異世界とのご対面
あれから、数日。私とアルクとの関係は少しぎこちなくなってしまった。まるで、2人の間に薄い壁があるかのように。
でもそんな中、アルクが向こうの人と連絡を取るということなので、その様子を見せてもらうことにした。しかし、いくらアルクと気まずくても気になるのは気になる。アルクがいたという、異世界が。
「少し離れてて。」
私はコクンと頷くとアルクのそばから離れた。と同時にアルクの周りから不思議な光が輝き出した。
───これが、魔法。
初めて大きな魔法を目のあたりにした私は息を呑んだ。聞いたことのない単語を口に出し、目を瞑るアルク。その真剣な姿はみたことのない表情をしていた。
「開きます。」
その声でアルクの目の前に上半身ぐらいの大きさの黒い穴ができた。初めは見えない程の黒い点だったが、一気に大きく成長した。
「誰か居ませんか。」
アルクの呼びかけに初めは反応が無かったが、2、3回で反応が来た。すると、黒色から景色が浮かび出す。
「アルク!?ねぇ、本物!?」
「うおー!アルクじゃねーか!」
「もう!今までどこいってたのよ!!」
「アールークー!!」
……わお。
あまりの激しさに私とアルクもすこし引いていた。異世界って、こんなにも賑やか何だろうか。
私が唖然となっているところにアルクが止めに入った。
「今はそんなところではありません!ダービ、サクロン、ミーシェ、ドール!時間が無いので簡潔にいきますよ。」
「はいはい。で、こちらの世界とそっちの世界を繋げるやつだろう?」
けもくじゃらな男の人が面倒くさそうに言った。
「それならね!ロシュールさんがやってくれるっていってたわ!」
今度は赤髪が特徴の女の人が答えた。その話し方はまるで語尾にハートがついているような勢いだった。
「本当にですか!ありがとうございます。」
アルクはその場で頭を下げる。帰れる、という嬉しい気持ちが後ろのほうにも伝わってきた。そして、私はそれに比べてどんどんここから逃げてしまいたいと思った。
「あら、そちらにいらっしゃるのは?」
赤髪の人が私に気づく。それに続き、アルクも後ろを振り返って私に気がついた。
まぁ、久々の再開だもんね。話が盛り上がるのはしょうがない。
アルクは私を引っ張り出し穴の前に立たせた。
「こちらの世界でお世話になっている人、見上優奈さんです。」
「見上優奈です。」
仕事で使う営業スマイルで挨拶をする。こういうとき、営業スマイルは本当に便利。自分の気持ちをみんなに隠すことができるから。
「…やだ、可愛いじゃない!黒髪だなんて、素敵!あ、私ミーシェね。」
「黒髪かぁ、お嬢さん珍しいじゃないか!俺は、サクロンだ。」
「あたしはダービ。アルクを助けてくれてありがとうね。」
「僕はドール。アルクの従兄弟さ!」
4人一斉の自己紹介が終わり、私は取りあえず「よろしく」とだけいっておいた。こんなにもたくさんの名前だなんて覚えていられない。あとでアルクにでも聞こう。
「それにしても、アルクが迷惑をかけていなかどうかが気がかりだわ。」
ダービが疑いの目をアルクに向かう。
「いえ!こちらの方が色々してもらっちゃって。」
「いーのよ、居候なんだから。」
ミーシェが私にウインクをする。
そうしてすこし楽しく話をした後、アルクが私の肩に手を置いた。思わず振り向くと汗だくのアルクが笑顔で立っていた。
「えーもう時間切れなのかー。なんか魔力落ちた?」
ドールが首を傾げた。
「…こちらの世界はあまり魔法を使うのに適していない環境です。では、そろそろ。」
ふー、と息をはくアルク。穴に手をかざした。
「次は来週の今日の時間ね!」
そういって、穴は一瞬で消えた。




