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ハイランド殲滅戦

ハイランド城の裾野で両軍は向かい合った。ハミルトン軍は昨日の戦いで概算2000の死者と4000の負傷者を出している。戦闘もいいところなしで士気は下がりきっていた。騎兵突撃で指揮官クラスの戦死者が多かったことも要因にあげられるだろう。

 反面うちの軍はエレス軍:死者400、負傷者550 カイル軍:死者80、負傷者200 オークリー・モートン軍:死者700、負傷者1000 兵力的には劣勢だったにも関わらず、相手の半分程度の損害である。というか、魔戦士団の特攻でオークリー公の部隊が混乱し、敵軍も包囲網突破のため攻勢を集中したことが理由だろう。ってかあれだ、連邦の魔戦士は化け物か・・・今後戦うことになると思うと頭がいたい。


 講和はない。そのような状況では既になくなっていた。昨日の戦闘自体は痛み分けといっていい内容だったが、もはや彼我の関係は不倶戴天レベルになっている。まあ、リズはそうは思っていないだろうがメディアだった時の行動と、女王に直接的に暗殺未遂で危害を加えてしまっている。女王を倒すしか生き残る道はないのである。とりあえず、兵力の補充と士気向上のためハイランド城を空っぽにして、リズの護衛部隊まで呼び寄せた。

 お互い戦力の再編成もあり、この日はにらみ合いで終わりそうである。夜襲だけハンゾーに警戒させるか。


「さて、真っ向の野戦で奴らを叩き潰す。意見はあるか?」

「先の戦いの恥辱をすすぎたく思います。私に先陣を!」

「モートン卿。貴公の勝利はそんな小さいことではない。女王が無事であることが貴公の至上命題であろう?本陣詰めの上、女王の直属の部隊を命ずる」

「はっ、私の目が曇っておりました。命令承ってございます!」

うん、熱血バカって扱いやすいなあ。

「左右と中央で陣列を作る。横陣だ。前軍はマルク子爵、先陣を務めよ」

「ははっ!」

「まあ、古典的な手だが、おぬしの防戦能力に大いに期待する。勢いに負けた振りで敵を引きずり込め」

「承知!」

「左翼はオークリー公だ、中央部隊との連携には気を配っていただきたい」

「かしこまりました」

「右翼はカイル候。あとすまんが、東方武士団は俺の本隊に戻させてもらう」

「御意!」

「ネイ。お前の連隊は前軍の支援を行え。魔法兵を多めに編成しろ」

「了解!」

「よし、では全軍持ち場につけ!」


 互いに横陣で向かい合う。手持ちの兵力はほぼ互角。そして、陣営には王女の旗が翻る。

ハミルトン軍は横一線のまま前進してきた。ともに重装歩兵を前に出し、叩き合いが始まる。

両翼はほぼ互角。右翼のカイルが若干押し込みつつあり、左翼のオークリー公は押され気味である。中軍から兵を送り、魔法兵の一斉射撃で敵の前衛に被害を与え押し戻すことに成功した。だがこちらの中軍が手薄であると気づいた敵軍が軽歩兵による浸透攻撃を仕掛けてきた。徐々に中央が押し込まれる。中央突破を許せば、本陣はすぐそこで、女王を打ち取ることも可能になる。ほぼ唯一の正気に掛け、攻勢を本格化させてきた。

 敵中央の歩兵の陣列が左右に開くと同時に騎兵突撃を仕掛けてきた。マルクとネイの部隊が突破され中軍に攻撃が加わる。陣列に開いた穴に敵は攻勢を集中させ、横一線だった陣列はこちらから見てVの字になる。中軍にもある程度浸透してきたところで破局は訪れた。

東方武士団の正確無比な射撃と魔法攻撃の十字砲火が騎兵部隊を蹂躙したのである。そこにエレス率いる親衛隊が斬りこみ、敵軍前衛部隊は大混乱に陥った。

それを見た全軍が反転攻勢を仕掛けた・・・のであればよかったが、オークリー公の部隊はやはり若干遅れる。ある意味予想通りで、先の突撃の際に左翼の後方に引いていたネイの部隊が見事なタイミングで魔法兵の一斉射撃を敵右翼に浴びせた。

 うん、そういえばなんか右翼方面から高笑いが聞こえてくるが、気にしないようにしよう。Vの字の両翼を閉じて半包囲で攻撃を加えるも、敵後衛は裏崩れを起こし始めていた。ハミルトン公もその中にいるようだ。そして、俺は最後の命令を下した。

「ミュラ、行って来い!」

「はっ!近衛騎兵連隊は俺に続け!この戦いの一番手柄は俺達のものだ!」

うおおおおおおおおおおおおお

 騎兵が速度に載って走りだす。右翼のカイル軍の外側をかすめるように駆け抜け、潰走しはじめていた敵後衛の横をついた。密集していない歩兵など騎兵の敵にはならない。

敵の目の前で回頭し騎射攻撃を浴びせる。そのまま敵の進行方向を塞ぐように半周し足止めを行い、号令とともに突入した。この時のミュラの命令は今も語り草になっている。


「第一命令!突撃!第二命令!突撃!第三命令!ただひたすらに突撃せよ!」


 崩壊寸前の陣列でも比較的兵が密集している部分がある。兵が守るべき存在となれば、重要人物となる。ミュラは迷いなくそちらに馬首を向けた。

自ら最前列を走り、最前列の兵に敵の密集部分に矢を放たせた。馬上の身分の高そうな騎士に命中する。そこをそのまま蹂躙した。というか踏み潰した。ぷちっと、ぱきゃっと。

後衛部隊が騎兵に蹴散らされ、包囲下に置かれた敵兵に降伏勧告を行う。しばらくは抗戦の気配があったが、どこを探しても最高指揮官がいないことに気づいたのだろう。徐々に武器を捨てる兵が増えていった。

 後衛部隊の中に馬蹄に踏み荒らされたハミルトン公の遺体が見つかったのはその夕刻のことであった。ミュラの名が刻まれた矢が突き立っており、総大将を打ち取るという殊勲を上げたミュラは、後の祝勝会で酒樽に放り込まれたらしい。なんとも手荒い祝福である。


 この戦いでハミルトン軍の死者は半数近くに及んだ。後の世にハイランドの殲滅戦と言われる所以である。

ファフニル王国の内戦は終わりを告げた。国内最大の貴族軍が壊滅し、日和見をしていた諸侯の対応と、荒れた国内の立て直しが急務である。ロンディニウム王宮の執務室でエレスは書類の山に埋もれていた。

あれおかしいな・・・ここって外国だよね、俺の国じゃないのになんで俺仕事してるの?

エレスの疑問はどうなるのか?


次回:戦後処理ってある意味戦争してる時より大変だよね?(仮

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[一言] >第一命令!突撃!第二命令!突撃!第三命令!ただひたすらに突撃せよ! 違ってたらすみません。 もしかしてこれって銀英伝ネタですか?
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