動乱の火種
説明回です。
王位継承から1年がたった。エレス王を中心に、オルレアン、バルデン、アルフェンス、トゥールーズと国内でも指折りの軍事力を持つ貴族家がつながったことで、王権はほぼ確立された。王都を中心とした軍事力も内戦の痛手から立ち直りつつあり、グラナダの商業都市化も着々と進んでいた。
ここで一つ政策の転換を行う。まず、領主の内政に干渉を始めた。規定以上の税を取ること、治安が維持できないこと、私腹のみを肥やすもの、を王直属の巡察団に取り締まらせた。あまりにひどい統治をしているものは即座に解任され、改善の余地ありとなった場合は、これも王直属の官吏が入り行政指導を執り行う。不満を持って反旗を翻すものもいたが、即座に近衛騎士団による鎮圧を受けた。逆に言えば、反乱さえ起こさなければ命は助かるし、多少の財貨も保証される。また、働き次第で返り咲くことも可能であると王の名において布告が出た。貴族領の統治が均一化されることで流民が徐々に姿を消し、盗賊などに身を落とすものも減っていった。これにより、国力が右肩上がりになってゆくのである。
街道の拡張事業も着々と進んでおり、現地住民を雇用し予め経済力をつけさせておくことでその後の物流の増大による商業発展を見越した政策であった。小規模な行商人を募り、国の支援のもと山奥の寒村や、主街道から離れた地域まで商業化を進めたのである。あまり人が立ち入らない地域の住民から珍しい産物を仕入れた商人たちは、それを大都市圏で販売することで利益を得た。
街道沿いに兵の駐屯所を作り、治安の向上を図った。兵相手の商売で行商人が立ち寄る場所もでき、宿場町ができていった。ここでのみ国家の強権を振るい、すべての領で通行税の徴収を禁じた。ただし、商人たちには領都へ立ち寄ることを義務付け、そこで商売の利益に課税することで、領主たちの税収も確保する。そうやって得た税を街道の整備と治安維持ほか、産業の育成に使うことで再投資の利益が領主に入ってくることになる。
王子が1歳の誕生日を迎えた。初めて名付けの儀が執り行われることとなる。つーか、なんでまた1歳になるまで名前をつけたらいけないんですか?と先王に聞いても、しきたりじゃ。そういうもんだと思って考えるなといわれ、まあ、実害はないのでとりあえず受け入れた。
とりあえず、イリスと話し合って名前を幾つか考えていたが、トンヌラは流石にないと言うと、古い勇者の名前だと反論が飛んできた。なんかイラッとしたので、しばらくイリスを呼ぶとき、トンヌラと声をかけていると、顔を真赤にしてごめんなさいと言ってきたので、俺も矛を収めることにした。
それはさておき、妹姫はなんかすんなりと決まった。マリー・アルトス・ラーハルトという。イリス譲りの金の髪がふわふわしてて、とても可愛らしい。まあ、すったもんだの末、先王が知恵を貸してくれてなんとか決まった。レイル・クローヴィス・ラーハルト。いいのかこれ、ミドルネームに建国王の名前入ってるよ・・・
あ、なんか教皇領から祝福ですとか言ってアルブレヒト枢機卿が儀式を執り仕切ってくれた。
・・・お布施高すぎねーか?と思ったが、俺も一国の王。多分顔には出てなかったはずだ。
そんなこんなと言ってるが、長女のリンがお姉ちゃんモードに入って、双子の世話を買って出てくれており、親共の顔面を崩壊させている。萌え殺される日も近いなこれ。
「リンちゃんはおねーしゃんだから、おとーとたちのおせわすゆの!」
うん、親バカの自覚があるうえで敢えて言おう。かわいい。
そんなこんなで、小規模な反乱勃発以外は、基本平和な日々だった。しかしながら、他国の情勢は動き始めており、ファフニルは女王の独裁に地方貴族たちが不満を溜め込んでいるらしい。なんかうちと同じようなことをやろうとしてさじ加減をミスったのかもしれない。
イーストファリアは、東西で国が真っ二つになりつつあるようだ。この前の遠征軍率いていた長男王子が敗戦ショックで廃嫡され、どんぐりの次男三男が国を真っ二つにし始めているとかなんとか。というか、各王子から使者が来ていることは内緒だ。
アースガード連邦は、うちの軍政を参考になんか改革をしてるらしい。あの国は王がおらず、貴族議会の合議で国を動かしているんだが、魔法が使えて白兵戦もこなせるオールラウンダーの兵を育成しているようだ。魔戦士団とか名づけて、議長の直属になっているとのこと。
周辺がゴタゴタして火種がそこらじゅうでくすぶっているようだ。下手に巻き込まれるとうちにも被害が出かねない。フリードにいるアストリアとロビンに、諜報活動の強化を命じた。そして、急報が飛び込んでくる。イリスとミリアムが同時に産気づいたとの知らせを受け、俺は医務室にすっ飛んでいくのだった。
隣国2カ国で、ほぼ同時に内乱が発生した。アストリアはもともとイーストファリアの出身のため、アルフェンス伯の参謀につけて東部国境に派遣した。副将はオルレアン伯だが、なんとか手綱をとってくれたら・……いいな
そして俺自身は、女王の要請を受け、近衛とトゥールーズ、バルデンの両軍を加え出陣した。
反乱軍と睨み合っているとアースガードの魔戦士が国境を超えてきたとの急報が入る。
次回 北の動乱と裏切りの女王(仮
こんだけ風呂敷広げてもーて1話でどうまとめるのか、どう考えてももっとかかるよね
上記の煽りはフィクションになる可能性があります