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死闘の幕開け

怪獣大決戦始まるよー(ぇ

 竜人とでもいえばいいのか?黒い鱗に覆われ、蝙蝠の被膜のような翼を生やし、トカゲのような尻尾をビタンビタンと揺らしている。どこからともなく取り出した両手剣は俺の持っているダインスレフに酷似していた。

「グ・・ガガガ」

もはや人語を話してすらいない。こんなのどうしたらいいんだ?

「ふむ、儂もシステムにかかわる、いうなれば舞台装置の一つだが、管理する側でないのでな」

「何が言いたい?」

「もはやどうしてよいのか儂にもわからん」

「それドヤ顔でいうことじゃねええええぇえ」

「進も退くも死ならば、人間前のめりに逝こうぞ!」

「それ何の解決にもなってねえ!?」

 漫才をしている場合じゃなかった。アルブレヒトの手に魔力が集まる。一拍おいて猛烈な勢いで魔力弾が飛んできた。ニーズヘッグの結界で攻撃を防ぐ。

「完全に暴走してるな。むしろ数百年もよくまあ、自我を保ったものだ」

「感心してる状況か?」

「まあ、実際問題、単純な力という点なら、儂が一番強いのでな」

「ということは?」

「あやつを滅することは可能じゃのう」

「多少は余裕があるってことか?」

「いや、ない」

「ちょっと待てえええええええ!?」

「システムが暴走を始めておる。このままだと、あやつが自滅するか、暴走ですべてが消し飛ぶか、どっちがはやいかのう?」

「ちょ、おま!?」

「ふむ、とりあえずだ、おぬしに丸投げしてもよいか?」

「何を?というかこの状況が好転するなら何でもする!」

「確かに聞いた。なれば今代の勇者の使命を果たすがよい」

「待て、ちゃんと説明しろ!?」

「なに、簡単なことじゃ。本来管理者となるはおぬしだからな。捻じ曲げられた流れを元に戻せばよい…と思うのじゃが」

「待て、なぜそこで口ごもる?」

「このような事態は初めてのことだからの。儂にも先が読めぬ」

「わかった、具体的にどうしたらよい?」

「まず、儂を打ち倒す必要があるな」

「はい?」

ハトが豆鉄砲食らった顔をしていたに違いない。気分はクルッポーだ。

「要するに管理者、この世の王になるには試練を果たさねばならぬ。まあ、言いつくろってるだけだが、具体的に言うとな、光と闇に分かたれた魔力を融合し、一つのリソースを作る。それをもってシステムを初期化し再設定するのじゃ」

「ほうほう、んで?」

「まあ、順序を言うと、儂を倒し闇の魔力を支配する。もともとお主は闇よりの属性じゃったから掌握は問題なかろう。そして返す刀であやつを滅ぼし、光の魔力を支配する。後はそれを融合させればよい」

「おいおい、ずいぶん簡単に言うな」

「まあ、な。まあ、儂の首はおぬしにくれてやる。そのあとあやつを討つほうが大変じゃな。何しろ時間がない」

「暴走するかどうかってことか」

「さよう。まだ制御が効いておるが、それが吹っ飛んだらどうなるか? 想像もつかん」

「笑えねー・・・」

「まあ、あれだこれも運命じゃの」

「んな一言で片づけんでくれないかね?」

「何、ままならぬが人生よ」

「そうだな。思惑通り進んだことなど何一つない」

 ニーズヘッグとニヤリ笑みをかわす。こいつ竜で、しかも作り物の生命体の割にはやたら人間臭い。システムとやらを作った者の人格でも転写されているのかね?

 目を閉じ両手を広げる。最後にかわしたまなざしは俺にさっさとやれと告げているようだった。こいつといた日々はわずかだったが、わずかな感傷が剣を振るうことをためらわせる。おかしいな?こういった情はかなり前に捨てたはずだ。

「すまん」

 詫びにもなっていないような一言を告げ、剣を振り切った。ほぼ手ごたえもなくニーズヘッグは両断され、体の末端から煙のように消えてゆく。そして膨大な魔力が俺に流れ込んでくる。身体強化魔法はものすごく緻密な魔力操作を要求される。いまさら何言ってんだって話だが、要するにこの膨大な魔力を掌握するのに綱渡りのような制御を要求されることだ。左手を突き出し、結界を張る。今までは防げなかった攻撃を防ぎきる。黒竜の力を掌握した。

 状況が変わったことを理解したのか、アルブレヒトは剣を天に向けて突き出した。天井のステンドグラスからすさまじい量の光が降り注ぐ。剣を通じその膨大な魔力を吸収し、その姿をまた変容させてゆく。悪魔じみた竜人から、先ほど見た天使どもをさらにパワーアップさせたような姿になっていった。

 左右合わせて8枚の白い翼、同じく腕も左右4対8本。片手剣が握られている。白銀のサークレットをかぶり、同じく白銀のサーコートを纏う。これそのまま教会の絵画の題材になるなというくらい神々しい光景だ。

 神人アルブレヒトの最初の行動は、天井をぶち抜くことだった。そして宙に浮かび、上昇してゆく。俺も見様見真似で魔力を放出して飛んでみた。

 とりあえず、神殿の前庭に降り立つ。奴は空中で剣をかざしている。そういえば、周囲が静かだ。点を貫く光の渦も見えない。まあ、それは奴が吸収したからか。そして、城外の野戦は終息していた。異形の姿をした兵たちは、すべて魔力に還元され、渦に飲み込まれた後消えたらしい。3000近い人間を丸ごと飲み込んだということだ。


 奴は巨大な光球を打ち出した。そしておもむろに剣を上下に振る。光球は四散し雨あられとなってうちの手勢に降り注いだ。慌てて降り注ぐ光の矢を魔力弾で一つ一つ迎撃する。何とかすべて叩き落すことに成功した。ふとミリアムと目が合う。目を真ん丸に見開き、驚きの表情を浮かべていた。まあ、確かに人間離れした離れ業だった自覚はある。ああ、俺どんどん人間やめてるなあ・・・

 まあ、それはさておいて、俺の大事な妻に剣を向けたやつを許すわけにはいかない。光球を4つ撃ちだすと、同じように魔法矢に変えて撃ちだした。時間差と角度に変化をつけ、十字砲火になるように計算して。俺の攻撃は奴にすべて直撃した。腕は半数が吹き飛び、翼ももがれている。だが、一瞬輝きを放った後、まったく元通りに復活していた。全くダメージはないか。まあ想定内だ。

 黒竜のオーラを纏い俺も飛び上がった。最高速で突貫し、剣を振りぬく。相手も剣を振り迎撃してくる。3本までは切り飛ばしたが、残りで受け止められる。無事な剣から魔力の刃が飛来し、俺の結界に弾き飛ばされる。魔力の総量は俺が上回っていることは感じるが、ここまで膨大な魔力を操ったことがない。奴は管理者として魔力制御も行っていた。経験の差が出て不利に追い込まれることは戦いではよくある。気持ちを切り替えて新たな攻撃の準備をしていると、またすさまじいまでの魔力刃が飛んでくる。とりあえず、魔力の塊を飛ばし、そこから魔力弾を放ち広範囲の火力で相手を圧倒する。こちらの攻撃が当たればなにがしかの被害を与えているように見える。腕が吹っ飛んだり、胴に穴が開いたり。だが一瞬後には復活しているのでダメージを与えているかがよくわからない。幸いにして戦闘で魔力を扱っているので、暴走はまだしていないようだった。一気に決着をつけるべく、俺は魔力を練り上げる。そして、魔力制御の補助のため呪文の詠唱を開始した。

空中で繰り広げられる神話のごとき戦いを見守るフリードの兵たち。彼らの王の雄姿に、伝説の現場に立ちあっていることを否応にも感じる。

次回 伝説の戦い(仮

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