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エピローグ どうしてこうなった?!

完結・・・のはず

 不帰の山の霧が晴れて早半年。街道も通り、オズワルド帝国との間に交流も始まっていた。技術や文化といった面でかなりの隔たりがあるが、どうも神代の時代に失われた技術がこちらにあるらしく、金属加工などの技術は向こうが進んでいた。また、世界全体に魔力が乏しくなって久しく、結界内を循環していた魔力は封じ込めていた結界がなくなったため、飛散し大きな魔法というものは使えなくなっていた。ただし俺自身の魔力は特に減少はしておらず、それなりの魔法は使える。まあ、それについて、国境に潜んでいた山賊の類をうちの魔法兵が一掃した。帝国軍の目の前で。

 それにより、こちらを征服する意図はとりあえずくじかれ、通商と修好の条約締結に至ったのである。商売についてはうちに強烈なのが二人ほどいるので、彼らに条件面や交渉は一任した。向こうの外交官が枕を濡らしていたようだが、詳しくは関知していない。

 皇弟イヴァンが使者として両国の中間、うちの土木魔法で一気に作った衛星都市で行われた。中立都市シオンにおいて、軍事的中立と、通商の保護、技術の相互交流について取り決めが行われた。王族同士の婚姻などの話もあったが、今後適齢の王子などがいればといったんは棚上げとした。

 そんなこんなで条約も結ばれ、ひとまずのドタバタは落ち着きつつある。旧教皇領にはアルブレヒトを伯爵として封じた。旧ファフニル領にはモートンを侯爵とし、アーサー卿を補佐につけた。イーストファリアは、西半分はシレジア大公に、旧王都を含めた東半分をアストリアに任せた。アースガードはマグデブルグ公としてカイルを封じた。アストリアとカイルは国境に面した地域である。まあ、最大の功臣の処遇としては、普通だよな?国内の体制も整い、新たなるフリード王国は順調に動き始めた。そんなわけで、俺は以前から決めていたことを宣言した。

「俺の役割は終わったので引退する」

会議の場がどよめく。ミリアムは普通にうなずいていた。イリスは額に手を当てため息をついている。エリカは頬に指をあて、考え込んでいる風情だ。リズは、にっこりとほほ笑んでいる。ツヤはいつも通り凛とした表情だ。これも何を考えているかはよくわからない。まあ、反対もしないだろうが。

「次の王として、レイルを指名する。で、摂政として義兄上を任ずる」

「ほう?儂がこの国を乗っ取ってよいと?」

「お望みとあらば。だが、王位には興味はないでしょう?」

「くく、であるか。承知した。だが、レイルの成人までだぞ?」

「十分ですよ」

「軍務卿としてベルティエ、財務卿はシャイロックだ。王都騎士団はサヴォイ伯に。それ以外の人事は義兄上に一任する」

「おい、丸投げか!?」

「基本はトゥールにいるので、なんかあったら誰かよこしてください」

「ムムム、承知した」

「あと、とりあえず、日々の生活に困らない程度の年金を出してくれたら大丈夫です」

「シャイロック卿、額は任せた」

「は、ノブナガ公。ではこのくらいで・・」

「であるか、うむ、それで」

それで提示された額を見てさすがに突っ込みを入れた。

「ちょっとまった。なんで年間金貨1枚なんだ?」

「これから新しい国を作り上げるのに資金はどれくらいあっても足りませぬからな」

「うむ、結局帝国がいつ手の平を返すかわからん。そうそう、エレス殿の武勇と魔力があれば抑止力になるわな。有事の際に先陣に立っていただく場合は増額でどうか?」

「ふむ、その場合は一時金ですな」

「要するに何が言いたい?」

「陛下のお力がまだ必要ということですよ」

真面目な顔でノブナガ公が俺の目を見据えて口を開く。

「この国はまだよちよち歩きの赤子に等しい。民はまだ新たな国になじまず、帝国は優れた武器と我が国より多くの人口がいる。そんな中で王が引退とか、この国を亡ぼす気ですか?」

「うむ・・・」

「これからまた統一事業に優る苦境があるでしょう。そんなご時世に国をほっぽり出して年金生活ですと?」

やばい、なんか目が据わっている。

「ふふふふふふふふふふ・・・陛下、一緒に幸せになりましょうぞ。為政者として、多くの仕事に追われ、軍を率いて戦塵にまみれるは苦しい。されど・・・」

俺は目線でその先の言葉を促す。

「国民の幸せな笑顔はそれに優る幸せにござらぬか?」

 あ、なんかこれ、下手なこと言えない雰囲気だ。なんか周りも頷かなかったらやばい雰囲気になってる。そしてこの笑み、あかんやつや。ふと視線を感じ、そちらに目を向けると、イリスとエリカが同種の笑みを浮かべていた。さらに目線を泳がせるとリズとツヤもどっしりと据わった目つきである。ミリアムは…苦笑いを浮かべている。だがまあ、俺が隠遁生活を送るのはかなり先のようである。


 年金生活にひかれて、働かなくてもとりあえず生活出来るって素晴らしいと衝撃を受けた。だが今俺はそれを出す立場になっており、それを保証する責任を負っている。人生ままならぬ。5人の嫁と10人の子供も養わないといけない。そう考えると長男に任せて引退するのはもう少し先にすべきだった気がする。

 急いては事をし損ずる。まさに今この状態だ。だが、なんだかんだで縁がつながった人たちがいる。だから、窮屈ながら温かいこの玉座という牢獄に今しばらくつながれるのも悪くない。だが最後になるが、ただの兵士が王にまでなってしまったこの成り行きとか、言い換えれば運命とやらにこう言いたい。

「どうしてこうなった?!」

見切り発車という言葉すら生ぬるい、思い付きのままに始めたこの作品もひとまず完結という形をとることとなりました。ただまあ、後日談とか、追記エピソードとか、対帝国の戦争とか、思いついたら書き始めるかもしれません。とりあえず、誤字脱字の手直しと、文章のおかしいところの手直しなどをしてゆきます。

7月頭の急激なPV数の増加と、8月の本日の一冊の紹介で、またPVの増加がありました。発表している以上、多くの人に読んでいただけることは幸せなことです。皆様の叱咤激励で毎日の更新を続けてこれたものと思っています。

とりあえず、思い付きで突っ込んだ設定とか、最初に作って完全放置の設定集とかいろいろと、手を付けたい部分もありますので、また気が向いたら目を通してくださったら幸いです。

読んでいただき、誠にありがとうございました。


                                              響

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