流に飲み込まれてしまうのはどちらか?
次回 暗闘
今回ほとんど話しが進んでないのは気のせいだ!