『再婚したいね。』
「再婚したいね。」
そう言ったのは、サキだった。
彼は少し笑って、
「そうだね。」
と返した。
同じ言葉。
同じ笑顔。
だけど、その一言に乗せていた思いは、まるで違っていた。
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サキにとって「再婚したいね」は、未来の予約だった。
家族になれる。
一人じゃなくなる。
生活も安定する。
今度こそ、幸せになれる。
そんな願いを全部まとめた一言だった。
だから彼が、
「そうだね」と笑った瞬間、
サキの中では、
結婚は決まったと思っていた。
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一方、彼にとっての
「再婚したいね」は違った。
「そう思えるくらい好きだ。」
その時の気持ちを、
口にしただけだった。
明日も同じ気持ちかは分からない。
子どもとの相性もある。
生活も見なければいけない。
本当に一緒に暮らせるかは、これから確かめることだった。
離婚を経験した彼は、
一度口にした理想だけで、
簡単に未来へは動かなかった。
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数か月後。
現実が見え始めた。
金銭感覚。
価値観。
子どもへの接し方。
小さな違和感が積み重なっていく。
彼は考えるようになった。
「恋人ならいい。でも、夫婦は違う。」
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そんなある日、サキが言った。
「再婚したいって言ってたじゃない!」
「なんで何も話を進めてくれないの?」
彼は静かに答えた。
「確かに言ったよ。」
「じゃあなんで?」
「『したい』と、『する』は違うでしょ?
願望と行動は全て=じゃないでしょ?」
その言葉に、サキは絶句した。
彼は続ける。
「勢いで結婚して、失敗したからね。
勢いで結婚は決めないよ?」
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サキは怒った。
「期待させた!」
「裏切った!」
「無責任!」
でも彼は、何も言い返さなかった。
彼は約束を破ったのではない。
未来を約束したつもりもない。
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「再婚したいね。」
その言葉を、
一人は"ゴール"として受け取り、
もう一人は"願い"として口にした。
同じ日本語でも、意味が全く違っていた。
言葉は同じでも、
意味が違えば、
すれ違いはいつだって静かに始まる。
もしかしたら、
もっとずっと前から、
この、言葉のすれ違いは、
始まっていたのかもしれない。
再婚への期待や意味づけは、
人によって大きく違う。
その違いごと、
相手を受け入れ、
それでも一緒に人生を歩みたいと思う。
そんな二人だけが、
その願いを、
現実に出来るのかもしれない。




