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戦後処理~王都編~

王都のドタバタはこれにて終了。

 王の不予の原因は、強力な魔力の呪詛であったようだ。原因となった術者の死亡と、根源であったグリモアの消滅で、呪いが解かれたということである。従兵に肩を支えられ、王が謁見の間に姿を表した。


「皆、我が不徳により多大なる迷惑をかけてしまったことを詫びる。このとおりだ」

「「「「我ら臣下一同、陛下の回復を心より喜んでおります」」」」

「状況は聞いた。エレス卿、この度の働き誠に見事。後日十分な報奨を約束しよう」

「はっ!しかしながら、私一人の功績ではありませぬ。共に戦ってくれた諸侯にこそ、報奨をお願い致します」

「なんじゃ、欲がないな・・・まあよい」

そうつぶやいた王のニヤリとした笑みに、俺は最大限の寒気を覚えた。何だ、なにを企んでいる?

「さて、この話は置いといて、ファフニルの軍勢が王都に向け進軍中と聞く」

「陛下、トゥールーズの手勢。王都北方のプロヴァンスの砦にて迎撃準備を行っております」

「おお、レイリア。そなた無事であったか」

「はっ、イリス殿下の機転により、王都より落ち、エレス卿のご助力をいただくことが叶いました」

「そうか、命の危険をおして使者の任を果たした功績、覚えておくぞ」

「はっ、ありがとうございます」


「さて、イリスよ。軍を率いて越境してきたファフニルの軍を叩け、エレス卿はイリスの補佐を頼む」

「「はっ!」」

「諸侯にファフニルの討伐命令を出すのだ!」


 王は長期間の昏睡で体調を崩していたため、そのまま居室に戻った。

トゥールーズ軍は3000ほどで、砦に入っているとはいえ、それほど防御能力が高い場所ではない。招集された諸侯軍は、そのままプロヴァンスで集結するよう、予め指示を出していた。

どの程度集まるかは未知数であるが、クーデター派の敗北と王の復権は伝わっているだろう。勅命に逆らって日和見をするのはある意味いい度胸をしているが。

 王都の守りには近衛騎士団2000が担当することになった。イリス王女の手勢として近衛から500が付き従う。バルデン勢を先陣に王都を出陣することとなる。軍の激励に、王が演説することとなっていたが、代理にエリカ王女が言葉を送ることとなった。

 閲兵場に設けられた演壇に立つ。緊張のあまりプルプルしている。それを見守る兵たちは緩む頬を必死で食い止めながら温かい眼差しを向けている。将兵代表として、俺とイリス王女が演壇のすぐ前に立っていた。一つ深呼吸をして、口を開いた。なにこの子犬系王女・・・保護欲を掻き立てる振る舞いに、兵の心が一つになっていった気がした。

「勇敢なるウェストファリア軍の皆さん。北からファフニルの兵が王都に向け攻め寄せています。このままでは、弱き者が虐げられることとなるでしょう。命を賭して、弱き民を守ろうとする皆さんを、私は誇りに思います。

 しかし、将兵の皆も家に帰れば、一人の親であり、子であり誰かの大切な人でありましょう。だから私は祈ります。ここに集った皆が一人も欠けずにまたここに帰ってくることを。戦場の現実を知らぬ小娘の戯れ言と思われるかもしれませんが、私は心より、皆の無事を祈ります。だから。

みんなーーーーー無事に帰ってき・て・ねーーー!!」

顔を真赤にして応援の声を張り上げる。打算の一つもない、真摯なる祈り。閲兵場の兵はひとり残らず心を揺さぶられたことだろう。割れんばかりの声で鯨波を上げ、拳を振り上げる。連戦の疲れも忘れたように。

そしてある意味致命的な事件はこの直後に起こった。エリカ王女が壇上から降り、俺の前に立って言葉をかけてきた。それはいい、だがこの兵士のテンションの前ではある種最悪のセリフだった。


「エレス卿、ご無事のお帰りを祈っております。私を未亡人にしないでくださいね」


 演説のように張り上げた声ではない。むしろ喧騒で普通の声などかき消されてしまう状況であった。だが、最前列の兵がその台詞を聞き、固まった。

ざわつく声が悲鳴に変わり、絶対零度の目線が俺に突き刺さる。なんだろう、別の意味で士気は上がった気がするが、俺、無事に帰ってこれるんだろうか?

なんか俺の意思はまるで確認されず、外堀が着々と埋まってゆく。

どうしてこうなったんだろう・・・?

どんどん埋まってゆく外堀、ミリアム、イリス、エリカの三者同盟が俺を包囲してゆく。

俺はこの包囲から抜け出せるのか?俺の幸せは何処にあるのか?

次回、プロヴァンス会戦(仮) 上記の煽りは全く無関係になる可能性があります!

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