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王子誕生と北の動乱~序~

前回は会話がなかったので、今回は多めに

 医務室の前で右往左往する。イリスが3人の子供を連れてやってきた。

「ぱぱー、ままはどこにいったの?」

舌っ足らずな言葉でリンが俺に問いかける。

「ママは、この部屋の中だ。リンの弟か妹が生まれるんだよ。でもな、赤ちゃんを生むのはとても大変なことなんだ」

「そなのー?」

「ああ、だからリンもママを応援するんだ。がんばれーって」

「うん、わかったー。ままがんばれー」

かわいいのう。かわいいのう。イリスも目尻が下がりっぱなしだ。レイルとマリーは忙しい母がそばにいることに喜んでいるらしい。とりあえず、リンを抱っこして椅子に座る。リンは膝の上だ。なんか小声でがんばれーと何度もつぶやいている。かわいい。

シリウスが俺の頭の上から降りてきた。ぽてぽてと廊下を歩き、曲がり角を曲がった瞬間、魔力が弾けた。

【主殿。侵入者を片付けたぞ】

【おう、すまんな。いつも助かるよ】

そしてシリウスがくわえてきた侵入者は・・・

「えーっと、ルドルフ卿。いつオルレアンからいらっしゃったので?」

「おう、陛下。ミリィちゃんが産気づいたと聞き、すっ飛んでまいりましたぞ」

「ちょっとまておっさん。先触れの使者きてないんだが?」

「わははははは、細かいことは気にするでない」

「細かくねえ・・・」

「ところで、この子犬、なにもんじゃ?なんかいきなり気配もなく現れて魔力弾でふっとばされたんじゃが・・・」

「ああ、シリウスを見たことなかったっけか?」

「なに?こやつがあの魔狼だと?」

「かわいいだろ。やらんぞ」

「むう・・・」

「で、俺が聞きたいのはだ。東部国境をほっぽり出して、なんで貴方がここにいるんだ?

 東部戦線の副将たるあんたが?」

「いやあの、娘が気になってですな・・・」

「あんたが率いている兵に家族はいないのか?つい先日新婚の小隊長に酒をおごったとか言ってたよな?」

「ぐぬぬ、言い返せん」

「まあ、すでにいるもんは仕方ない。生まれて顔見たら前線に戻ってくださいよ?親父殿」

「承知したのじゃ」

俺の隣にどっかりと座るルドルフ卿。リンがすかさずジジイにとびついた。

「じーじ!」

膝の上から動いたもんだからバランスを崩し、手近にあるものを掴んだらしい。ブチブチブチブチ・・・

「ぎえええええええええええええええええ」

おっさんはなんか色んな物を振り絞ってリンを抱きとめた。リンの手には大量の引きちぎられたヒゲがあった。ばっちいからキレイキレイしようねーと、ヒゲを風魔法で吹き飛ばす。

イリスが顔を真赤にして笑いをこらえている。いやむしろそれ笑ったほうがいい気がする。

リンは天使のほほ笑みで、じーじだいじょうぶー?とか言って、首をこてんとやった。うん、あれはたまらん。涙目のルドルフ卿だが、なんとか根性で笑みを浮かべていた。うん、素晴らしいど根性だ。

そんなさなか、双子が手を叩き始めた。教えてもいないのに拍手をしている。さすが俺達の子だ、賢いとかなんとかずれたことを考えていると、産声が響き渡った。


 俺がレイルを、イリスがマリーを抱え、リンは自分で歩いて入室した。抱っこしようと企んでいたおっさん涙目。エリカとミリアムの子はどちらも男の子だった。もう3回めではあるが胸から湧き上がる感情は変わりなく、子供の可愛さはどの子も変わらない。いいものだ。


 そういえば、ルドルフのおっさんが王都にいた理由だが、ライエル卿に追い出されたらしい。なんかライエル卿が先日結婚したのだが、急にしっかりしてきて出る幕がなくなってきており、こっちは自分が見るから行って来いとかなんとか。そういえば、ライエル卿はルドルフのおっさんお兄の子供らしい。戦死した兄から伯爵領を引き継いだが、そろそろ返す時が来たようだと誇らしげに、淋しげに話していた。まあ、この度の東部国境のゴタゴタが片付いたら、引退を許可すると伝えた。


 さて、エリカの子はジーク・ベシェール・ラーハルト。ミリアムの子はクロード・ルイ・ラーハルト。クロードは先代オルレアン伯からもらった。おっさんはいい年こいて目の幅で涙を流しながら、オルレアンに戻っていった。本来こっちが主任務のはずの、東部国境の状況報告を受ける。まあ、方針変更なし、現状維持と伝え、復命させた。


 さて、このタイミングを見計らっていたかのようにカイルから使者が来た。北方でなんか変事があったかとか思ったら、なんかトゥール村から昔なじみの娘がやってきたと。悪徳商人に騙された父親が自分を身売りしようとしていると話を聞いて、アストリアと示し合わせたうえで実際にアコギなことをやっていたその商人を捕縛し、その親子を保護したこと。で、幼なじみの娘を妻に迎えたとの報告だった。知らんがな・・・

そして本命の報告はバルデンからやってきた。新婚のレックス卿が現れ、見知らぬ人物を連れて来ていた。

「ファフニル王の使者として参りました、ダグラス伯モートンと申します。陛下にはお初にお目にかかります」

「よろしく頼む。社交辞令は不要だ。用件を聞こう」

「噂に違わぬお方ですな。かしこまりました」

「ハミルトン公がついに反旗を翻したか」

「・・・おみそれいたしました。仰るとおりにございます。国の7割がハミルトン公に着きました」

「ふむ。だが今回の諍いの原因は女王にこそあるのではないか?」

「言葉もございませぬ、だが、私腹を肥やす貴族のせいで領民は塗炭の苦しみを受けております。

 その弱き民を救うための義挙ですぞ!」

「ふむ、女王に力がないことが全ての原因であろうよ。王は結果が全てだ。途中までうまくいきました。すさまじい努力をしました。なんてのは全く無価値なんだよ」

「ですが、このまま女王がいなくなればまた苦しむ民が出るのです!」

「そうだな、そして俺にも守るべき民がいることを貴公は忘れていまいか?同時に我が守るべき民を危険に晒し、異郷の地で果てることを命じる名分は何だ?」

「む・・・」

「では、率直に聞くとしようか。貴国を救援することで当家にいかなる利が生じる?」

「では、この条件はいかがでしょう?女王がエレス王を配偶者とします。そしてファフニルの共同統治者となっていただきましょう」

「正気か?事実上属国になると言っているように聞こえるが?」

「どうせ今のままでは滅びます。なれば、善王と呼ばれ始めている陛下にファフニルを滅ぼしていただき、その上での再生を願いたい。それほどにひどい現状なのです」


「あーもー・・・なんで面倒事ばっか持ち込まれるんだよ・・・」

「英雄の宿命です。諦められよ」

「てめえ、レックス卿。義兄上と呼んで頼るぞこのやろう」

「ほほう、それは光栄の極み。今後ともよろしくお願いしますぞ、義弟陛下」

「はっはっは、頼りになる一族がいるっていいなあ」

「くっくっく、権力者の親戚とか最高ですな」

「「わははははははは」」


いきなりぶっちゃけトークを始めた俺達にモートン卿はあっけにとられている。

「バルデン伯レックス、貴公に先陣を命じる。多分カイルが既に工作はじめてると思うからトゥールーズ軍と合流し、国境沿いのアークリーを抜け」

「御意!おまかせあれ!」

レックスは足早に謁見の間を立ち去った。あの男のことだ、バルデン勢は既に出撃準備が整っているのだろう。従兵を呼び、プロヴァンスに駐屯するトゥールーズ軍に指示書を送付するよう伝えた。

「さて、モートン卿。貴公は女王に報告をお願いする。バルデンとトゥールーズの手勢5000が後方から侵攻する。俺は5000を率いてそちらの王都に向かって動く。そのように伝えていただきたい」

「感謝いたします。すぐ女王にお伝えいたします」


 さて、サヴォイ伯に遠征準備を整えさせていたのですぐにでも出撃できる。伯には王都軍の指揮をとってもらい、留守居の最高指揮官を頼む予定だ。ぶーたれるだろうが。

裏切りの女王メディア。継承者たちを暗殺、騙し討ちなど、謀略の限りを尽くして王位についたと聞き及んでいる。の割りに、あんな忠臣がいる辺り一筋縄ではいかないことは間違いない。つーか、根回しミスって国内貴族の大多数に離反されるとかありえないとすら思う。なんか嫌な予感がよぎりまくりながら、ひとときの別れを惜しむ時間を作りに家族の元へ移動した。

この面倒事を引き寄せる体質が疎ましくて仕方ない。なんでこうなるんだよ・・・

レックスの見事な采配とバルデン黒騎士団の活躍により国境の要衝アークリーがあっけなく陥落した。

後方を撹乱するウェストファリア軍に手を焼き、ハミルトン公は1万の軍を差し向ける。

商業都市ベルファストの南方で領軍は激突した。


次回 ベルファスト会戦(仮


上記煽りはフィクションになる可能性があります・・・

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[気になる点] そういえば、ライエル卿はルドルフのおっさんお兄の子供らしい。戦死した兄から伯爵領を引き継いだが、そろそろ返す時が来たようだと誇らしげに、淋しげに話していた。 ルドルフのおっさん”お”…
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