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儲かるうえにカッコイイ?人気の果樹、ぶどう編

ちゃんと儲かるかどうかの話するか!と思い立って始めた、「農家になったら何作ろ?」シリーズ。


前半3品目は、儲かるかどうか、そしてどのくらいの大変さか?に完全に焦点を絞って書いた。


そして、次どれ書くかなあと、月末の棚卸しをしていたその時。見つけたのだ。いつだって天啓は売り場にある。


「……シャインマスカットか……!」


時期が時期なのでシャインマスカットそのものではないが、シャインマスカットのゼリーだ。シャインマスカットの果汁を贅沢に使いゼラチンでゼリーにしたもの。生鮮食品とちがって長い賞味期限を持つ彼らは、クリスマスから春のお彼岸までずっとカットフルーツとともに売り場にある。そしていくつかは賞味期限切れになる哀しき運命を辿る。そりゃ1つ348円もすりゃそうなるでしょうよ。


脱線した。話を戻そう。


すっかり頭の中がソロバンだけになっていたところに、ぶどう農家さんの充実した、活力に満ち満ちた顔がすっと思い浮かぶ。


シャインマスカットをはじめとして、ぶどう農家さんの売り上げは確かに高い。そして何より。


「かっけえもんな」


農家にもカッコイイ悪いがじつはあったりする。よりお客様が喜ぶもの、あるいは高級品を作れるのは農家さんの中でもカッコイイ判定が出る。カッコ悪いのは金ばかりかかって儲けが少なく補助金を啜ってかろうじて生きているような農家……すなわち、コメは……やめよう、自分がやっている仕事の一部を自分で貶してなんになる。


また脱線した。今度こそ本筋に戻ろう。


シャインマスカットが彗星のごとく果樹農家の界隈に現れるその前から、ぶどうはカッコイイ農家の代表的な例だった。というのも手をかければかけるだけ、見た目にも美しいあのぶどうの房の形をしっかりと整えられるからだ。果実の形状に積極的に関与でき、その人の美的センスと技術力が収穫にダイレクトに反映される。それがぶどう農家の素晴らしいところなのだ。


まして現在、シャインマスカットがぶどう界隈を席巻してからは、その要素がますます大きくなった。細かいことは省くがシャインマスカットこそ、どのくらいの世話をしたかがハッキリ果実に表れてくる。見た人がその房を目の前にして歓声を上げてくれるようなシャインマスカットであれば、炎天下でヒーコラ働いた苦労も報われるわけである。


シャインマスカットでないものを見てみてもやはりその技術介入の度合いと、人から好まれるあの美味しさは仕事として人気があるのも頷ける。単価も実際に高いので高給取りも珍しくない。ぶどう農家は収入のばらつきも大きいのだが、売り上げ500万円〜1500万円、粗利益300万円〜1200万円くらいまである。


そしてまた嬉しいのがぶどうは果樹、つまりシーズン終わりに枯れるトマトやきゅうりと違い、年々、樹が育つたび、レベルアップするように収量や品質を伸ばすための土台が確かになるのだ。


ちょっとピンと来ない方もおられるかも知れないが、ゼロからエクセルで表づくりを毎回するのと、フォーマットができたところに数字を打ち込むだけなのが違うような感覚というと一気に分かりやすくなるだろうか。


樹が育って形になれば、樹自身が毎年実をつけてくれる。生産者の仕事は、その実をどのくらいの量、どういう形にするかを決める作業なのだ。樹が1人前になってからは10年単位で樹のお手伝いをするのがぶどう生産者のお仕事である。これはほかの果樹にも言える。樹がちゃんと育ってくれればそこからの労力はぐっと少なくなるのだ。


とはいえもちろん楽かと問われれば私はいいえと返すだろう。ぶどう農家の作業は多い。春、芽吹き具合を見つつ花芽がどこにどのくらい付いているか確認し、種無しブドウを目指すならジベレリンのような薬液にぶどうの花を浸す。(薬はものすごく高価だ)勢いの良すぎる枝は生長点を切り落としてぶどうの樹が体力を消耗することを防ぐ。


花が咲き終えて実の形が見えてきたら、房の最終的な形を見据えて粒のひとつひとつをハサミで選んで取り除いていく。粒抜きという作業だ。これがとんでもなく辛いのだという。ずっと、数時間単位で腕をあげ続ける作業。疲労は肩と上腕に容赦なくのしかかる。その年作る房の数が例えば1万房なら、1万房のすべてを腕を上げっぱなしで作業する羽目になるのだ。書いていても気が遠くなる。


そして形を整えた房に袋掛けをする。これは害虫よけでありケチるとカメムシにやられたりして粒抜きの苦労が台無しになる。これもまた腕を上げっぱなしのつらい作業だ。


ぶどうが熟してくる8月末ころからは今度は獣との戦いだ。一番怖いのはハクビシン。大食漢かつ木登り上手な彼らはぶどうを綺麗に食べ尽くしてしまう。これが怖ろしい。ここまで愛情を注ぎ続けたぶどう達が一夜にして獣のハラの中……果樹農家さんの獣に対する憎しみは半端ではない。


収穫を終えてもぶどう生産者の仕事は続く。よい枝を残して実のならない枝は剪定する。これが終わるともう雪の季節が近い。ぶどうの場合は冬の約3ヶ月が農閑期になる。これまで出てたような感じで出稼ぎに行く人もいるし、私の知っている農家さんは雪が解けるまでの間、様々なドラマや映画をゆっくり鑑賞するのだという。それもそれで素敵な余暇の過ごし方だ。


書き方がよく分からなくてぶどう農家さんの職人的なカッコよさはなかなか伝わらないかも知れないが、おなじ農家の間でもぶどう農家に憧れを抱く人は決して少なくない。儲けとカッコよさの2つを兼ね備えるぶどう農家は、これからも強力に果樹大国日本を牽引していく存在なのかも知れない。

自分でもなぜこれを書き忘れていたのかと思うくらいぶどう農家は花形の職業だ。


とかく生産物が確かな技術力の証明になるためうまくいっている人たちの楽しそうな様子は思わず羨んでしまうほどだ。土地が余っているという人は趣味で樹1本だけで始めても楽しいと思う。※個人の感想でありすべての人に当てはまることを保証するものではありません。

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