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花も立派な農産物。花卉農家のお話

我々は農業と聞くとつい、食べるものの生産というふうに捉えがちである。


だが、コメ農家、野菜農家、果樹農家の他にも、農業で生産されるものは様々ある。そのひとつが花である。花卉(かき)という言葉が生産者と流通業者の間でよく使われる。


花卉(かき)農家もまた、儲かる作物のひとつである。おそらく年間売り上げが最大なのは花卉農家であると、私は前から思っている。


花卉栽培は、エピソードの1と2に書いたような、比較的小さな面積で高い売り上げを期待できるという特性がある。実のなる野菜と違って、花は育ったものを切り取っての収穫となる。トマトで言えば株を切り倒しての収穫をするようなもので、感覚的に言えば面積がより必要な気がするが、実は同じ面積での売り上げはほとんど変わらない。

しかも、花卉の場合は1年の中で複数回出荷のピークを迎えたりする。乱暴に言えば、ピークが1回と決まっているきゅうりを2回転できたらどうなるかということである。


しかし、切り取って収穫する花がなぜそこまで売り上げが高いのだろうか?

答えはシンプル。花の単価のほうが野菜より高いからだ。


分かりやすいよう、きゅうりと比較してみよう。

きゅうりは1本、上下幅はあるがおおよそ20円ほどの売り上げで、それが50本入った箱は約1000円の売り上げだ。これが流通に乗り八百屋まで届くとおおよそ1本48円くらいだと思うので、そこまで実態と乖離してはいないだろうという自信はある。


対して花。今回は比較的育てる人の多いアスターを取り上げよう。これは種から育った1本でおよそ120円近い。50本入りの単位にまとめると6000円だ。アスターなら3本を束にして、お盆の時なら498円というところだろう。これも実数値と大きく離れてはいないはずだと思っている。


きゅうりの6倍の単価を持つ花は、たとえ収穫が1度きりだったとしても、もたらす売り上げが大きいことがお分かりいただけると思う。


しかも花なら、夏はお盆向け、冬はハウスと暖房を使って、特に年末年始に向けての花も育てて採算が取れる。これは大変なことである。大きなハウスで育てている以上、冬の暖房代は1ヶ月で百万円単位などということがよくあるが、花であればその暖房代もペイできるのだ。


その売り上げ高、実に年間3千万円。

これは別にトップ層の話をしているのではない、花卉栽培をしている農家さんの最も典型的な稼ぎ方で出てくる金額である。規模的にもいちばん「よくある」「やりやすい」規模でこれだ。最盛期の売り上げは1日100万円に届くこともふつうにある。当然ひとりでできる仕事量ではないが、この金額になれば売り上げの高さを見込んで人を雇うこともできるラインになってくる。もちろん家族経営している人も多い。


もうひとつ、花卉栽培のいいところは売れる日にちがハッキリ分かっているところだろう。


1年通してざっと挙げるだけでも、年始、バレンタインデー、ひな祭り、春彼岸、卒業式、入学式、母の日、父の日、七夕、新盆、旧七夕、旧盆、秋の彼岸、いい夫婦の日、勤労感謝の日、クリスマス。


送別会とか歓迎会でも使うことを考えると、売るチャンスがしっかり決まっていて需要予測が正確に立てられる。自分がどこを狙うのかしっかり定められる。しかも狙いが正確なので作ったものが無駄にならない。

と、花卉生産者はとかく利益に対して追い風が常に吹いているよい商売だ。

ハウスなどの初期投資は1千万円から。額に驚くがビビることはない。売り上げでちゃんとペイできる。冬用ハウスのランニングコストもしっかりと把握して目標売り上げとすり合わせれば、たちまち家が建つだろう。


実は現在花卉栽培農家は絶対数が不足している。その昔、花卉生産業は市場飽和を恐れて間口を絞っていた。誰も彼も儲かる花に飛びついて食糧供給が疎かにならないようにだ。組合への入会費などを課して、その村や地域ごとに「こういう人は入れません」と バカバカしいルールが山ほどあったのだという。


果たしてそのルールの山は、現在花卉栽培の命脈を自ら絶とうとしている。そんなにルールまみれの仕事やってられないと廃業する人、古い規則にそぐわず始めたいけど始められない人……流行り廃りとはよく言ったものだが、廃る瞬間の見苦しさは目を覆うものがある。


さすがにこれではいかんと、現在過疎地を中心に花卉農家の新規就農をサポートする体制が次々出来てきた。身体が健康であることが条件だが、こういう支援事業を利用することは結構お勧めである。スタートに際して低金利の融資や、ハウスが天災で被害を受けたときの保険なども、割安になることがある。


普段は農家としてもやや影の薄い花卉農家であるが、儲けの大きさは確かなものだ。

そして、花を育て、誰かの心を豊かにする仕事。花卉栽培は誇りある、なくてはならない仕事なのだ。

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