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グラナダ攻防戦

今回は第三者視点にてお送りしております。

 敵軍の奇襲を避けるため、河から少し手前にいったん陣を置いた。こちらの内訳はラーハルト軍1500。アルフェンス軍2500、オルレアン軍1500、バルデン軍1500の合わせて7000。ほか、フリード傭兵部隊や輜重合わせて1500がいる。これは全面の戦闘部隊としては扱わない。斥候を放ち周囲の地形と敵勢の配置を再確認する。東部連合軍は数日動きを見せず、周辺からは要塞を攻めあぐねて身動きがとれないとも見られていた。諸侯が固唾を呑んで見守る戦況は、一人の使者が東部連合を訪れた日に動き始めたのである。


 斥候からの報告を受け、議論を深める。作戦にある程度のめどが付き、実行に移すタイミングを図っていた。そんな最中アランが転機となる報告を持ってきたのである。

「閣下、トゥールーズ候より使者が参りました」

「お通ししろ」

「はっ!」


 天幕をくぐり入ってきたのは眼光鋭く、抜身の剣のような雰囲気をまとった壮年の騎士だった。トゥールーズ候からの使者ということもあり、レイリアさんにも同席していただいていたが、彼女の口から予想外の、そして俺が一番欲していた人物の名が聞かれることとなった。

「フェルディナンド小父様・・・」

「サヴォイ伯フェルディナンドと申します。ラーハルト辺境伯にはお初にお目にかかる」

背筋を伸ばし、教本に載っていそうな敬礼をしてくる。

「いえ、初対面ではありません。士官学校の行軍演習では厳しいご指導を頂きました」

「おお、そういえばその黒髪には覚えが」

「せめて顔を覚えていただけたらよかったんですがね」

「はっはっは、申し訳ござらぬ。しかし、士官学校を出て1年半の、

 それも平民の騎士候補生が辺境伯になるとか、この国の歴史を遡ってもまず無いことかと」

「ま、まあそれはおいといて。レイリアさん、地図を持ってきていただけますか?

 あと指揮官クラスのものを集めてください」

「あ、はい、承知いたしました」

そして会議を始めるまでの間サヴォイ伯と士官学校の演習の思い出話に花を咲かせたのだった。


「では、会議を始める」

そう告げて、エレスは胸元のペンダントを握りしめた。

「明朝を持って全軍で渡河し、全軍を持って攻めかかる。先鋒はアルフェンス軍、左翼バルデン軍、右翼オルレアン軍。魔法兵を使って城壁上の敵兵を牽制し、中央軍が全力で城門を破る」

「待たれよ、それはいかにも無謀であろう!」

アルフェンス伯が血相を変えて反駁する。それを口火に轟々と非難の声が上がる。

「そもそも辺境伯の手勢はどうされるおつもりか?」

「城門が開き次第要塞内に突入し、制圧する」

「最後の美味しいところだけ持ってゆかれるつもりか!」

「口が過ぎるぞオルレアン伯!」

「そもそも、最も少領土の貴公が辺境伯の地位を得たのは王女に取り入ったからであろうが」

「なんだと!その暴言許せぬ!」

「許せなんだらどうするつもりだ若造?」

「なれば我が手勢であの程度の城、落としてみせようではないか!」

「ほう、ではお手並みを拝見しようではないか、のう、各々方」

「こんな腰抜けどもがおっては勝てる戦も勝てぬわ!ラーハルト勢は明朝を持って渡河し、奴らに目にもの見せてくれるぞ!」


 険悪な雰囲気のまま軍議は幕を閉じた。明朝の渡河に備えこれまで準備されていた筏を川岸に用意し、野戦築城に必要な資材を準備してゆく。対岸から見ると奇妙な光景であったに違いない。忙しく立ち働いているのはラーハルト軍のみであり、他の諸侯の兵は周辺の警戒などはしているが全く動きが無いのである。


==グラナダ要塞==

「閣下、斥候が戻りました。対岸で渡河準備が始まっておりますが、動いているのはラーハルト勢のみ。他の諸侯は日和見を決め込んでいるようです」

近衛第一連隊長カルロスが城主の執務室に入り報告を上げた。

「他の斥候からの報告も聞いておる。朝の軍議で派手に仲間割れをしておったようだの」

近衛騎士団長オーギュストが別の報告書を手に応える。

「左様ですか。閣下の武威の前には奴らもまた烏合の衆となりますな」

「ラーハルトの奴らには我が受けた屈辱、幾層倍にして返してくれようぞ!」

カルロスのあからさまな追従に狂気を孕んだ哄笑が城内に響き渡った。それを聞いた兵たちはこの戦いの先行きに不安を覚えるものもいたが、要塞という圧倒的有利なアドバンテージにすがることしかできなかった。

=================


「いいか、これより渡河作戦を実施する。迅速さが命と心得よ!目標地点に着いたら即座に空堀の構築と柵を組み立てよ。腰抜けの諸侯共に目にもの見せてやるのだ!」

上層部の仲間割れに兵の士気は上がらない。むしろ死地に赴かないとならない我が身の悲運を嘆いているかのようだった。

「かかれ!」

エレスの号令のもと、筏に乗り込んだ兵たちが川を渡り始めた。向こう岸には迎撃の兵はなく、敵兵は要塞にこもったままである。そして後方の味方も最低限の見張りを残して天幕から出てくることはなかった。常勝のラーハルト軍の前途に暗雲が立ち込める先行きであった。


自ら陣頭に立って戦うエレス。雲霞のごとく押し寄せる敵兵の前に風前の灯か?

味方に離反され、圧倒的多数の敵に囲まれた戦場で奇跡は起こるのか?

次回 要塞陥落(仮) お楽しみに!


上記のあらすじはフィクションになる可能性があります


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