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『再婚したいね。』

作者: ミオ
掲載日:2026/08/01

「再婚したいね。」


そう言ったのは、サキだった。


彼は少し笑って、

「そうだね。」

と返した。


同じ言葉。

同じ笑顔。


だけど、その一言に乗せていた思いは、まるで違っていた。


---


サキにとって「再婚したいね」は、未来の予約だった。


家族になれる。

一人じゃなくなる。

生活も安定する。

今度こそ、幸せになれる。


そんな願いを全部まとめた一言だった。


だから彼が、


「そうだね」と笑った瞬間、


サキの中では、

結婚は決まったと思っていた。


---


一方、彼にとっての

「再婚したいね」は違った。


「そう思えるくらい好きだ。」


その時の気持ちを、

口にしただけだった。


明日も同じ気持ちかは分からない。


子どもとの相性もある。


生活も見なければいけない。


本当に一緒に暮らせるかは、これから確かめることだった。


離婚を経験した彼は、

一度口にした理想だけで、

簡単に未来へは動かなかった。


---


数か月後。


現実が見え始めた。


金銭感覚。

価値観。

子どもへの接し方。


小さな違和感が積み重なっていく。


彼は考えるようになった。


「恋人ならいい。でも、夫婦は違う。」


---


そんなある日、サキが言った。


「再婚したいって言ってたじゃない!」


「なんで何も話を進めてくれないの?」


彼は静かに答えた。


「確かに言ったよ。」


「じゃあなんで?」


「『したい』と、『する』は違うでしょ?


願望と行動は全て=じゃないでしょ?」


その言葉に、サキは絶句した。


彼は続ける。


「勢いで結婚して、失敗したからね。


勢いで結婚は決めないよ?」


---


サキは怒った。


「期待させた!」


「裏切った!」


「無責任!」


でも彼は、何も言い返さなかった。


彼は約束を破ったのではない。


未来を約束したつもりもない。


---


「再婚したいね。」


その言葉を、


一人は"ゴール"として受け取り、


もう一人は"願い"として口にした。


同じ日本語でも、意味が全く違っていた。


言葉は同じでも、


意味が違えば、


すれ違いはいつだって静かに始まる。


もしかしたら、


もっとずっと前から、


この、言葉のすれ違いは、


始まっていたのかもしれない。


再婚への期待や意味づけは、

人によって大きく違う。


その違いごと、


相手を受け入れ、


それでも一緒に人生を歩みたいと思う。


そんな二人だけが、


その願いを、

現実に出来るのかもしれない。


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