「興奮しているのは性器じゃない」
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金平薫
高校入学後も変声期が来ず、髭も生えない。子供のような高い声を保ち、女性的な顔立ち。自身の性別に対する違和感を隠すため、坊主頭にして眼鏡をかけ、わざと声を低くして話す。高校入学後、自分よりはるかに男前で硬派なルックスの隣席・副委員長の高山健斉に一目惚れする。しかし、彼が女子たちと仲良く遊び、むしろ女っぽい部分があることを知ってしまう。そのギャップに耐えられず、金平は高山を自分理想の「男らしい男」に矯正しようと決意する。ただし、彼自身も男勝りな雰囲気の委員長・青山には少なからず好意を抱いている。
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高山健斉
硬派でハンサム、がっしりした体躯の裏に、生活を愛する優しい心を持つ。可愛いもの全般が大好きで、おしゃれな服やコスメを買うのが趣味。母親は彼の性別違和に深く失望しているが、彼は常に優秀な成績で両親の不安に応え続けている。クラスの女子たちとも非常に仲が良く、特に副委員長の青山貴純とは幼い頃からの親友で、小学校・中学校を通じて一番の無二の友だちである。
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青山貴純
委員長。芯が強く、活発で明るく、物事を自ら主導して動くタイプ。気に入らないことがあればすぐに怒鳴り散らすが、成績はトップクラス。幼少期からピアノを習い、市の小学生コンクールで優勝した経験を持つ。頭の回転が速く、誰とでも良好な関係を築ける。母親と高山以外、誰も従ってわけ出来ないわがまま。母親が教師のため、教員たちとも顔が広く、よく先生方の手伝いをしたり、クラスメイトを指導したりしている。クラスの姐御的存在であり、絶対的な「皇帝」とも呼ばれる。
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月浦桐
陰気で人付き合いが苦手な、かよわい雰囲気の女生徒。金平に密かに想いを寄せており、彼を青山に取られるまいと、自ら積極的にアプローチして独占しようと画策する。しかし金平は彼女にあまり関心を示さない。
ある日の朝、金平薫は教室の入り口で七度目の深呼吸をした。
教室の中のざわめきが耳に流れ込んでくる。新入生たちは三々五々に話し込んでいる。彼は視線を落とし、指で無意識に剃りたての頭皮を撫でた——つるつるしていて、青い桃のように触り心地がいい。伊達眼鏡が鼻の上に乗っていて、レンズは分厚く、彼のあまりに整いすぎた顔をぼんやりさせていた。
「はい、君はそこに座って」
担任が適当に指さしたのは、後ろから二列目、窓際だった。金平はうつむきながら歩いていき、鞄を下ろそうとした瞬間、隣で椅子を引く音がした。
「よっ、おはよう」
声が低く、沈んでいて、チェロの一番低い弦が震えるようだった。金平が横を向くと——
呼吸を忘れた。
相手が笑いかけていた。くっきりとした顎のライン、すっと通った鼻筋、濃い眉は墨で力強く描いたようだ。白いシャツの袖は肘までまくり上げられ、引き締まった筋肉のラインが露わになっている。何より身長——座っていても金平より半分は頭一つ分高く、肩幅は窓からの光をほとんど遮ってしまう。
高山健斉。
机の端の名札にそう書いてあった。金平の喉が締まり、心臓が重く速く打つ——胸の中で小さなハンマーが乱打しているようだ。口を開いて「おはよう」と返そうとしたが、出た声は子猫の鳴き声のように細かった。
「……おはよう」
相手は一瞬驚いたように固まり、すぐに目を細めて笑った。「その声、すごく可愛いね、女の子みたい」
金平の顔が一瞬で真っ赤になった。すぐに声のトーンを落とし、わざと咳を二度した。「風邪ひいてる。声が……掠れてて」
「ああ、そっか。じゃあ水分しっかり取らないとね」高山は鞄から未開封のお茶を取り出した。「これ、余分に持ってきたんだ。あげる」
ボトルにはクマのキャラクターがプリントされていて、ピンク色だ。金平はそのクマをじっと見つめ、奇妙な違和感を覚えた。それでも受け取り、指先が高山の手の甲に触れた瞬間、熱くて落としそうになった。
「ありがとう」
「いいよいいよ!」高山はまた笑い、白い歯を見せた。「これから同桌(同じ席)だし、よろしくな、金平くん」
彼は僕の名前を呼んだ。彼は僕の名前を覚えていた。金平はうつむいてキャップを捻り、耳の根が焼けるように熱い。ピンクのお茶のボトルを握りしめ、体温で温まっていく。
一時間目はホームルームだった。担任が自己紹介をさせる。高山の番になると、彼は立ち上がり、声を張り上げた。「高山健斉です。中学ではバスケ部でした。将来は東大を目指しています。よろしくお願いします!」
教室中が拍手した。女子たちがひそひそと話し合い、目を輝かせている。金平はこっそりと周囲を一瞥した——確かに、何人かの女子がもうこちらを見ていた。彼は拳を握りしめ、爪が掌に食い込んだ。
「次に、委員長と副委員長、前に出てきてください」
担任が名前を呼んだ。ポニーテールの女子が一列目から立ち上がり、足早に教壇へ向かい、振り返ってクラス全体を見渡し、自信ありげに口元を上げた。
「委員長の青山貴純です。これからのクラス運営は私が一括して行います。何かあれば直接聞いてください。朝の遅刻、授業中のおしゃべり、宿題未提出——これらはすべて記録します」
下から野次が飛んだ。「わあ、怖い——」
青山がひと睨みした。「誰か文句ある?」
野次った奴はすぐに首を引っ込めた。クラス中が笑う。金平は高山も笑っていることに気づいた——しかもとても楽しそうに、目が三日月のように細くなっている。
「青山とは小学校と中学校が同じなんだ」高山が顔を寄せて小声で言った。「彼女、子供の頃からああでさ、クラスの誰も逆らえないんだよ」
「……仲がいいんだ?」
「めっちゃいいよ!」高山が親指を立てた。「僕の一番の親友の一人だよ。あ、そうそう、彼女ピアノがすごく上手くてさ、中学の文化祭で一緒にやったことも……」
金平はその後の言葉を聞いていなかった。彼の視線は高山の横顔に張り付いていた——言っている間、高山の表情はすべてが柔らかくなり、冬の陽だまりで日向ぼっこする猫のようだった。教壇に立つ青山は、課程表(時間割)を手際よく配っていて、まるで果物を切るように素早い動作だった。
一番の親友。
心のどこかで何かが引っかかった。階段を踏み外したような感覚だった。
昼休み、金平は購買でパンを買い、帰り道、遠くから教室の入り口に数人が集まっているのが見えた。近づくと、高山が三人の女子に囲まれていて、そのうちの一人がスマホを見せているところだった。
「この色番、最高だよ!特に肌が白く見える!」
「ねえねえ見て見て、新しく買ったアイシャドウパレット、このラメが——」
「ちょっと健斉、このワンピースどう思う?買うか迷ってて……」
金平は足を止めた。高山が真剣にスマホの画面を見ると、眉をひそめ、何か重大な問題を考えているように見えた。
「うーん……このワンピースだと、ウェストラインがちょっと高めだから、ヒップが広く見えるかもね」高山が指で画面をなぞった。「君の場合なら、Aラインの形を選んだほうがいいと思う。カバーしてくれるから」
「わあ詳しい!」「頼りになる!」「健斉、今度一緒に買い物行ってくれない?」
女子たちが歓声を上げる。高山は頭をかきながら照れ笑いし、頬が少し赤くなっている。廊下の窓から斜めに日差しが差し込み、彼の輪郭を金色に縁取る。背が高く、がっしりしていて、ハンサム——どの角度から見ても金平の頭の中にある「理想の男性」像にぴったりだった。しかし彼は今、女子たちと口紅やワンピースについて真剣に話し合っている。
金平はパンの袋をぎゅっと握りしめた。ビニールが耳障りな音を立てた。
高山が音に気づいて振り返った。「あ、金平くん!ご飯買ってきたの?一緒に食べない?」
「いや……」金平は一歩後退した。「僕……屋上で食べるから」
そう言って振り返らずに立ち去った。背後から高山の声が聞こえた。「ちょっと待ってよ——」しかし彼は振り返らなかった。
屋上は風が強く、金平の剃りたての頭皮が冷たかった。彼は手すりに寄りかかってパンをかじり、噛みながら次第に食欲を失くした。
なぜ。どうしてこうなんだ。
あの顔、あの身長、あの肩——あんなに男らしいのに。どうして女子と化粧品の話をするんだ?どうしてあんなに柔らかい口調で話すんだ?それに青山……幼なじみで、親友で、一緒に演奏したことがある。金平はパンを握りつぶした。
ダメだ。何かしなければ。
彼は高山健斉を、あの顔にふさわしい本当の男にしてみせる。彼を矯正するんだ。




