帰る方法探し
「ただいまー」といつものように家に入ると美味しそうな匂いが漂ってきた。それを目を瞑り、予想するのがここ最近の日課となっていた。その、美味しそうな匂いを漂わせているのは異世界からやってきたアルクである。
「おかえり。ご飯、もうすぐ出来るよ。」
パタパタとスリッパを鳴らし、私のエプロンを着たアルクは優しい笑顔をみせ濡れている手をエプロンで拭いていた。
その姿はもう、立派な主婦そのものである。
「わーい、じゃあ、手をあらってきまーす。」
あれから、アルクとの関係も順調で、むしろ充実しているくらいだった。家事全般をやってくれるなんて、スバラシイ。……まあ、洗濯物は恥ずかしいけれど。
小さな机で2人は食事をとる。最初はアルクの世界の方の料理が多かったが、少しずつこちらの世界の料理を教えていったら私より料理が上手な家庭的な人になってしまった。
「……美味しい。」
「それは良かった。」
ニコリと笑うアルク。それは、私の中の黒に気づいていないようだった。
私はというと、騎士のアルクより女子力が無い自分自身にイラつきを感じていた。イラつきというより、嫉妬だ。
こんなことになるなら、ちゃんと自炊をしておけばよかった。なーんて、今更後悔してももう遅い。
「…あ、そういえば」
と、話を切り出したアルク。私はスプーンをくわえたまま、アルクを見た。
「帰る方法が見つかりそうなんだ。」
…………ん?
かえる、ほうほう?
数十秒間固まった私にアルクが苦笑いする。スプーンはまだくわえたままだ。
「今までずっと帰る方法をさがしてたの?」
「まあ、いつまでもお世話になるのは申し訳ないし。」
そうか。
私はスプーンをお皿におき少し考えた。
アルクにはアルクの元の世界での生活があり、本当はここにいるはずのない存在なのだった。
「帰る方法って?」
「これを使うんだ。」
はい、と見せられたのは手のひらサイズの石ころ。前に見せてもらった魔法石だった。
「持っていた魔法石は4個。それを使って向こうと連絡をとる。一回につき、2個の消費だけど。」
「…あれ、でもこの前は6個あったよね?」
「一回、使ったんだ。そしたら成功した。」
「…そう。」
連絡がついて嬉しいアルクとは反対に、私の気持ちはおもくなっていく。
もし、アルクがいなくなったら。この約1ヶ月間で随分とアルクのいる生活になれてしまったことに気がついた。家に帰ったら誰かがいる生活に慣れてしまったのだ。
────アルクがいなくなる?そんなの……
「……優奈??」
考え込んでいた私に心配になり、アルクが顔色をうかがう。
「────── よかったね、帰る方法が見つかって。 」
ニコリと無理やり口角をあげた。ちゃんと笑えているだろうか。だけど、なんとなく笑っていないといけない気がした。




