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閑話 アストリア、励む

 わたしの名はアストリア。ラーハルト家で騎士に任ぜられた。しかも騎士爵だ。サンカ族改めフリーデンの領主代行になり、先日の問題点は一気に片付いた。テムジンがフリーデンとこのトゥールを往復して人と物資の輸送を行っている。アルフェンス領との飛び地ではあるが、もともとうちの殿とフェルナン卿は非常に有効な関係を築いていたため、全く問題はなかった。アルフェンス領の村や都市を通り、フリーデンの産物を売却する。そして食料ほかの物資を入手する。

 そういえば、わたしより少し早く仕官したシャイロック殿が物資の売買の便宜を図ってくれている。といっても相場通りの取引ではあるが、元山賊というレッテルを張られないだけでもありがたかった。サンカ族の男で身軽なものは自由戦士待遇で出稼ぎをさせているがいざというときは私の手勢として集結する。北の砦を拠点として、森への出稼ぎと兵としての訓練を交互に行っていた。

 うちの殿は兵を大事にしている。ちゃんと飯は食わせるし、給料が遅れたことはない。訓練は厳しいが、無意味なしごきではなく、兵が生還できるようにすることを主眼としていることは、その訓練を受けている兵自身が理解している。故に士気は高く、並の領主軍とは思えない連度になっていた。


「これより模擬戦を執り行う!」


 ラーハルト軍の古参兵100とフリーデン戦士隊100がお互い向き合っていた。わたしは当然フリーデン隊の指揮を執る。そして、向こうの指揮官は殿、エレス卿が執っている。横陣でお互いぶつかり合った。がっちりと立て兵が隙間なく並び、こちらの攻撃が通らない。だがこちらも元山賊の軽歩兵でフットワークは軽い。隙間を見つけて切り込んだり、陣列の側面に回り込んだりと縦横に動き翻弄する。だが足に根が生えたかのような堅牢さで隙間は即座に埋められ、側面に回り込む動きもけん制される。だが向こうもこちらの出入りの激しい動きについて来られず、手を出しかねているようだった。

 しびれを切らしたのか、軽歩兵中心の一隊が突出してきた。両翼が重歩兵で、足の速さの差が出て自然に紡錘陣になる。突撃陣は横撃が有効だが、重歩兵がけん制して結局正面から受け止める形になる。っておいおい、総大将が何で先陣切ってるんだよ、ああ、そりゃ押されるわ。とりあえず自分も前に出て迎え撃つ。中央突破されたら負けだ。まあ、そう簡単に負けてやる理由はない。先頭で両手剣を振り回して鼓舞する殿は軍神のような威があった。

 たたき伏せられそうになる兵をかばう形で割り込む。そのまま一騎打ちとなったので、指揮をエスゲイに任せる。向こうはカイル殿が指揮を執っているようだ。さて、目が合った殿はいい笑顔で剣を振り下ろしてきた。横っ跳びにかわし、水平に剣を打ち込む。立てた剣に阻まれる。連続して突きを放つ、受けすらせずに上体を揺らしてかわしてのけた。どんな身体能力ですか!?

 一騎打ちは勝負がつかなかった。まあ、お互い全力ではないのでそれは当然だ。既定の時間が終わり、両軍戦闘を中断して引いた。戦死判定者は向こうが15名、こちらが18名だった。殿のドヤ顔がちょっぴりウザかった。

 領内がざわついている。王都で変事があったようだ。バルデン伯を中心としたクーデター軍が王都を占領し王族が幽閉されている。トゥールーズ候の息女のレイリア殿が王女の密書をもって駆け込んできたのは今朝のことだ。殿の命により全軍を招集している。とりあえず遠征に参加できるのはフリーデン兵400で、すでに私の指揮下だ。点呼と編成作業をしていると、翌日早朝の出陣が告げられた。兵に緊張が走るが臆病風に吹かれているものは…いないな。ラーハルト軍、フリーデン隊の武勇を示す時が来たようだ。

殿は東部領主の連合を率いることとなった。その中でわがフリーデン隊が先陣である。


次回 アストリア、戦う

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