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北の電撃戦

俺は親衛隊と東方武士団を率いて一路北上していた。合流地点でバルデン軍と落ち合う予定だが、北で窮地に陥っているカイル軍を救うべく、急行している。


「殿、まもなく集合地点にござる」

「わかった。着いたらしばし休息を取り、兵糧を使わせるように」

「承知しました。殿、入れ込み過ぎはいざというときに判断を誤り申す。殿も一息入れるのがよろしかろう」

「そうだな。そうしよう」

「はっ!」


合流地点に到着し、戦況を探る。ハンゾー率いる斥候と風の精霊を放った。戦いはまだ小競り合い程度で、お互い手の探りあいだった。だが、3方向に布陣され、機動力を失う野戦築城もできず、一斉に攻撃されたら崩れる危険性がある。敵の左翼をついて潰走させられれば不利な状況からは脱することができようが、今のこちらの手勢では、奇襲以外に手はない。しかしあれだ、味噌をつけたこの握り飯というのは実にうまい。こいつらいいもん食ってるな。そりゃ強いわ。


「殿、ハンゾー殿が戻られました」

「うん、ナガマサ、トモノリを呼んでくれ、軍議だ」

「は!」


 そしてハンゾーのもたらした情報と、風の精霊からの俯瞰風景を元に策を組み立てる。まず、モートン卿が2000の兵を率いてこちらに向かいつつある。明日の昼前には戦場に達するだろう。バルデン軍は出発が我々より1日遅れているため恐らく同時刻に到着する。が、駆け通しの軍をすぐ戦闘に投入できない。場合によっては陽動だけでもしてもらおう。

敵を欺くにはまず味方から。カイル軍にもこちらの手勢の動向を知らせなかった。


「ナガマサよ、いつもトモノリの手綱を見事にとる手腕。流石だな」

「殿、わしはイノシシかなんかですか??」

「似たようなものであろう。いつも戦闘で飛び出して行きよる」

「最前線で刀を振り、殿の武威を知らしめるが我が武士道なり」

「そして真っ先に討ち死にして軍を敗北に導くか?」

「なに、早々死にはせんよ」

「なぜそう言える?」

「わしが最も信頼する友が後ろにいるからだ」

「なっ!?」

ナガマサ、顔赤いぞ?奥方に伝えたら面白いことになるかもな?

「わしが先陣を切って、おぬしが兵をよこしてくれる。わしの働きを幾層倍にもしてくれる。これで負けたら不思議ではないか?」

「むむむ、おぬしがいつも突っ込んでゆく後始末をしているだけよ!」

「いつも助かっておる。かたじけない」

「そういえば、そなたら子が生まれたらしいな?」

「おお、殿に気にかけていただけるとは、恐悦至極」

「かたじけない」

「トモノリの子は名をなんという?」

「トモフサにござる。わしに似て勇猛な武士となりましょう」

「我が子は義兄の名をいただきノブマサとしました。母に似て思慮深い子になりましょう」

「我らの子も、儂らのように殿のお子に仕えられればこの上ない幸せにござる」

「そうだな。臣下ではなく、友となってくれたら言うことはないな」

「そんな恐れ多い・・」

「キマイラと戦っているときな。実は震えが止まらなかったんだ」

「なんと・・殿と奥方の武勇は我らの心を揺さぶり申したが」

「お主らが来てくれたからな。あの時から俺は二人をかけがえのない友と思ってるよ」

「「かたじけない」」

「ハモるな」

3人の口からこらえきれない笑いが漏れる。気のおけない友人同士の語らいは深更に及んだ。


 翌日早朝、事態が動いた。モートン卿の兵を邀撃する目的で、騎兵500が出撃した。歩兵主体の2000では突撃をしのげない。モートン卿の戦下手は最近有名であった。カイル本隊も半包囲され、モートンの援護に回れない。俺は自軍を騎兵にぶつけることを決意し、兵を動かそうとした。が、カイルの軍から50ほどの騎兵が包囲網を突破し、モートン軍と合流を果たす。そして、見事な槍衾と射撃の併用で騎兵突撃を撃退した。あの指揮はランヌか。モートン軍は急進し、半包囲の敵左翼を衝く。包囲網の圧力を減じたカイル軍も中軍から騎兵を突出させ包囲網を押し返す。そして、俺の手勢がモートン軍との挟撃を成功させ、敵左翼を潰走させた。

結果的にモートン軍を囮として敵を釣りだし、戦線を伸ばしたところを断ち切ったのである。左翼の交代に合わせて敵軍はは退いた。終始劣勢であった我軍も追撃の余力はなく、深追いを避けて軍を引いた。


「おう、カイル、出迎えご苦労」

「陛下、後詰感謝いたします・・・で、なんで貴方がこんな少ない手勢でここにいるんですかああああああああああああああああああああ!!!!!」

「はっはっは。おぬしの危機に俺が動かないわけにはいかんだろ?」

「そーゆー問題じゃない!」

「そういう問題だよ。俺は信義に依って立つ。友と家族を見捨てるくらいならこの首を差し出すさ」

「軽々しく首とか言わないでいただきたい」

「そう怒るな。家族と友の安全は国あってこそと理解している」

「全く、困ったものだ・・・」

「ぶつくさいいながら、顔がにやけてるぞ?」

「にやなんかついてません!」

「あー、わかったわかった」


なんとなくいつものペースが戻ってきて、俺は一息ついた。さて、後はこいつらを蹴散らすだけだ。

エレス率いいる援軍で、北の戦線は兵力を拮抗させた。アースガードの将、クラウゼーは知略をうたわれた名将で、エレスの戦法を研究し尽くしたと高言している。

未だ戦場に到着しないバルデン軍の動向は?カギとなるは誰か?


次回 北の決戦

いつもどおりフィクションになるかもしれません

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