黒竜王の復活
そういえば軽いノリが最近一切出てない。シリアス一辺倒ってのはどうなんだろう??
圧倒的だった。魔力、存在、いくら俺が人外扱いされていても、それでも人の器に収まっている。リリがかなわないといったことがには一つの誇張も含まれていなかった。というか、英雄たる建国王と3体の神獣が力を合わせて封印したと言ってるが、どう考えても太刀打ちできない。圧倒的過ぎる力の差に震えが沸き起こってくる。どうすんだこれ?
いきなり目の前が閃光に包まれた。リリがブレスを叩き込んだようだ。シリウスが跳躍し、前脚の爪から魔力で斬撃を放つ。シルフィードが真空の刃を叩き込む。そしてすべての攻撃が強大すぎる結界に阻まれた。
「ええい、なんでこうなった!?」
「主殿、ぼやいてる暇があったら攻撃だ!」
「どうしろってんだ!?」
「浄化魔法は使え…ないな。とりあえずは一番得意なの魔法を叩き込んでくだされ」
「風の王シルフィードよ、俺とともにあれ!」
【わが呼び声に応えよ風の王 我かざすは無影の刃 打ち振るいしは風の聖剣 エクスカリバー!】
剣にありったけの魔力を載せて撃ちだす。結界に触れるとすさまじい破裂音の後・・・突き抜けた。
「あれ?」
「けしかけといてこう言うのもあれだが。主殿、本当に人間か?」
「うん、そうだと思ってたんだけども、最近怪しい」
「シルフィードの力を取り込んで制御した挙句にたたきつけるとか、人間業じゃないな」
「リリ、お前もか。俺を人外扱いするのか?」
「あの結界をぶち抜くとか儀式魔法レベルの威力」
「リリ、主殿、じゃれてないで攻撃じゃ!」
「お、おう」
相手が動きを見せないのをいいことにとりあえず一方的に攻撃を加える。効いてるのかよくはわからないが、ここで手を止めたらなすすべがなくなる気がしていた。
黒竜の口が開き、一瞬のための後ブレスが放たれる。即座に集結して複合結界を張るが、結界ごと吹き飛ばされた。扱える魔力量に差がありすぎる。都市一つ分の人間を儀式で魔力化して取り込んだのだ。そりゃ桁が違うよなと吹っ飛ばされながら考える。何とか体勢を整えた。いつの間にやら黒竜は黒い魔力の繭に包まれている。繭からは先ほどの渦と同じような感じで、魔物や異形がポコポコ生まれていた。異形の兵は人の形はしているが目が3つあったり腕が4本あったり、下半身が別の生き物だったりとなかなかに気色悪い。そして奴らは群れを成して城壁の外へと向かっていた。俺からすれば雑魚だが、一般兵では太刀打ちできない。まずい、風を纏って跳躍する。空中でありったけの出力で光弾を繭にたたきつける、が弾き返された。打つ手がどんどんなくなってゆく。いったん兵と合流して異形を迎撃すべきか? 迷いは戦いのさなかには悪であると自覚していても考えがまとまらない。
「王よ、われらが力も使うのだ!」
ノブナガ公の大音声が響き渡る。ヒノモト魔法兵の一斉射撃が異形の兵を薙ぎ払った。ラーハルトの兵たちが陣列を組み、魔物の群れを押しとどめる。俺が叩き込んだ訓練通りに盾を構えて攻撃を防ぎ、後方から投射兵器で援護し、剣士隊が切り込む。単独ではかなわない相手も連携と集中攻撃で確実に撃破する。アストリアが先陣にあって兵を鼓舞し、剣を振るって異形の兵を切り伏せていった。ロビンが放った矢はワイバーンを射落とし、弓兵たちが歓呼の声をあげる。
俺は兵を守らねばと考えていた。仲間を、臣下を守ることしか考えていなかった。逆に守られるなんて思いも及ばなかった。力強く戦い、生き抜こうとする姿に良い意味で打ちのめされた。というか吹っ切れた。
ふと隣を見る。最愛の妻たちが笑顔で俺の周辺を取り巻いていた。ミリアムが剣と弓を掲げ、イリスはゴーレム召喚の呪文を唱え始めた。エリカは防御魔法をかけてくれる。リズは聖別済みの護符を用意してくれた。そしてツヤは朗々と祝詞をあげる。
ていうか、こいつら留守居してるはずだったんだがなと首をかしげていると、ニーズヘッグが復活してしまえばこの世の終わりだ。だからそばに来た。生死を共にするために。子供たちは隠れ里に逃がしたと。お前らいろいろと度胸ありすぎだ。本当に守るべきものを目の当たりにするとどこからともなく力が湧き上がってくる気がする。
剣を掲げ、雷を付与した。聖別されたナイフを剣の柄本に置き、震天雷の魔法を応用して飛ばす。黒い繭に突き刺さり大爆発を起こした。大量の魔力が散利、浄化されて相殺されたことで異形の生産が止まる。ノブナガ公が采を振るい、異形の軍を蹴散らし始める。ツヤが祝詞をあげるたびに異形を包んでいた魔力が消えてゆき、力を弱めた。ドワーフの重歩兵がゆっくりと、確実に敵陣を割り、空中の魔物にはエルフの正確無比な射撃で貫かれてゆく。通常攻撃では魔力が四散した後、大本に還元されていたが、浄化の魔力を纏った攻撃は確実に黒い魔力を消し去っていった。
自身の存在を徐々に削られていることを理解したか、繭から黒い魔力弾が放たれた。ノブナガ公の采に従い、重歩兵と魔法兵のペアが前衛に立つ。対軍防御魔法「アイギス」の効果により魔力弾は弾き返され四散した。兵に損害はなかったのを確認し、全軍が歓呼の声をあげる。俺が王として積み重ねてきたものは無駄ではなかったと感じられる。
俺はミリアムと、シリウス、リリ、シルフィードを従え、繭の下に急ぐ。異形を切り伏せ、突破を急ぐ。
【今、新たなる契りを交わし行使せん レーヴァテインよ 魔神スルトの紅蓮の煌きを今我が手に与えたまう プロミネンス・フレア】
ミリアムの攻撃魔法で敵軍を焼き払いさらに進む。とっておきの塩の塊を繭に投げ込み、魔力を解き放った。表面にひびが入り、崩れてゆく。黒い鎧をまとった人物が現れた。空中から音もなく降り立ち対峙する。どうやらニーズヘッグも人型をとって試練を与えてくれるようだ。しかしあれだけの魔力がこの姿に集約しているのである。何が来ても驚かないと決意を込め剣を構えた。
黒衣の騎士は口を開いた。「運命に導かれし王の後継者よ。われを乗り越えられるか試すがよい」
うん、何言ってるんだか理解不能。
次回 伝説の真実
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